2009年9月16日水曜日

フラガールの信託会社が免許取り消し


 素人が手っ取り早く経済を勉強したい場合、NHKドラマの「ハゲタカ」、広末涼子主演の映画「バブルへGo」を見るのがいい、というのが定説ですが、経済のサービス化を理解するには、蒼井優主演の映画「フラガール」(2006年 李相日監督 シネカノン)が一番良い教材になることは間違いないと思います。もちろん、勉強とかの目的でなく、娯楽作品として十分に楽しめるわけですが。
 
 時代は昭和40年。舞台は東北地方の炭鉱町。
 高度成長に伴って、石炭から石油やガスへのエネルギー革命の中で、かつての花形産業であった炭鉱も経営が厳しくなってきます。閉山を決定した炭鉱会社は、坑道から湧き出る豊富な温泉を使って「ハワイアンセンター」を建設し、温水プールやフラダンスを目玉にしたリゾート施設への業態転換を目指します。
 閉山で仕事を失う、ヤマに誇りを持っていた何千人もの炭鉱労働者の嘆きや苦しみ。そしてそれが、地味な炭鉱業とは180度異なる、ちゃらちゃらした南国リゾート施設への転換であることへの強い抵抗感。(当時の若い女性にとって、人前でヘソを出して踊るフラダンスなどまるでクレイジーに思えたことでしょう。)
 登場人物それぞれが過去を背負い、未来に向けて葛藤し、奮闘する姿は、近年の日本映画を代表する傑作だと思います。

 最初の経済のお勉強の話に戻ると、これがまさに経済のサービス化の実例だったということです。高度経済成長で豊かになった日本人ですが、まだハワイ旅行など高嶺の花でした。そこに、ハワイそっくりのリゾートを作り、サービスを提供することで生き残りをはかることが、苦渋の決断だったとはいえ大成功した貴重な事例が、映画の舞台になった常磐ハワイアンセンター(現在は、スパリゾートハワイアンズ)です。

 もちろん、常磐は比較的東京に近く、多数の集客が可能だったという地理的条件も貢献はしていますが、鉱工業(第2次産業)から、サービス業(第3次産業)への移行は、スピードの遅い早いはあっても歴史の力学的必然です。あらゆる経済問題は、この前提に立つことが必要だと思います。サービス化の中で、農業も、水産業も、製造業も、捉え直し、ビジネスモデルを考えていくことが重要です。

 フラガールのことを思い出したのは、この映画の製作資金を投資していた信託会社(ジャパンデジタルコンテンツ)が金融庁から信託免許の取り消し処分を受けたという記事を見たためです。
 直接の原因は、内部統制の不備に由来するものだったようですが、投資家から資金を集め、ゲームや映画などに投資するスタイルが、フラガール以降はヒット作に恵まれなかったせいもあって行き詰っていたことも理由のようです。投資には投機性が付き物なので、当たり外れは仕方がないと思うのですが、最近の日本映画のほとんどは民放テレビ局と広告代理店が主導する製作委員会方式で作られており、テレビ放映を前提にした薬にも毒にもならない刺激のない映画がほとんどなので、投資ファンドによる自由な表現文化の可能性が一つ消え去ってしまったようで、その意味でも残念な気がします。
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