2013年11月13日水曜日

地方交付税「産業振興加算」はかえって地方を弱める

****マニアックな内容なので、地方公務員以外の方は無視してください****

本日の日本経済新聞に 交付税に「産業振興加算」 成長重視へ5年ぶり復活 という記事が載っていました。(11月13日付け)

 政府は平成26年度予算から、道府県や市町村などの地方自治体に交付している地方交付税交付金の算定基準において、産業振興の成果を上げた地方自治体に交付税を加算する制度を5年ぶりに復活させるというものです。

 ちなみに、地方交付税制度とは「税」という表現を使ってはいますが国から地方自治体への交付金の一種です。
 税収が多い豊かな自治体と、離島の村のように税収が少ない自治体とでは財政力に大きな差があります。しかし、地方自治体が行う仕事は義務教育や福祉などのように住民生活に直結しており、金持ちと貧乏で仕事の量や質に格差があると不都合なので、国が徴収した国税(所得税、酒税、法人税、消費税、たばこ税)の一定割合を財源にして、お金のない自治体に交付するというものです。これによって間接的に、地方自治体間の財政力格差が平準化できることになります。



 ただ、これは良し悪しで、要するに自分で税収確保の努力しなくても、穴が開いた分は国が補填してくれるので、自治体には一種のモラルハザードが蔓延しています。これは住民も同じことで、ほとんど通らない道路や華美な箱モノの建設を要求して平気です。つまり、自分の街を経営するのは住民自身であるという自覚が欠落しており、最後は国が何とかしてくれると思っているのです。
 また、この制度の細かいルールは総務省の官僚が作っているので、自在に操作することが可能です。このため、地方自治体は国の動き(政治の動き)に敏感にならざるをえず、知事会や市長会、町村長会などを通じて総務官僚に盛んにロビイングしているという現実もあります。

 さて、日経の記事に戻ると、地方交付税の財源は17.1兆円だった今年度から減少する見通しだそうで、製造品の出荷額や農業産出額などの過去からの推移をみて、大きく伸びた自治体に交付税を加算することにより、交付にメリハリをつけようという考えのようです。
 このような、産業振興の度合いで差をつけるやり方は、経済成長を重視する安倍政権の「アベノミクス」を反映した措置でもあって、知恵を絞ったり、企業の誘致に熱心な自治体には多く交付する半面、逆なら交付が減るため、自治体が政策を競う効果も狙っているとのことです。

 これは、自治体の自助努力を促すもので、方向的には良いと言えなくはないのですが、問題なのは「産業振興とは何を指すのか」ということです。
 記事によれば、製造品の出荷額や農業産出額などを指すのですが、この指標ははっきり言って時代遅れであり、間違っています。

 製造品出荷額を増やすための典型的な手法は企業誘致ですが、グローバル競争下では企業はいつ縮小や撤退を余儀なくされるかわかりません。昔は工場を我が町に建ててもらえば何とかなったのですが、2013年の今、製造品出荷額の増加を産業振興の成果と見なすことは危険であり、工場誘致補助金など自治体の努力がまったく無駄になる可能性が高いものです。
 農業も同様で、農業従事者そのものが減少しており、企業の農地保有なども規制緩和されない中で、自治体が交付税欲しさの農業振興のために、ますます土地改良や灌漑事業などのムダな土木工事を推進してしまう可能性があります。

 もし指標にするなら、たとえば地域経済の「ダイナミック度」を示す創業率や、イノベーション(経営革新)に取り組む企業の数、地元の若者をいかに地元に定着させているかを示す「地元雇用率」のような数値であるべきです。
 日本の産業構造は、モノを作る製造業から、サービス業に大きく変化しています。これに逆行するような物差しを国が導入することは、長い目で見て地域経済にマイナスになるでしょう。

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