2013年9月7日土曜日

補助金の効果は疑わしい

 製造業に従事している中小企業にとって、いわゆる「アベノミクス」に関連した国による大規模な財政支出の目玉施策であった、「ものづくり中小企業・小規模事業者試作開発等支援補助金」の採択結果が、過日公表されました。(リンクはこちら

 平成25年6月~7月の間に募集された、いわゆる2次公募分で、全国からの申請11926件について審査を行った結果、5612件が採択されました。
 この補助金については、第1次募集時の第一次締め切り分で742件が、第二次締め切り分で4162件がすでに採択されており、合計で10,516もの中小企業に対して一社当たり1千万円近くの補助金が交付されることになります。

 この事業の予算額(平成24年度補正予算)は1000億円。中小企業に対しては、製造業向けのほかに、商店街活性化や人材育成、海外展開支援などたくさんの補助制度がアベノミクスで作られたため、中小企業向けの補正予算総額は5434億円にも及びます。

 では、この、「ものづくり中小企業・小規模事業者試作開発等支援補助金」の波及効果はどれほどのものが期待できるのでしょうか。

 この補助金では、中小企業が新製品開発のために試作を行う場合、それに必要な設備の購入などの費用も補助対象になります。なので、生産設備のメーカーや、設備工事業者、工作機械メーカーなどにはおそらく多くの発注が寄せられ、まずは恩恵(波及効果)を被るでしょう。

 次に、それらの設備や機械を導入して行った試作によって商品開発に成功し、それがヒット商品になれば、当の中小企業(補助金の交付を受けた製造業企業)にも効果は及びます。補助金の1000億円がいわば種火になって、より大きな果実をもたらすことができるのです。実はこれが、補助金に最も期待される効果なのです。

 しかし、よくよく考えてみると、補助金を受けた10,516の中小企業すべてが、このように理想的にとんとん拍子に進むことは難しいのも現実でしょう。
 そもそも製造業中小企業に対して補助金を出す理由は、新製品や新技術の開発などは研究や開発のための費用と時間がかかり、試作を何度も重ねて商品化のめどがつき、それからやっと量産過程に漕ぎつく流れになります。このように最初の資金投資から回収するまでの期間が長く、リスクを伴うため、それを一定程度、行政が肩代わりしようという意図なのです。

 このポイントは、「補助金を出すことによって研究開発に消極的だった中小企業が背中を押され、新たに研究開発に取り組む」という効果を狙って点です。
 逆に言えば、設備の定期的な更新とか、親企業の定期的なモデルチェンジに合わせて必ず試作が必要になるとかの、いわば「決まりきっている」支出に対して補助金を出すのは、リスクテークではなく、単なる金銭的な恩恵付与に過ぎません。つまり、無から有を生むような新たな需要創造効果は限定的なのです。
 しかし、「ものづくり中小企業・小規模事業者試作開発等支援補助金」のような研究開発だの試作開発だのと称される補助金は、往々にして、このような決まりきった支出に対して交付されます。
 本来なら、補助金がなければリスクが高すぎて二の足を踏んでいたけれど、補助金が使えるので思い切ってチャレンジしてみる、という挑戦する中小企業を応援するはずの制度が、表現は悪いですが、単なる政治的パフォーマンスの予算消化に堕してしまうのです。

 役人の立場になって考えると、短期間にこれだけ巨額の予算を執行することには大変なエネルギーが必要であり、膨大な作業量を伴います。東日本大震災の復興予算にも見られたように、巨額すぎて「掃けない」予算は、バラ撒くか、こっそり他に流用して使い切るしかありません。

 もちろん、補助金をもらった中小企業は、経営がラクになるメリットはあります。昨今の製造業を取り巻く状況は厳しいので、決まりきった支出であっても、新たに投資しようと考えているだけ、まだ前向きで意欲的な企業だという見方もできます。

 しかし、一国の経済が成熟するにしたがって、補助金の本来の効果、つまり需要を創造する効果は薄れます。決まりきった支出に補助金が当たれば、本来なら銀行の融資で調達するはずだった貸出しの需要もなくなり、市中の資金循環の不全にもつながります。いくら政府日銀が金融緩和しても、貸出先がなければだぶつくだけです。

 なので、補助金が巨額になればばるほど、十分な検証と評価が必要です。今回の、「ものづくり中小企業・小規模事業者試作開発等支援補助金」も、後になって選挙目当てのバラ撒き政策だったと言われないためにも、交付を受ける中小企業にはぜひとも試作を成功させ、補助金を受給した以上の経済効果を導いて欲しいと思います。最善の尽くすのは経営者の義務なのです。

 ここからは余談。
 このように、「産業政策」などと呼ばれるジャンルの補助金は社会的な効果が不明なものが多く、適正執行だけでなく効果の事後検証も非常に重要です。しかし不思議なのは、副作用の多いこのような財政出動を実証的に検証している研究者(学者)、実務家を、特に三重県のような地方では、ほとんど見かけないことです。
 本来なら政治や行政の無駄遣いをチェックしたり、政策効果の研究・評価をするべき地域の大学までが、産官学連携と称し、自ら率先して企業の補助金獲得支援に狂奔し、それを地域貢献だと自己陶酔しているのは、役割の放棄と言えないでしょうか。

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