2012年11月10日土曜日

田舎暮らしに殺されない法

この本 田舎暮らしに殺されない法(朝日新聞出版)は、今から4年前に刊行された本で、前から読みたいと思っていたのを先日図書館で発見したので、やっと読了することができました。

 著者の丸山健二さんは芥川賞作家で、信州の安曇野で生活しながら創作活動を続けておられる方だそうです。

 「殺されない法」とは穏やかではありませんが、これはこの本が、都会でのサラリーマン生活を定年退職した人が、田舎暮らしへの漠然とした憧れや、都会の煩わしい人間関係から逃れたいというような安易な動機で、田舎にUターン、Iターンすると、とんでもないことになるよ、あなたの残りの人生が破滅するよ、という警告の書ともいうべき内容だからです。

 しかがって、田舎暮らしのためのノウハウ本ではまったくなく、そもそも、あなたはなぜ便利な都会での生活を捨てて、田舎で暮らしたいと考えるのか、それは何かからの逃避ではないのか、絵空事ではないのか、そもそもあなたという人間は、そんなふうに何かから逃げて逃げて逃げまくって、企業や組織に潜り込んで半生を送ってきた人間ではないのか、と、厳しく、真正面から問いかけられているような内容です。




 丸山さんは自分の実体験も含めて、田舎とはおそろしく保守的で、利己的で、排他的で、どろどろした地縁血縁にまみれた、都会とは全く違う「別の日本」であると定義します。
 田舎のコミュニティーは運命共同体であって、プライバシーはありませんし、異端は排除されます。
 人間関係のほかにも、田舎は自然条件や地理的条件が厳しく、買い物するにも、通院するにも、大変に不便であり、ひとたび悪天候となれば行政による支援などはまったく当てにできず、自分の家や田畑は自分で守るしかない、自己責任が完徹される世界です。タフさと知恵がなければ生活の質は都会に比べて急減します。

 農業を安易に考えることも禁物です。農業はのどかな、マイペースでできる仕事ではまったくありません。
 それは自然を相手にする格闘であり、自分がいくら頑張っても、天候不順や病害虫のためにいともたやすく努力が水の泡になってしまうリスキーな職業です。定年後に農業を始めたような素人が通用する甘い世界ではありません。

 このように、次から次へと丸山さんからの警告が続きます。詳しくはぜひ本書をお読みいただきたいのですが、丸山さんからの問いに確たる答えがなく、前向きな信念が折れそうになってしまう人は、憧れの田舎暮らしは再考したほうがよさそうです。

 複雑な読後感が残る一冊ではありますが、はんわしのつたない経験でも、丸山さんの説は、ある程度当たっている部分はあるように思います。田舎は、連帯感と当時に、激烈な競争(足の引っ張り合い)も同居しています。コミュニティーが狭く、顔の見える距離感であるゆえに、意見の違いやトラブルがオブラートに包まれないままでぶつかり合うこともしばしばです。
 
 しかし、その一方で、丸山さんが書くのと正反対の事例があることもわしは知っています。

 都会からやって来た移住者が、週末のたびに仲間を何家族も呼んで、あたりはばからず夜中じゅうドンチャン騒ぎをし、騒音は立て放題、ごみは散らかし放題、山菜や人の畑の作物は盗み放題。
 まったく地域住民になじもうとせず、地域のルールに従わず、怪しげな「自然農法」を実践して、まわりの田畑を害虫で全滅させる。
 その中には、芸術創作活動だの、環境リサイクル事業だの、宗教活動だのを実践していると自称する、かなり怪しい面々もいたりする。

 このように、「田舎暮らし実践者」によって反対に殺されかけている田舎も多いことは銘記すべきと思います。

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