2013年9月18日水曜日

中小企業への誤解

 日曜日の中日新聞朝刊にはサンデー版というオマケみたいな別刷りが付いてくるのですが、今週の日曜、平成25年9月15日付けの特集は、「日本の中小企業」というものでした。

 中小企業は地味な存在です。統計では日本の全事業所数のうち99%は中小企業であり、正規・非正規含めた全労働者の70%以上も中小企業で働いているのですが、あらためて中小企業の定義であるとか、実像を知っている人は、関係者以外あまりいないと思います。
 
 つまり、一般の人が「中小企業」と聞いて浮かぶイメージは案外にぼんやりしたものです。
 それが、この地方を代表する中日新聞で取り上げられていたので目を通してみました。

 記事の中では、中小企業の定義について、製造業に属する事業者ならば資本金が3億円以下か、常時雇用する従業員が300名以下のどちらかに当てはまれば中小企業になる、という中小企業基本法の定義が示されています。
 また、「中小企業の景気はどうか?」の説明は、中小企業基盤整備機構による中小企業景況調査の結果が引用され、DIはマイナスであるもののそのマイナス幅は3期連続で減少しており、「景気は持ち直しの動きが見られる」とあって、コンパクトにうまく説明しています。

 また、地図にマッピングされた47都道府県別の中小企業数と従業員数のグラフ(ちなみにこのグラフは大変よくできていて、これだけ見やすい資料を作るのはさすがに新聞社は上手だなと思わせられます。)では、各地域の特長ある中小企業が取り上げられています。

 北海道なら農事生産法人が、そして東北は岩手県の南部鉄器、関東は東京都大田区の「下町ボブスレー」、東海は岐阜県関市の刃物、北陸は福井県鯖江市のめがね、近畿は大阪府の中小企業群、中国は広島県府中市の家具、四国は愛媛県今治市のタオル産業、九州は福岡県の博多人形などです。

 なるほど、郷土色豊かで、地域ごとに特有の産業があるのだなあとも思うのですが、同時に、実はこのマップは中小企業の「ステレオタイプ」そのもので、現在の中小企業の実態とは少々違うものであることにも気付きます。

 いうまでもなく「中小企業」は「地場産業」とイコールではありません。そこでしか生産できない素材や、その土地でのみ伝承された技法などによって、地域固有に発達したのが地場産業です。今でもそれらは産地として関連する企業群を形成する、地域を代表する産業であって、地域の誇りでもあるかもしれません。

 しかし今は、もはや地場産業は地域経済の主役ではないのです。
 多くの地場産業は消費者の生活スタイルや嗜好の変化によって斜陽となっているからです。
 では今の地域産業の主役は何かといえば、それは建設業であり、自動車関連産業であり、電気・電子機械関連産業であり、観光業です。これらは生産額、付加価値額とも地場産業に比べて圧倒的に大きいのですが、「その地域ならでは」という地域固有性はない(=全国にあまねくある)ので、中日新聞サンデー版のネタにはならないのです。これが中小企業の実像を混乱させる遠因の一つです。

 もう一つは、産業別の企業数では第1位の小売業、第2位の宿泊・飲食サービス業、さらに、順位は下位ながら多様なサービス業がまったく無視されていることです(サンデー版の冒頭にも大きな円グラフで描かれているにもかかわらず!)。
 これは中小企業=地場産業という勘違いよりもはるかに根が深い問題です。

 中小企業というと町工場が浮かび、「こんな小さな工場なのに製品が世界に知れわたっている」とか、「こんなすごい技術を持つ名人・匠がいる」とかいったストーリーに進みがちです。
 しかしこのグラフで明白なように、地域雇用から見た中小企業の主役は工業(製造業)ではなく、商業やサービス業であって、これらが全国にあまねく網の目のように存在しており、それら商業者、サービス業者の努力によって、人々は必要なものやサービスを受け取り、生活の豊かさを実感できるのです。

 しかしながら ~中日新聞社のようなマスコミが典型的なのですが~、統治の中枢にいて権力に近い人ほど「中小企業=地場産業とか町工場」のような古いステレオタイプから抜けられません。イノベーションの原動力となる中小企業のパフォーマンスが悪いのは  ~ICTなどの若く新しいベンチャー企業が産業構造を変革したアメリカとは正反対に~  世間一般がこのような中小企業感、地域産業感に囚われているからです。

 なので「このまま円安が続けば中小企業はますます元気になる」、といったアホな言説が新聞に出てきたりします。実際は大多数の中小企業は内需型なので円安は逆風なのです。この町工場説も中小企業の実像を混乱させるもう一つの遠因です。


 

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