2014年5月17日土曜日

憂鬱なジャスミン

 ディズニー映画の「アナと雪の女王」が近年にない大ヒットとなっており、話題となっています。昨日はついに累計興行収入が176億円を越えて、日本での映画興行成績の歴代第6位となったというニュースも報じられました。
 「クールジャパン」などといわれていても、所詮は日本から海外に流通するコンテンツの多くはサブカルチャーであり、ビジネスとしてはアメリカの持つ力の大きさに及ぶべくもないことが ~残念なことではありますが~ 思い知らされる出来事ではあります。

 しかし、まずは百聞は一見にしかずと思って先日、映画館(シネコン)に行ってみたのですが、同時上映されていた、ウディ・アレン監督の ブルージャスミン のほうがブラックでおもしろそうな感じだったので、こっちを見ていくことにしました。(邦画も幾つかかかっていましたが、見たいと思うものが一つもありませんでした。)

 そして結果的に、その選択は間違いではありませんでした。大変おもしろかったです。これはおすすめ。




 内容やストーリーについては、ネタばれも含めて多くのネットサイトやブログなどに書かれていますので詳細はそれらに譲りますが、やはり圧倒的に登場人物たちが魅力的、個性的です。とりわけ、オスカーの主演女優賞を獲得した主人公ジャスミン役のケイト・ブランシェットの熱演(怪演?)は鬼気迫るものがあって、財産も家族も失った中年女性が、かといって今までの見栄も捨てられず、虚言癖も直らず、結局は身から出たサビともいうべき宿命によって精神のバランスを失い、転落していく姿は悪魔的な魅力すら感じられます。

 物語そのものは(ウディ・アレンの他の作品もわりとそうですが)けっこう単純で、サクサクと話が進んでいくのですが、過去と現在の時間が行きつ戻りつし、しかしながら長々した説明や余計な伏線もなく、つまり、無駄がない展開です。実際、上映時間はわずか1時間40分ほどです。

 昔、わしが大学生の時に聞いた話に、「日本が大好きなアメリカ人には注意せよ」というのがありました。アメリカは原則として実力主義の競争社会なので、誰もが上昇するチャンスをつかめると同時に、今の地位を追い落とされる危険性も常にはらんでいます。その結果、ストレスを抱える人が多く、精神科医や心理カウンセラーがどんな街にも必ずあって、ごく普通の多くの市民も「患者」となっているそうです。
 それとは逆に日本は流動性が低く、和や協調性が強く求められる同質社会です。このことは心をほとほと病み弱らせたアメリカ人にとってたいへん魅力的なものに映るらしく、競争社会を捨てて日本に逃避してくるアメリカ人も少なくありません。しかしこの人たちはアメリカでは「負け組」であって敗北体験となっているので、何かにつけて劣等意識があり、結局日本の社会にもなじめずに漂流してしまうタイプの人も少なからずいる、というような話だったと思います。(教育学か心理学の講義だったと記憶します。)

 この映画には日本は全く出てきません。むしろリッチだった頃のジャスミンは、モナコやパリなどヨーロッパでバカンスを過ごしていたようで、それを回顧するシーンがたくさん出てくるのですが、何か心理的に追い詰められる出来事があると、精神安定剤をビンから出してボリボリと噛み砕き、ウオッカをがぶ飲みして異母妹のジンジャー(サリー・ホーキンス好演!)やその恋人に当り散らす主人公ジャスミンが、癒しの理想郷としての「日本」を意識していたなら、彼女は日本にやってきたのだろうか、などと、そんなことを考えました。

 日本もこのままグローバル化が進むと、あと数十年もすればアメリカ流の超ストレス社会となって、精神科医が大繁盛するのかもしれません。

■映画「ブルージャスミン」公式サイト  http://blue-jasmine.jp/
 

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