2012年10月19日金曜日

ロボットスーツHALは三重を変えるか

 鈴鹿市にある鈴鹿医療科学大学で行われた、医療福祉ロボットの研究で世界的に知られる筑波大学大学院教授 山海嘉之先生の講演会に行ってきました。
 この講演会は、今年7月に三重県が国の総合特区制度による「みえライフイノベーション総合特区」の指定を受け、同大学内にみえライフイノベーション推進センター地域拠点 MieLIP鈴鹿が開設されることを記念して開催されたものです。

 山海先生は長身で、トレードマークである長髪、色付きのメガネ姿で登場。独特の風貌ながら、語り口は平易で物腰も柔らかい方でした。このような謙虚さは、超一流の研究者やイノベーターには不思議と共通しているようです。
 しかしながら「科学技術は人々の生活に役立たなければ意味がない」という強い信念をお持ちで、もう20年も携わっているという医療用ロボットについて約80分、熱心にお話しいただきました。


 山海先生のチームが実用化を目指しているのは、HAL(Hybrid Assistive Limbの略称で、ハルと発音)と命名された、身体に装着することによって ~つまり、シャツやズボンのように「着る」ことによって~ 身体機能を拡張したり、増幅したりすることができるロボットスーツです。 
 

 人が腕や足など筋肉を動かそうとするとき、脳からその意思が電気信号となって体内の神経を通じ筋肉へ伝達されます。
 その時、ごく微弱な生体電位信号が皮膚の表面でも検出されますが、HALは装着した人の皮膚に付けたセンサーでこの信号を読み取り、それによってパワーユニットを制御して装着者の意思のとおりに筋肉や関節を動かすことができる仕組みです。
 

講演の後は実際にHALを装着したデモンストレーションが行われました。
 山海先生は大学教授と同時に、HALを実用化するためのベンチャー企業 サイバーダイン株式会社のCEOもつとめており、デモの説明は同社の社員が行ってくれました。

 この機種は「身体動作支援用ロボットスーツHAL福祉用」というもので、足に障害を持つ人や、筋力が弱った人が装着し、「動こう」「歩こう」といった意思によって動作することによって、立ち上がりや歩行の訓練、リハビリテーションを支援するという機能を持っています。

 今のところはあくまでもリハビリなどの福祉用具の位置づけですが、現在、医療用ロボットとしての治験(実用化のために病院など実際の医療現場で試しに使って治療効果や安全性を試験するもの)の準備が進められています。

 また、HALは海外でも高い評価を受けており、ドイツやベルギーなどの病院では脳梗塞のリハビリ治療などですでに治験が始まっており、日本よりも早く医療現場に普及しそうな勢いだそうです。

 よく言われるように、日本は科学技術は優れていても、それを商品化しビジネスにする部分が欧米に比べて圧倒的に弱く、「技術で勝って事業で負ける」などと揶揄されます。HALのような医療福祉分野の科学技術についても、欧米に比べて日本は治験のハードルが高く、医療用具として国に認定されるのに大変な時間と費用、労力を要します。山海先生によれば、このことが日本の医療応用技術が欧米に追い抜かれてしまう主要な原因の一つです。
 また、日本の医療は公的医療保険診療が中心なので、一般の患者がHALを利用できるようにするためには、ロボットスーツを使った治療やリハビリが保険診療として認められる必要があります。

 もちろん、HAL自体にもまだ若干は技術的に改善すべき課題は残っているようです。
 しかし、HALを受け入れるための法制度や保険システム、スタッフの人材育成といった社会システムの側の課題の方が実用化に向けた高いハードルになっているのが現状とのことです。

 これから高齢化が本格的に進む日本社会において、ロボットが重要な役割を果たす可能性は大きいものがあります。また、高齢社会先進国である日本が世界に通用する医療福祉ロボットを、クルマや家電に代わる新しい輸出製品として世界に送り出すことにも期待は高まります。
 ぜひ山海先生やサイバーダイン社には期待したいと思いますし、鈴鹿市をはじめ、三重県でも支援拠点としてのサポートができれば素晴らしいことではないでしょうか。

■サイバーダイン株式会社  http://www.cyberdyne.jp/

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