2014年5月20日火曜日

丸山千枚田のグッドアイデア!

 三重県南部、熊野市紀和町にある丸山千枚田(まるやませんまいだ)は、ユネスコの世界遺産にも登録されており、眼下に広がる山の斜面に、さまざまな形をした小さな棚田が無数に築かれ、それが幾重にも幾重にも重なって麓まで連なっているのを見ると、この地で営々と米作りに携わってきたであろう先人たちの努力に思いを馳せるのは、決してわし一人ではないでしょう。
 初夏は満々と水を湛えて水面に青空を写している光景、盛夏は青々と育った稲が風にそよぐさま、秋には黄金色になった稲穂が見渡す限り続く景色。それぞれに美しく、決して忘れることができません。

 しかし、急峻な地形ゆえに昭和40年代になると耕作放棄が続出し、荒れ放題だったと聞くとやはり驚きますし、それが地元有志の努力によって平成に入ってからの比較的新しい時期に再興されたものだと知るとあらためて感慨深いものがあると思います。
 当時の日本はバブル景気は最盛期を終えていたものの、全国にはまだその熱気の余韻が残っており、政府が元祖「究極のばらまき予算」であるふるさと創生1億円事業をおっぱじめたりしました。大分県の一村一品運動など、いわゆる「地域おこし」「まち・むらおこし」が燎原の火のように広がっていった時期でもありました。

 ただ残念なことに、地域おこし、地域産業活性化の多くは失敗しています。第三セクターの放漫経営は社会問題になりましたし、そもそもおらが村の自慢の産品は、お米にしろ、お茶にしろ、シイタケにしろ、漬物にしろ、鮎にしろ、温泉にしろ、滝にしろ、その地域にとってはかけがえがない資源であっても大都会の消費者にとっては全国どこも似たり寄ったりの商品に過ぎず、産地間競争が激しくなると、またたくまにビジネスが成り立たなくなる例が続出したからです。

 しかし、その数少ない例外が、ここ丸山千枚田です。その取り組みは、熊野市ふるさと振興公社のホームページに詳しく書いてありますからそれをご覧いただくとして、わしが面白いと感じたのは、丸山千枚田を管理している同公社が「丸山千枚田視察案内」というメニューをホームページ内に設けていることです。これはグッドアイデアではないかと思います。(いつから始めていたのでしょうか? 不勉強ながらわしは今日まで知りませんでした。)

 熊野市ふるさと振興公社の視察案内のバナーをクリックしてみると、「当社(はんはし注:熊野市ふるさと振興公社のこと)は、熊野市の100%出資の団体であり、丸山千枚田保存会と共に保全やイベント行事、オーナー制度に取り組んでおります。多くの皆様に丸山千枚田の魅力や歴史、保全への取り組みを知っていただきたいため視察を積極的に受け入れております。」という説明文があります。

 現在日本全国には1900の市町村があり、それに準じる数の農協(JA)や商工会議所、商工会、漁協などの経済団体があります。わしの推測では、丸山千枚田の視察客のターゲットはこれらの市役所、役場、団体の「地域活性化担当者」や「産業振興担当者」であり、市会議員、町村議会議員たちです。
 御承知のように、彼らはベンチマークや視察と称して全国の先進地を訪れ、成功の秘訣を学んだり、キーパーソンから話を聞いたりします。残念ながら、そのベンチマークや視察が活かされ、視察した市町村が視察先以上に活性化した例はほとんどありませんが、現実問題として「視察」は国内旅行業界において、修学旅行や職場の親睦旅行などと並んで、一つの旅行商品であり、大きなマーケットなのです。
 
 これらの団体やグループを月1組でも呼び込むことができれば、観光客、もとい、交流人口が増加し、丸山千枚田は経済的にも潤うことでしょう。
 議員さんたちの視察旅行の「幹事」である市役所や役場の議会事務局の職員も、丸山千枚田を視察先にすれば安心です。なぜなら、熊野市ふるさと振興公社は下記のような丁寧なQ&Aまで用意しているのですから。

Q、視察料は要りますか?
  当社では視察料金はいただいておりません。その代り当社経営のホテル瀞流荘にて、食事
 や宿泊をご利用いただくようおすすめしております。

Q、大型バスは通行できますか?
  丸山千枚田は大型バスで通行することができません。当社経営のホテル瀞流荘をご利用い
 ただ ければ、ホテル瀞流荘の小型バスに乗り換えていただき、案内させていただきます。

Q、丸山千枚田保存会と意見交換することができますか?
  視察内容によっては、保存会と意見交換することが可能です。

Q、宿泊するにあたり千枚田の他に何かありますか?
  丸山千枚田視察後は、ホテル瀞流荘から湯ノ口温泉をむすぶ、紀州鉱山跡の懐かしいトロ
 ッコ電車に乗り込み10分間の小さな旅を楽しんだり、近くを流れる北山川をウォータージェット船
 で、春には新緑、秋には紅葉、四季折々の景観が楽しめる瀞峡谷巡りがあります。

 何と親切なのでしょう。
 真面目な話、視察する側も成功例が実地に見聞きでき、体験もできるのですから、双方WIN-WINの関係になることでしょう。

 熊野市を始め、三重県南部の東紀州と呼ばれる地域は、熊野古道という世界遺産を持ち、地域活性化の小さな、しかし堅実な成功例を実はたくさん持っています。持っていますが、奥ゆかしいのとPR能力がないので、外部に付加価値を付けて情報発信することができません。
 付加価値を付けた情報発信とは、まさにこのような「特定のターゲットに絞った」「しかし、そのターゲットは全国に分布していて市場の総量は大きい」というセグメントです。

 この視察受け入れ、繰り返しですが、わしとしては非常にユニークで、期待が持てる取り組みだと思います。これから秋にかけての視察シーズン、はたして全国からどれくらいの視察団が千枚田にやって来て、ノウハウを得ていくでしょうか。注目です。


■熊野市ふるさと振興公社  http://www.kumano-furusato.com/index.html

■丸山千枚田の視察について  http://www.kumano-furusato.com/senmaida/sisatu.html
 

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