2013年12月19日木曜日

産業競争力強化法説明会に行ってきた

 今週のはじめ、中部経済産業局が開いた「産業競争力強化法の施策説明会」に行ってきました。
 先日の国会で成立し、来年1月の施行が予定されている産業競争力強化法(以下、産競法と略称します。)は、アベノミクスの第三の矢である「成長戦略」を具現化するものと位置付けられています。

■経済産業省ホームページ  http://www.meti.go.jp/policy/jigyou_saisei/kyousouryoku_kyouka/

 経産省の担当官の話によると、産競法を理解するキーワードは、(政府が定義するところの)現在の日本経済が抱える3つの課題、「過剰規制」「過当競争」そして「過少投資」をいかに解消するかという点です。

 詳細を見ていきます。



 まず「過剰規制」とは、政府がさまざまな分野で多くの規制をかけていることです。
 この解決のためには、不要な規制を廃止したり緩和することで企業の活動の自由度を高めたり、不必要なコストを解消する必要があり、産競法では企業が自社にとって障害となっている法規制を、その企業単位で特例的に緩和する「企業実証特任制度」や、企業が新規事業を始めようとするとき、適用を受けそうな規制についてあらかじめ該当するかどうかを確認する「グレーゾーン解消制度」が設けられます。

 「過当競争」とは、日本は伝統的に一つの産業分野に多くの企業があって ~石油化学しかり、家電しかり、自動車しかり~ 競争が熾烈すぎることです。
 これは切磋琢磨の意味もありますが、身内の喧嘩によって外国企業に漁夫の利を与えていると政府は考えており、激化するグローバル競争に日本企業が勝ち抜くには一定の規模がないと不利で、それには強力な少数の企業に統合再編されることが望ましいことになります。
 このため、産競法では企業による事業再編を税制や金融で支援することとしています。また、政府が必要と認めるときは、ある産業分野が過剰供給構造であることを公表することで事業再編を促進させるという、やや強権的な規定も盛り込まれています。

 「過少投資」とは、1990年代以降のデフレ傾向により先行きの不透明感が強まり、企業は内部留保を増やすばかりで、新たな設備投資をしない(できない)という萎縮に陥り、それが経済成長を阻害する悪循環になっていると政府が考えていることです。
 このため産競法では、企業による設備投資を税制優遇によって促進することが盛り込まれており、さらに産競法と関連して、企業の設備投資促進のための補助金(ものづくり・商業・サービス革新補助金)も、1400億円が補正予算措置されます。

 大きな論点となるのは、まさにこの設備投資の部分です。
 設備投資が増加することで、企業は生産を増やして売り上げを伸ばし、生産コストを削減して利益も上がり、その利益でさらに新たな設備投資をして・・・というサイクルが、日本経済の一つの成長パターンだったのは事実です。
 しかし小幡續慶応大学准教授が言うように、日本企業はROAが外国企業に比べて極めて低いなど今でも設備は過剰であり、国内市場が成熟化する中、企業にとって設備投資のインセンティブは薄い。また、そもそも高度成長期のように設備投資が新たな設備投資を生むといった流れはもはや神話であり、設備投資に依存した経済成長を期待するのは危険だという意見もあります。
 これによれば、産競法による国の設備投資支援は、ますます国家財政を悪化させるだけの意味しかないことになります。

平成25年度 年次経済財政報告 第2-1-4図 ROAの国際比較 より

 経済産業省もこの点もかなり意識しているようで、説明会においては設備投資の促進支援策についての説明に最も長く時間が費やされました。
 つまり、
・国が産競法で支援する設備投資は、「質の高い設備投資」である。
すなわち、
・最新モデルの工作機械など先端的な設備とか、生産ラインやオペレーションの改善に資する設備といった、企業の生産性向上に大きく寄与する設備の導入を支援する。
 ということで、生産効率の高い設備への更新を促進することによって企業マインドを変え、最終的には内部留保を取り崩してでも新たな設備投資が進む状態を実現したいようでした。

 実際に産競法の支援措置は、これら「質の高い」設備投資をした場合、企業は即時償却か税額控除5%の選択適用ができるというかなり大胆なものです。企業にとっては資金繰りが楽になるメリットは大きいと思います。

 しかしながら、本質的には、これはある種の壮大な社会実験です。
 マクロ的な設備投資額の過少は問題ですが、個々の企業行動に分解していった際、自社の経営責任において判断すべきなのは当然のことですし、経営者には慎重な判断をしていただきたいと思いました。

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