2014年5月21日水曜日

ソー・ロング、ポール

 ポール・マッカートニーがまだビートルズに在籍していた1969年、ポール・マッカートニー死亡説なるものが全世界に流れたことがあります。
 LPアルバム「アビー・ロード」のジャケットは、ビートルズの4人が横断歩道を渡っている有名な写真ですが、これは葬儀の行列を表しており、三番目に裸足で歩いているポールは埋葬されるものに当たる、とか、ビートルズの曲の中でジョン・レノンが「ポールが死んだ、悲しいことだ」と(もちろん英語で)つぶやいている、とかいった「死亡の証拠」が次々と発見され、やがて何と「ソーロング ポール」(So long Paul)なる追悼曲まで発売される始末。ポール本人が正式に噂を否定するまで、多くのファンは半信半疑ながらも騒動に巻き込まれたのでした。

 ポール・マッカートニーはそれから45年間、まもなく72才になるという今もポップス界の第一線でスーパースターであり続けています。本当に驚嘆すべきことです。
 しかし不世出の天才である彼も、老いから逃れるすべはありません。体調管理さえ難しい年齢となったことは ~自然の摂理であり至極当然のことなのですが~ 今回の日本ツアー全日程キャンセルという結末によって、世間も認めざるを得ないことになりました。



 考えてみれば皮肉なことです。
 若きビートルズは、デビュー当時は青少年を堕落させる不道徳なロック音楽の楽団として、識者から総攻撃を受けていました。(もちろん、反逆のロックスターのメジャーどころとしては、すでにエルビス・プレスリーがいたわけですが。)
 リアルタイムでビートルズに熱狂したのは、1960年代後半にティーンエイジャーだった、ベビーブーマたち、日本流に言えば団塊の世代の若者たちです。
 それまで、エレキギターをかき鳴らして歌詞を絶叫するロックバンドは不良、自堕落の代名詞で、実際に田舎ではレコードを買うにも勇気がいったようです。

 しかし、ビートルズは高い音楽性を持っており、単なる色恋を歌うロックバンドから、抽象的、哲学的な歌詞と、質の高い多様なサウンド作りにより、当時は珍しかった「コンセプトアルバム」という手法を確立し、「アーティスト集団」へと次第に進化していきます。
 60年代の若者を包んだ、ベトナム反戦、マリファナ、ヒッピームーブメントなどの文化を体現し、今でも高い音楽性は多くのファンを虜にしています。

 ただ、すっかり老人となったポールは、今では同じ世代のやはり老人のファンたちを相手に高額なチケットを売り、高額の利益を上げる、ロックビジネスの成功者でしかありません。
 もちろん、彼の歌やパフォーマンス、ステージに取り組む姿勢は素晴らしいし、今でも数々の歌には胸を打たれます。(わしも彼の歌を何度かこのブログで取り上げているほどです。)
 が、正直言って彼の創造性はもはやピークを超えています。「懐かしのメロディ」を引っさげて各地を営業している演歌歌手と相似形をなしていると言っては言い過ぎでしょうか。
 高齢者はおカネをもっているので、ビジネスとしては悪くありません。健康で、若いものに負けず頑張るポールの姿は多くの同年代のファンにとって鏡であり、手本でもあるでしょう。夢を見させてくれるのはうれしいものです。

 けど、やっぱり、そろそろ無理なのではないでしょうか。
 今回のライブ公演中止で、払い戻すチケットは17万枚、金額は30億円にもなるそうです。プロモーター(キョードー東京)も万一に備えて保険には入っていたと思いますが、それにしても後始末に費やすエネルギーは膨大でしょう。

 おカネもあるし、名誉もあるし、あとは他人に迷惑をかけず、ゆっくりと健康に老後を過ごしてはどうかと思うのですが、ポールじいちゃん。

2 件のコメント:

三碧星 さんのコメント...

『strawberry fields forever』の「cranberry sauce♪」でしたっけ?
「I'm bury Paul♪」に聞こえたとか。

高校の頃、少ない小遣いでギター譜を買いました。来日時には何かとハプニングが起きるポールですが、良い老後を楽しんでもらいたいものです。

半鷲(はんわし) さんのコメント...

 そういえば30年くらい前の時は大麻不法所持で入国を拒否されたことがありましたね。「ダメ、ゼッタイ!」系の前科だと思いますが、スーパースターであり続けると世間は許してくれるんですねえ。