2012年11月19日月曜日

スーパー公務員にはご用心

 録画しておいた経済番組を見ていたら、ある市役所のスーパー公務員という人が取り上げられていました。
 その市は、大都市圏から離れたいわゆる中山間地域にあって農業が主力産業。そのスーパー公務員はそこで地域おこしの業務に従事しており、奇抜なアイデアと型破りな実行力で次々に成功例を作り上げているとのこと。
 実例として、ある限界集落地域で栽培されたお米をブランド化して、地域のモノガタリと共に都市部の消費者に販売。ブランド米の販売が好調で、その限界集落には農業をするためにUターンする若い人も生まれ、その集落は限界集落の定義から脱することができたそうです。
 地域振興を担当していた公務員なら容易にわかるように、本当にこれは素晴らしい、信じがたいほどの成果です。このような輝かしい成果を生み出した中心人物がスーパー公務員と呼ばれるのは当然ですし、そのノウハウを学ぼうと全国から行政機関の視察が殺到しているのも理解できることではあります。

 しかし、わし的には少々疑問が出てきます。
 そのスーパー公務員が言うには、「役所内で稟議していては時間ばかりかかるので、こうだと決めたらさっさとやってしまう」「市長にかけあって了承をもらい、抵抗勢力にはトップダウンで指示してもらう」といった手法も時には使うとのことで、悪く言えば、役所の中で共有化されたノウハウではなく、あくまでもこの人の属人的な行為で完結してしまっているように思えるからです。
 また、役人は役に立つから役人だ(つまり、役に立たない人は役人やるな)、というのがこの人の信条だそうなのですが、ならば、役に立つとか立たないとかは、この人が決めるのでしょうか?

 全国の地方自治体には、意外にもというべきか、他称自称を含め、「スーパー公務員」とか「カリスマ公務員」とか言われる人がけっこういます。
 そして、わしの見るところ、この中にはホンモノとバッタモノが入り混じっているので注意が必要です。

 役所の仕事でも、いわゆる「規制行政」といわれる、土地の開発行為や廃棄物の処理などといった権力的な分野は、一見すれば法律や規則に従って機械的に、この開発はOK、この開発はダメ、と処理できそうに思えます。しかし実際には背景となっている事情は複雑で、機械的に法解釈できないケースも多々あります。そのように、法律で決まっている(=したがって、その通り処理しないと役所が申請者から訴えられ、敗訴する)ようなケースを、深い法知識と柔軟な解釈、上級官庁への交渉、申請者や地元住民への説得、といった知力と体力で解決に導ける公務員は、本当にスーパーであり、カリスマです。(たとえば、こちらを)

 しかし、バッタモノが多いのは、いわゆる「振興行政」といわれる、法規制などが少なく、比較的公務員の裁量に任されている分野です。具体的には地域振興、文化、産業、観光などが多く当てはまります。
 これらの振興行政はやった成果が明確に出るわけではありません。短期的にはなかなか結果は出ませんし、仮にいい結果が出ても、それは景気が良くなったためとか、天候が良かったためとかの外部要因に負うところも大きくあります。
 なので、振興担当公務員は何でがんばるかというと、どれだけ予算を多くとったか、どれだけ目玉になるような新事業を作ったか、どれだけ多くが利用(参加)したか、など短期的に結果が見えやすい手法でがんばろうとする人が必ず出てきます。

 その有効な手段の一つは、中央省庁へのロビイングです。霞が関の役人は莫大な予算を握っており、新しい法律や仕事を作りたがっています。しかし、地域の実情には疎いので、地方公務員は霞が関の役人と仲良くなり、場合によっては一緒にいっぱい飲んで地域の情報を伝え、何か自治体に役立ちそうな振興事業を作ってもらいます。
 可能なら、もしその事業が予算化された暁には、ぜひうちの自治体に交付決定してください、という言質をもらっておければベストです。国からの財源は貧乏な自治体には何よりありがたいものだからです。霞が関と自治体、双方にウイン・ウインの関係が、一丁出来上がりです。

 このように自分の頭で考えず、ヒトの懐をあてにするスーパー・バッタ公務員が跋扈しているのが振興分野です。
 バッタ君は往々にして役所の中で政治的な動きをし、住民に良かれと独断・独裁手法を使うので他の公務員にはノウハウが根付きません。
 バッタ君の存在は役所内でも浮き上がっており、子分はいるが同志はおらず、怖がる人はいるが支えてくれる仲間はいません。
 バッタ君が去った後は焼け野原が広がり、肝心の地元住民から、「役所にはさんざん振り回された。もう協力はしない。」と言われるのがオチだったりします。
 このようなスーパー・バッタ公務員、カリスマ・バッタ公務員の後日譚をマスコミは絶対に報道しないのです。用心しましょう。


はんわしの評論家気取り(2012年11月1日)  彼はたぶん、本当に2000時間残業したのだと思う

3 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

はんわしさんの鋭い指摘にはいつもながら敬服します。
11月14日の記事にある方は私も知っている人のことではないかと思いました。私もこの場で御冥福をお祈りします。

半鷲(はんわし) さんのコメント...

コメントありがとうございます。

reomomo123 さんのコメント...

スーパー公務員って、ずいぶんと持ち上げられていますが、民間企業なら、とっくに事業化してるような事案が多いですよね。のうのうと仕事してる公務員が、こう言う事業を成功しただけで、神様扱いで笑ってしまいます。