2014年3月13日木曜日

尾鷲の土井見世家が公開されます

 わしは学生のときから旅行が好きで、沖縄と秋田以外の都道府県には行ったことが(少なくとも通過したことが)あります。いろんな宿に泊まりましたが、印象深いベストスリーは、夏休みを使って、初めてクルマで遠出した時にお世話になった、越中五箇山ユースホステルです。
 もちろん独身の頃で、設備や食事は質素でも安いのは何よりありがたかったし、この五箇山ユースというのは岐阜県飛騨地方から富山県にかけての伝統的な建築である「合掌造り」の古民家を使った宿泊施設で、そんな珍しいところに泊まれることに魅力を感じたのです。
 わしはその3階か4階の部分、つまり大きな三角形の合掌屋根のど真ん中の階に泊まりました。(なので、片方の壁は床から天井にかけて斜めになっていました。)
 真夏でもクーラーが要らない、という触れ込みだったのですが、実際にはけっこう蒸し暑く、眠れないまま同室の旅人達と夜遅くまでしゃべっていたことを思い出します。

 さて、話は変わって、YOMIURI ONLINEによると、尾鷲市の中心部に現存する1931年(昭和6年)に建てられた「昭和モダン」の邸宅を、保存して、まちおこしに活用しようと市民の有志が呼びかけているとのことです。


YOMIURI ONLINEより
 この邸宅は、江戸時代から続く林業家で尾鷲市の名家である土井家の分家の一つ、土井見世(みせ)家の邸宅。所有者である現在のご当主は市外に生活の本拠を移していることから、15年ほど前から空き家になっているものだそうです。
 手放すことも考えたものの、「取り壊されて駐車場などになるのは忍びない」と昨年11月、尾鷲市内の親類に相談したところ、その方は「街並みや景観を失うことは、文化を失うことと同じ。」と考え、邸宅を保存して、まちおこしに活用することを知人らに呼びかけ、来月12日には邸宅の活用方法などを考える「歴史的建造物保存会」を発足させることにしたとのこと。

 邸宅は木造2階建てで洋館造りの正面にポーチが配され、奥は和風建築となっているそうで、保存会の発足に先立って、今月23日午後1~3時、邸宅の説明会と見学会を開き、会員も募集するとのことです。(YOMIURI ONLINEへのリンクはこちら

 わしは以前、尾鷲に住んでいたので知っているのですが、尾鷲の中心地、銀行や商工会議所、郵便局などが集まっている地域は土井一族の邸宅が建ち並んでおり、明治初期に建てられた和洋折衷建築、すなわち大工の棟梁が西洋建築を模して建てた非常に重厚かつ技巧的な建物として有名な「土井本家住宅」もこの一角にあります。
 森林王と呼ばれた土井家にふさわしい建物だそうで、一般には非公開なのが残念(現在も居住されているため。仮に居住されていないとしたら間違いなく重要文化財でしょう。)ですが、なにしろこの一帯は、尾鷲の豊かな森林が育んだ良質の木材が使用された、デザイン的にも、雰囲気も素晴らしい建物が現存しています。
 土井見世邸も写真で見ると非常に優れた意匠であり、市民の手によって活用されれば尾鷲の重要な財産になることでしょう。

 そこで、五箇山ユースの話につながるのですが、この優れた建物を、ユースホステル、今風に言えばドミトリー(基本的にベッドのみを提供する簡易宿泊施設)に使えないでしょうか。
 尾鷲の自然を体感しに、あるいは地場産業へのインターンシップを行いに、さらにはフィールドワークや実習など教育カリキュラムの滞在に、尾鷲を代表するこのような建物で宿泊できたら、多くの人を惹き付けると思うのですが。

 最近は、古民家ブームで、古いものとして軽んじられてきた民家が、実は素晴らしい地域資源であることが再認識されています。最近では熊野市でも古民家をショップやレストランに再生した施設がオープンしたそうです。
 これは一つの有効活用方法だとは思いますが、建物の魅力をより体感できるのは、やはりそこでごろんと横になって眠ってみる、そして、窓から差し込む朝の光で目覚める、ということのような気がします。ぜひご検討を。

2 件のコメント:

三碧星 さんのコメント...

 ここは熊野古道を歩いたり、南紀方面にバイクツーリングをしている時に通り過ぎたり、写真を撮ったこともあります。
 土井家というと国道42号線をはさんで土井竹林と世界貿易で入手した海外お土産を展示する資料館もありますね。遠い昔に拝観して、抹茶をいただいたことがあります。

 紀伊長島も尾鷲も熊野も、どうも一昔前の方が活気に満ちて面白かったのではないかと思います。海は世界に繋がっていて、江戸時代から航路が開拓されたり。飛行艇が旅客を運んでいた時期もありましたが、時代が進んだ現代のこの閉塞感は何なのでしょうか。

 二見の賓日館。明治村に移築された宇治山田郵便局。児童減少で宿泊施設や体験間に姿を変えている各地の小中学校跡地。その姿を留める手法は様々ありますが、かつて尾鷲から世界を見通した人々の邸宅を拝見できるならお邪魔したいものです。

半鷲(はんわし) さんのコメント...

 そうですねえ。尾鷲の古い建築は尾鷲ヒノキなど使用されていて建造物として良質であるうえに、歴史や、かつての繁栄を忍ばせるような「物語」を持つことにアドバンテージがあると思います。
 そういった魅力を、できれば点でなく、線や面で展開していく方法があればいいのですが。