2012年1月29日日曜日

もう代案はありません

 藤沢数希さんの「日本人がグローバル資本主義を生き抜くための経済学入門」(ダイヤモンド社)を読了しました。
 人気ブログ「金融日記」の記事をもとに書き下ろしたもので、文章が大変読みやすく、内容がわかりやすいのでおススメです。

 日本経済の行く末とか、グローバル競争下の日本の経済政策はどうあるべきか、みたいな本はたっくさん出ています。
 しかし藤沢さんの本は「各人が自由な市場で競争する資本主義の優位性は、現時点では認めざるを得ない。したがって、人、モノ、カネが世界中を移動する自由市場を前提に、その中でどうやって利益を上げていくかを考えなくてはならない」という主義主張で貫かれています。
(これは、日本では「市場原理主義」と呼ばれていますが、世界の先進国ではほぼコンセンサスを得た考え方です。)

 なので、各章のタイトルからして刺激に満ちています。たとえば、最終章(第5章)で本の題名にもなっている「もう代案はありません」はこんな構成です。

1 成長戦略が何もないのが一番の成長戦略
(要旨:政府が成長産業を見抜くことはできず、政府が成長分野を決めて後押しすることで民間投資の効率的な配分や、人々のインセンティブをゆがめる。)
2 税制を抜本改革してがんばる人に報いる
(要旨:日本の税制は超累進的で、頑張った起業家からむしりとる構造になっている。このため、税金は広く国民が負担する消費税を中心にし、税率は所得税も法人税も消費税もすべて10%にする。)
3 年金は清算して一度廃止する
(要旨:現行制度では40歳以下の人は支払う保険料が受け取る年金を大幅に下回ることが確実。このような世代間格差は解消し、あらためて公的社会保障制度の必要性を議論すべき。)
4 解雇自由化で労働市場を効率的にする
(要旨:日本の厳しい解雇規制がリスクを新規採用の抑制や非正規労働者に押し付けることにつながっている。労働市場を流動化して、斜陽産業から成長産業に労働力が自由に移動できるようにすべき。)

 などなど。

 詳しくは本書をお読みいただきたいのですが、「市場も失敗するが、政府による失敗よりも傷口は浅い。」という趣旨が貫かれています。

 藤沢さんによれば、政府(政治や行政)の役割は、特定の産業分野をターゲティングして保護したり支援したりすることでなく、日本の成長力の源泉となる「生産性」を上げることです。
 質の高い人材を育成するための教育の再生であったり、起業家が輩出するような金融システムの構築や、民間企業がイノベーションを生み出すような自由な競争を促進するための規制緩和であったり、といった「潜在成長力の強化」こそが求められているのです。

 ところが日本では、成功したベンチャー企業の経営者を格差格差と騒いでつぶしたり、ヘッジファンドや投資銀行をマネーゲームだハゲタカだといって追い出そうとしたりで、むしろ自ら潜在成長率を下げるようなことばかりやっているのです。(本書110ページ)

 傾聴すべき意見かと思います。

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