2012年10月21日日曜日

沈没した後にこそ明るい未来が来る!?


  夏休みの読書のつもりで読んだのですが、レビューが遅くなりました。本書は8月末に刊行されましたが書店では今でも平積みされているロングセラーになっています。

 著者の藤巻健史氏はモルガン銀行等でカリスマディーラーとして活躍し、様々な著書もありますが、この本 日本大沈没 (幻冬舎) の内容は、このままでは日本経済の破滅は避けられないので、一般市民は国の破産や物価高騰(ハイパーインフレ)を前提として個人資産の防衛対策を講 じておくべきだという、ある意味で割り切った内容です。

 日本は失われた20年の間、借金を重ねて景気対策だの成長戦略だのに税金をバラまいてきました。しかし景気は一向に良くなりません。
 その理由を藤巻さんは、政府が円高に対して無策であったためと断じます。
 液晶テレビにしても、シャープやパナソニックがサムスンやLGに比べて消 費者のニーズに応えていないわけでは決してありません。ましてや品質が劣るわけでもありません。
 日本製品が韓国にシェアを奪われたのは、ひとえに円が実体経済より異常に高いから ~逆に言えば韓国は自国通貨安を誘導していているから~ です。つまり、日本企業は努力しているのにそれを帳消しにするほど競争環境が悪化しているからだというのが藤巻さんの主張です。



 これは、わしが三重県内の企業経営者から話を聞いたときにもよく出てくるロジックで、心情としてはきっとそうも言いたくなるのでしょうが、では日本政府が為替介入して円安に変わるかというと、まったくそんな効果はありません。
 正直なところ、これだけ貿易黒字がある日本の通貨が高いのはある意味で当然で、これは政府でも日銀でもどうしようもできない話ではないでしょうか。

 それはさておき。
 日本の財政を見てみると、政府の借入残高は900兆円以上、年間の国内総生産(GDP)の2倍にも達する世界的にも異常な事態になっています。一般家庭の家計に置き換えると、これはとうてい返済が不可能な巨額債務であることが理解できます。
 ちなみに、政情不安を引き起こしているギリシャの財政赤字ですら対GDP比は1倍に過ぎず、日本の財政破たん(国家破産)の危険性の高さはハンパではありません。
 ところが、経済学の一般的なセオリーに反して、現時点で日本では金利も暴騰せず、円安にもならず、インフレにもなっていません。これはなぜでしょうか。

 藤巻さんは、それは日本が実質的な「社会主義国」であるからだと説明します。貯蓄の2割近くを保有するゆうちょという国有銀行があり、さらに一般の金融機関も安全志向の国頼みで、あてもないまませっせと国債を買い続ける。
 通常の先進国であれば、放漫財政で財政赤字が膨らむと、国債を調達するための金利が上昇し、ますます財政が悪化するため、おのずと財政健全化(緊縮財政への)政策シフトが起こります。いわば金利上昇という警告ブザーが鳴るのです。
 しかし社会主義国日本は警告ブザーのスイッチを官僚がOFFにしているので、船は沈没しているのに誰もそれに気づかず、パーティーが続いています。

 それでは日本をどう変えればいいのか。
 残念ながら、この本の主眼はそこではありません。
 日本の国家財政の破たんとハイパーインフレはやむを得ないことであるという前提で話が先に進むのです。
 第1次大戦敗戦後のドイツ、ソ連崩壊後のロシア、無政府状態となったジンバブエなどと同じように、教育、年金、医療、治安といった公的サービスのほとんどは停止し、物価は狂乱し、お店の商品は姿を消し、貯金は紙くずとなり、経営者や労働者のほとんどの人は失業する、という事態は、何年後かには日本でも起こるものと想定したうえで、日本人は自分や家族を守るために資産の半分は外貨で持つなど、今のうちにその準備をしっかりやっておくべきだ、というアドバイスこそが本書のメッセージです。詳しくは本書をお読みください。

 考えてみると、テレビや新聞紙上では、日本の財政は破たんする、いや、破たんしないという論争が果てしなく続いていますが、我々庶民にとっても「最悪の事態」を想定しておくことが大事なのは福島第一原発の事故で学んだとおりです。

 このブログで以前紹介した、森欽窯業の森会長も資産の半分は外貨で持てと言っておられます。(中小企業オヤジの円高サバイバル リンクはこちら
 修羅場をくぐってきた人は、皆そう感じているのかもしれません。

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