2012年6月4日月曜日

サービスはタダじゃない

わしはスカイマークエアラインに乗ったことは一度もないし、新千歳にも那覇にもあんまり行くこともなさそうなので、かなり高い確率で一生乗ることはないと思います。

しかし今、チマタで賛否両論の議論を呼んでいる「サービスコンセプト」なる接客方針は、いろいろ示唆に富んでいると思います。良くも悪くもユニークな会社ということがよくわかりました。

このサービスコンセプトはB5サイズの紙に印刷されて機内のシートポケットに入っているそうです。

内容としては、
スカイマーク社は従来の航空会社と異なるスタイルで機内のサービスをしているのであって、「より安全に、より安く」旅客輸送をするための新しい形態の航空会社である。
したがって、客室乗務員は他社のように丁寧な言葉遣いをしないし、客室乗務員のメイクやネイルアート、ヘアスタイルも自由にしている。客室乗務員の本分は保安要員なので、私語についてのクレームにも応じない、などが7項目挙げられ、最後に「機内での苦情は一切受け付けません。・・・ご不満のあるお客様は、『スカイマークお客様相談センター』あるいは『消費者庁消費生活センター』へ連絡されますようお願いします。」とあります。



簡単に言えば、経費をギリギリまで切り詰めて安全・安価に輸送サービスを提供しているのだから、お客さんもそのことは心得て、過大なサービスは要求しないように、ということなのでしょう。

これはこれで会社のポリシーであって、このポリシーを理解できる人はスカイマークを利用すればいいし、理解できない人は乗らなければいい。 それだけのことだと思います。

わしが示唆に富むと感じるのは、これからの日本の産業構造はますますサービス化し、モノを作るのでなく、モノの売り買いや利用、モノガタリの提供などの「サービス」で付加価値を生み出さざるを得ないという経済情勢の中で、核心となる「サービスの価格」についての議論が実は日本にはあまりない。
そこであえてスカイマークが、運賃の中にサービス費用は含まれないということを明確にした点です。

ヨーロッパではボーイさんやウエイトレスさん、運転手さんなどにチップを渡します。サービスを受けた対価として理解できなくはないものの、日本人にとっては非常に煩わしい習慣だと感じてしまうのは、本質的に日本では「サービスはタダ」だと思っているからではないでしょうか。
尊敬すべき日本の一流の経営者ですら、サービス業は「おもてなし」であって、その精神は社員一人一人の人間性やお客さんへの感謝の気持ちから沸き起こってくるものである、みたいなことをよくおっしゃいます。

しかし、細やかなサービスには当然人件費がかかります・・・一流のサービススキルを身に着けるための時間も費用もかかっています・・・し、提供する側もお客さんに気を使い、神経をすり減らしているはずです。
この行為に対して、「自発的なおもてなし」だからサービスはタダです、という評価は正当でしょうか。

基本的に、ヨーロッパのような成熟した国では、労働者と消費者は同じ人間(生活者、市民)であって対等だ、という共通認識が社会にあるのではないでしょうか。だからスーパーのレジ係も座っていますし、銀行や会社の窓口もお昼休みはきっちり窓口を閉めて休憩します。
日本のように「お客様は神様です」(=だからサービスで料金を頂戴するなんてとんでもない)という発想がむしろ異常で、スカイマークのように選択肢を増やすことは消費者全体にとっても良いことなのではないかと思います。
(日本の旅館の過剰なサービスは外国人客にはサプライズで、RyokanのOmotenashi を「輸出」しようというような動きもあるようですが、オーバースペックが強みだと思っているのは誤解で、日本の宿泊業もガラパゴス化しつつあるのではないでしょうか。)

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