2013年11月27日水曜日

三重県の企業はなぜ障がい者を雇用しないのか

 厚生労働省の出先機関である三重労働局が、11月19日、平成25年障害者雇用状況(6月1日現在の調査)の結果とりまとめを公表しました。

三重労働局HPより
これによれば、
・民間企業の実雇用率(従業員に占める障害者の雇用割合。障害者雇用促進法は民間企業の法定雇用率は2.0%以上と定めている。)は1.60%であり、前年を0.03 ポイントを上回ったものの、全国順位は47位で最下位。ちなみに全国平均は1.76%。
・雇用障害者数は、2,703 人。
・法定雇用率達成企業の割合は46.4%で全国31 位。

・この調査の対象となったのは、法律で障害者の雇用義務がある従業員数50人以上の企業989社。
・三重労働局では、障害者実雇用率を改善するため三重県と連携して「障害者雇用率改善プラン」に取り組むこととし、法定雇用率の未達成企業530社を全社訪問して、雇用が特に遅れている金融・保険業などを重点に指導を強化し、来年6月時点で雇用率を1.70%にまで上げる。
 とのことです。(三重労働局HPのPDFファイルへのリンクはこちら

 ちなみに、民間企業に対して県や市町などの地方公共団体ではどうかと言えば、
・県の機関 → 雇用障害者数141.5 人、実雇用率2.53%で、法定雇用率を達成。
・市町等の機関 → 雇用障害者数359.5 人、実雇用率2.22%。市町等の43対象機関全体で雇用障害者数、実雇用率ともに前年を上回ったが、13機関が法定雇用率未達成。
・県教育委員会 → 雇用障害者数225.5 人、実雇用率2.07%。雇用障害者数、実雇用率ともには前年を上回ったが、法定雇用率未達成で13.5 人不足。
 とのことで、民間企業に比べて著しく良いというわけではないものの、まあそこそこ達成はされているようです。

 このニュースに「今さら」感を禁じ得ないのは、三重県内の民間企業の障がい者雇用率が全国最下位レベルで低いのは今に始まったことではなく、わしの記憶では少なくとも10年以上前から関係者の間では有名だったことです。それなりに問題視され、多くの方々が改善に関わってきていたのですが、状況は大きくは改善しないのです。

 
 これにはいろいろ理由があるのでしょう。しかし、今回もそうですが、一連の報道を見ていて不思議に思うのは、雇用すべきとされる企業の側がなぜ雇用しないのかの理由、逆に言えば、障がい者を雇用する際のボトルネックは何か、という点がほとんど明らかになっていないことです。
 このニュースを取材したマスコミの方は、なぜその点を質問したり取材したりしないのでしょうか。

 そう思っていたら、本日(11月27日)、 三重県の鈴木知事が、県内企業の障がい者雇用率が全国最下位だったことを受け、三重労働局長とともに12月上旬から法定雇用率未達成企業を訪問して障がい者の雇用促進を依頼するとのニュースが報じられました。(たとえば、毎日新聞 リンクはこちら
 当たり前ですが、企業としてはできないことをお願いされても無理なことは無理でしょうから、多分に政治的なパフォーマンスの臭いはする(その証拠に、毎日JPの記事には「訪問先企業は、地域に影響力がある企業を中心に選定中だという。」とあって、重大な留保がなされていることがわかります。これについては後述します。)のであって、やはりまず最初に明らかにすべきなのは、先ほど書いた「企業側の言い分」だと思います。

 毎日の記事によれば、鈴木氏は「県が5月に県内約1万4000社を対象に行った調査で、障害者雇用が進まない最大の理由が『どういう仕事をやってもらっていいのか分からない』だったと説明した」とのことです。
 県もそんな有用な調査を行ったなら、その調査結果を公開して、いろいろな方面の人々から知恵を集めればいいのにと思うのですが、まあそれはさておき。
 企業が障がい者のことを知らず、その能力や適性もはかれない、どう扱っていいのはわからない、ということであれば、そのすれ違いの改善こそが方策の一つになるはずです。

 ネットで検索すると、株式会社よりよく生きるプロジェクト 代表取締役 矢辺卓哉(やべっち)という方の、ノーマライゼーションねっと というブログを見つけました。
 このブログの2009年9月3日付け 「障害者雇用=コスト」という現実とどう向き合うか? という記事は卓見だと思います。(リンクはこちら

 障がい者雇用は企業にとってはコストであって、法律で決まっているから仕方なく、もしくは社会貢献の観点から障がい者を雇っているというのが本音である。
 したがって、この問題の本質的な解決には、「企業には、障害のある人のことをしっかり知り、障害者雇用といえども戦力として期待することが一番大切」であり、「障害のある人には、健常者と同様の仕事感・キャリア形成支援の一角を担っていくこと」も必要と説きます。

 
 実は、このように障がい者も企業にとって有用な人材となるし、そのためには障がい者の職業能力開発や、障がい者が従事する仕事(作業)の付加価値を高めるための魅力ある商品・サービス開発、ビジネスモデルの創造、作業工程の改善などの経営革新(イノベーション)に取り組むべき、というのは、わしが10年近く前にかかわった社会起業家とも呼ぶべき人々が唱えていたことでした。
 社会起業家とは、地域の課題をビジネスの手法で解決する、いわゆる「コミュニティビジネス」の経営者のことです。彼らのなかには、就労継続支援事業所を経営し、そこでの経営革新を通じて作業者である障がい者の賃金をアップしたり、作業環境を改善したり、新しい市場を開拓したりというコミュニティビジネスに取り組んでいました。

 三重県のようなところと、彼ら社会起業家がどのように繋がっていて、どのような協力体制にあるのかはよく知りませんが、知事と労働局長によるパフォーマンスに、現場を知り尽くしている社会起業家たちの姿があまり見えない ~ような気がする~ ことは少し気にかかります。

(補足)
 政治家や官僚のパフォーマンスはある種の政治ショーなので、多くの場合、「成果」があらかじめ下僚たちの手で仕込みされています。企業を訪問して社長に頭を下げたのに空振りだったでは選挙向けのイメージもダウンしてしまいます。
 なので、今回も何社かはすでに事前打ち合わせで、新たに障がい者を何名か雇うことは内々に決まっていて、今回の「訪問」によってそうなったというふうに持っていくのでしょう。このお約束は(根拠はないですが)断言できますし、公務員ならだれもが予想できることです。
 もっとも、それは障がい者にとって悪いことではありません。それによって雇用が増えるならどんどん仕込めばよいのです。

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