2013年9月19日木曜日

伊勢には伊勢丹がない


 伊勢丹が、トレードマークになっているタータンチェック柄の買い物袋を55年ぶりに新調すると発表し、話題を集めています。現在のデザインは、緑地に赤と黄色の格子があしらってありますが、10月30日からリニューアルされるデザインは色がやや青みがかって明るい感じとなり、格子も大きくなます。

 さて、伊勢丹は日本のファッション界をリードしており、店のコンセプトやファサードといった店舗作りも多数のエピゴーネンを生み出すほどに洗練されています。

 しかし、そもそもなのですが、なぜ「伊勢」丹という名前なのでしょうか。そして、なぜ三重県伊勢市には伊勢丹がないのでしょうか?

 伊勢丹ホームページの企業情報によると、伊勢丹は1886年(明治19年)11月、東京・ 神田旅籠町に「伊勢屋丹治呉服店」として創業されたとあります。関東大震災後に百貨店形式になったとあるので、それまでは当時ほとんどの呉服屋(勧工場)がそうだったように、お客は履物を脱いで下足箱に入れて入店するスタイルだったのかもしれません。
 株式会社となり、さらに新宿本店がオープンしたのは1933年(昭和8年)のことでした。


  ではこの伊勢屋丹治とはいかなる人物なのでしょうか。
 会社名の由来や商品名の由来を紹介するブログ 由来.JPによれば、

 創業者の小菅丹治(はんわし注:伊勢屋丹治?)が婿養子に行った米穀問屋の屋号の「伊勢又」に自分の名前の丹治を合わせて付けられた「伊勢屋丹治呉服店」が親しみを込めて「伊勢丹さん」 と呼ばれていた事から「伊勢丹」としています。

 とのことで、伊勢又なる米問屋にまで話がさかのぼってしまいます。

 法政大学イノベーションリサーチセンターの、百貨店創成期の改革者―日比翁助と2 代小菅丹治―(日本の企業家活動シリーズ No.56)生島 淳 によると、

 小菅丹治は、1859(安政6)年に相模国高座郡円行村で出生。生家は裕福な農家だったが、当
時の近郊農村では、長男以外の男子は街に奉公に出る場合が多く、丹治も12歳のときに上京し、東京・湯島にある「伊勢庄呉服店」に小僧として入店した。
 丹治は、同店で読み書きそろばんの修養から始めて、呉服店の商人に欠かせない知識と経験を身につけた。誰よりも商人道に励んだ丹治は、伊勢庄の主人である日野島庄兵衛から信用を得て、20歳の頃に同店の番頭となった。その後、伊勢庄の得意先の一つである神田旅籠町の米穀問屋兼米商人「伊勢又」の主人小菅又右衛門に見込まれ婿養子となった。ただ伊勢又は継がず、丹治は通い番頭として引き続き伊勢庄に勤めた。
 そして1886年、丹治は28歳で独立して伊勢屋丹治呉服店の看板を掲げ、商号を「伊勢」に自分の名前「丹」を配した「伊勢丹」とした。


 とのことで、結局伊勢丹と伊勢は直接関係ないようです。
 いうまでもなく、ここでいう「伊勢」とは現在の三重県伊勢市ではなく、旧伊勢国、すなわち現在の三重県のうち伊勢湾岸に面した広い区域を指します。
 伊勢国には桑名、四日市、白子、津(安濃津)、松坂、山田といった街が沿岸に並んでおり、近畿と関東を結ぶ海路、陸路の要衝でした。かつ、伊勢神宮の参拝客の行き来が多く、供物など物産の往来も盛んだったため、古来から商業や海運業が発達し、江戸にも多くの伊勢出身の商人、つまり伊勢商人たちが店を構えました。
 伊勢庄とか伊勢又も、伊勢商人の系譜を引き継ぐ商人だったのではなかったでしょうか。

 
 さて、このように伊勢や三重県にまったく関係がないことがわかってしまった伊勢丹ですが、無理やりな話であることは重々承知ながら、伊勢(この「伊勢」は三重県伊勢市の意味。伊勢神宮とかがある伊勢)の観光や物産PRに何とかお力を借りられるようなことはできないものでしょうか。

 伊勢は今年、20年に一度、神殿や鳥居、神宝装束をすべて新しく作り替え、神様に新しいお社にお移りいただく式年遷宮の年に当たります。これは7世紀から今に伝わっている神事で、今回は第62回目に当たるそうですが、20年に一度というのは平均的な人の一生で見れば2回~3回、長命な人でも4回しか体験できないという貴重な機会です。
 遷宮の前後は観光客(参拝客)も激増するため、伊勢の物産や観光をPRするには絶好の機会でもあるのですが、それには「伊勢」という古い歴史や伊勢商人といった「ものがたり」を活用することが有効です。

 伊勢と伊勢丹。
 わし的にはこの両者はぴったりつながるので、伊勢丹で「伊勢の観光物産展」なんかが大々的にできればいいなあ、と思ったりします。
 あと、昔、三河屋サミットというイベントがありましたが、伊勢屋とか、伊勢なになにという伊勢を冠した屋号の店も全国にあるので「伊勢屋サミット」をしてみるのもいいかもしれません。
 伊勢丹の方、いかがでしょうか? 

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