2012年6月27日水曜日

日本人の味覚が変わっている

もうかなり前になりますが、代表的な日本料理である「握り寿司」を、実際の江戸前、つまり江戸時代後期のレシピで再現し、試食したという記事を読んだことがあります。
 当時のネタは、コノシロやアジ、ハマグリなどの近海物で、もちろん冷蔵技術がないので、すべて塩〆か酢〆で下ごしらえしており、シャリも塩と酢が効いているので、食べてみると相当に塩辛く、酸っぱく、現代の味覚では決しておいしくなかった、という結論だったと思います。

 また、奈良時代の上級貴族の食事再現というのも、これはテレビだった気がしますが、見たことがあります。メニューは蒸したお米、干し魚や干し鹿肉の焼き物、うるか、山菜の煮もの、干し柿などで、8世紀ごろは調味料も塩と醤(ひしお。味噌の原型のような発酵調味料)、水あめ、酢の4種類しかなく、料理は固く、微妙な味加減もほとんどなく、やはり現代の味覚では決して美味とは感じられないものだったようです。

 しかし間違いなく、これらは、江戸時代、奈良時代にはそれぞれ「ごちそう」であり、当時の人々にとっては最高の美味だったのです。

 さて、今日(6月27日付け)の日経MJ「苦味・酸味 苦手な人急増」という記事がありました。


 趣旨としては
・日本人の味覚が大きく変化している。日本能率協会総合研究所の調査では、苦い味や酸っぱい味を嫌いな人が急増していることがわかった。
・家庭料理の人気は高いものの、ファストフードが好きと答える人も地域や年代を問わず増えている。
・好きな味は何かという問いに対して、今までは「うま味」が最も多かったが今回の調査では第一位は「甘い味」。甘みは控えめにしているという回答も年々減っている。
・一方、嫌いな味の第一位は「苦い味」、次いで「激辛味」、第3位は「酸っぱい味」。ビールの苦みに代表されるような大人の味が敬遠され、味覚の「若年化」が進んでいる。
というものです。

 この調査は、味覚のほかに、好きな料理のジャンルなども聞いているので、詳しく知りたい方は日経MJを読むか、こちらの日本能率協会総合研究所のホームページをご覧ください。

 これを見て、確かに味覚が若年化していることにある種の危惧は覚えますが、江戸時代の寿司、奈良時代の宮廷料理の例を考えても、時代によって味覚や嗜好は大きく異なり、調味料や調理技術も進歩するので、これが日本の食文化に危機をもたらす危険な兆候とは限らないような気もします。

 ただ、その一方で、地域性を越えた味覚や嗜好の全国的な画一化が進んでいることは問題です。
 食は文化だというのは、料理のテクニック以前に、その土地で採れる食材、その土地ならではの調理法や味付けと言った、歴史や風土と抜きがたく関連しているからです。
 マスメディアの発達によって方言が消滅しつつあるように、流通や情報の効率化によって、人間の生理的な欲求の根本であり、地域性そのものである「料理」や「食材」「味覚」が失われてしまうのは何とか対策を講じなくてはいけないと思います。

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