2013年12月7日土曜日

「中小企業振興条例中間案」意見交換会に行ったら


 伊勢商工会議所で開催された、「三重県中小企業振興条例(仮称)」中間案に対する意見交換会というものを聞きに行ってきました。(三重県政や地域産業振興に関心がある人以外は無視してください。)

 
 配布資料によれば、この条例の制定趣旨は、
・三重県の中小企業は、県内企業数の99.8%、雇用の86.3 %を占めており、また石油化学、輸送用機械、電気の分野を中心に三重県の中小企業製造品出荷額は、全国14位、製造業全体の付加価値額も全国11位(どちらも2009年)と高い競争力を有している。
・一方で、2008年の世界金融経済危機の際、経済成長率が全国で最も落ち込みが激しくなるなど、三重県は特定の業種に偏った脆弱な産業構造でもある。
・こうした中で、県内中小企業の競争力の維持・強化はむろん、地域に密着している小規模企業者
 の意欲を引き出すことが重要な課題であり、中小企業の存在そのものが地域社会の形成や維持に寄与しており、少子高齢化や地域の過疎化が進む中、環境や雇用などに十分配慮し地域社会の活性化に貢献することを目指し実践する企業の振興を図る必要がある。
・このため、三重県では、小規模企業を含む中小企業の果たす役割の重要性をかんがみ、中小企業の振興に関する条例の策定作業を進めており、このたび、条例の中間案をとりまとめたところ。
 とのことで、来年4月からの条例制定・施行を目処に最終案の作成に反映させていくため、伊勢商工会議所がこの意見交換会を企画・主催したもののようです。

 三重県庁からは担当者が3名、参加者は会議所の職員等も含めて中小企業経営者など15人ほどでしたが、非常に興味深いやり取りが展開されたのでレビューします。
 県から条例案の各条文ごとに内容説明があり、その後意見交換となったのですが、出された意見は主に以下のようなものでした。

A:制定の趣旨や基本理念が空疎な作文で、三重県が県として中小企業を盛り立てていくという覚悟や意気込みが感じられない。
 
B:「三重県」という看板を他の県に変えても通用するような総花的な内容。三重県らしい特長や、中小企業の実態を踏まえた内容になっていない。
 
C:小規模事業者が一番困っているのは、三重県による公共調達が安値競争(価格の叩きあい)になっていて地元の企業が参入できないこと。この条件を県は緩和すべき。
 
D:県は縦割り組織であり、中小企業の担当部署が条例を作っても他の部署がそれを知らなかったり従わなかったら、何の実効性もない。

 わし的には、これらはいちいちごもっともだと思います。
 三重県(庁)は現在、理念がない、戦略がない、検証がない、という3ない県庁なので、おそらく県議会筋から要望が出てきて知事部局が受身で作っている中小企業条例についても本腰が入っていないのではないでしょうか。
 以前もこのブログに書いたように、この中間案の原案には「県庁ブレーン」とも言うべき常連の一部の企業経営者や大学教員が強い影響を与えており、「製造業の技術力の高度化」だの、「海外展開や海外誘客の促進」だのといった、国(経済産業省)の受け売りともいえるまったくの帰納型・理念先行型の内容です。実際に日々の仕事で汗まみれになっている、中小企業の多様な現場を踏まえて、演繹的に導かれたものではありません。

 Cのような「まず官公需を増やせ」という意見は、小規模企業経営者にとっては切実な問題ですし、Dも長年、県の仕事を見ている経営者からすれば当然の疑念だと思います。県による調達や工事の入札条件もそうですし、たとえば県立学校(県教育委員会所管)が優秀な生徒の就職先に、大企業を差し置いて中小企業を薦めるでしょうか。答えは明白です。
 これらの意見に対して県担当者からは明確な回答はなく、「これはあくまで中間案なので、最終案に向けてこれから細部を詰めていく」という答えの繰り返しでした。

 わしも、以前このブログ(2013年10月24日付け  「もし三重県中小企業振興条例を作るなら」) に書いた疑問をたずねてみました。

 すなわち
a:平成18年に制定・施行されている三重県地域産業振興条例と、この中小企業振興条例の関係はどうなるのか?
b:コミュニティビジネスの担い手である非営利法人(NPO、社会福祉法人、医療法人、学校法人)などはこの条例による支援を受けられるのか?
 について聞いたのですが、
 答えは、
a→その質問は県議会からも同じような質問が出ており、検討・調整しているところ。
b→一部の医療法人は支援対象になるが、NPO法人は非営利活動をしており企業ではないので支援対象にはならない。とのこと。

 保育、介護、高齢者向け配食サービス、有償運送などの事業はNPO法人が行っていることも多く、地域雇用を支えている意味では実質的に企業と同じである。また、非営利がだめだというなら医療法人も非営利法人ではないかと言ったのですが、「ご意見も参考にして検討します」とのことでした。

 断っておきますが、わしは県の担当者の態度は誠実だったと思いました。条例案の説明は丁寧でわかりやすかったし、さまざまな意見にも謙虚に耳を傾けていました。その場で即答できない事情もよくわかります。

 しかし、約1時間の意見交換会で出た意見が、果たして実際にどれだけ条例に反映されるのかは不明です。
 はからずも閉会直前、出席者の一人が「今日の意見は、聞きっぱなしでなく、必ず条例に反映させてほしい」と念を押す発言をしていましたが、公聴会をやるだけやって結局は採決を強行した特定秘密保護法の例も頭をよぎります。
 この日のように県担当者が現場に来て意見交換会をやるのは伊勢だけらしいのが残念ですし、門戸を閉ざす県の姿勢にも疑問がなくはないですが、12月17日(火)まではパブリックコメントを受け付けているようなので、三重県の産業や中小企業の振興に関心がある方は、条例案をお読みの上、意見を送っていただいてはどうでしょうか。(リンクはこちらです)

 

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