2014年5月30日金曜日

手を変え、品を変え

 内閣官房地域活性化統合事務局が、「地域活性化モデルケース」の選定結果を公表しました。これは、いわゆるアベノミクスによる景気回復の影響が地方では実感できない、という声が多いことに配慮し、国が
① 超高齢化・人口減少社会における持続可能な都市・地域の形成
② 地域産業の成長・雇用の維持創出
 という2つのテーマについて、都市・地域の構造や地域産業を総合的に改革する取組みを行うモデルケースを選定し、関係府省の関係施策等で最大限支援するという事業です。
 公募の結果、135件の提案があり、有識者による選定の結果、テーマ①については16件、テーマ②については17件が採択されています。
 三重県からも、三重県や鳥羽市が提案していた、「『食』で拓く三重の地域活性化」及び「健康、伝統をテーマとした「鳥羽マルシェ」食のしあわせ循環創造事業」と、三重県や愛知県などが提案していた「世界最強のものづくり先進地域を目指して」の2件が採択されており、ご同慶に耐えません。
 しかし、まあ、このニュースを知った地域産業活性化関係者のほとんどが直感でそう感じたであろうように、この事業によって地方が抱える2つのテーマが解決することはあり得ないし、ましてや今回選出された事業が全国のモデルになることなど決してないでしょう。このことは断言できます。

 実は、地域が抱える総合的な課題に対して、県や市町村が具体的な解決策の案を作って国がそれを「認定」し、その認定計画に対して各省庁が横断的に支援するというスキームは目新しいものではまったくありません。
 わしが東紀州に関わっていた平成19年にも、人口の減少と地場産業の衰退に悩んでいた尾鷲市が各省庁が連携した支援を受けて地域の活性化を目指す、という計画が鳴り物入りで定められたことがあります。
 たとえば、中小企業基盤整備機構の「地域資源活用チャンネル」には、平成19年10月16日付けの日刊工業新聞の記事が転載されています。

 中部経済産業局は15日、東海農政局、中部地方整備局、中部運輸局、三重労働局と連携して三重県尾鷲地域の産業活性化に取り組むと発表した。
 尾鷲市が17日に立ち上げる「尾鷲地域産業活性化協議会(仮称)」に、オブザーバーとして各局が参加。地方分局が連携して支援する珍しいケースで、尾鷲地域をモデル地域とする。
 尾鷲地域は海洋深層水を核に、地域活性化を推進中。企業誘致や地域資源活用、人材育成などさまざまな分野の施策について、各局が連携しながら支援する。企業立地促進法に基づき各地で地域活性化策を進めており、尾鷲地域の取り組みもその一つとなる。

 というものでした。もちろん関係各位の動機は純粋で、事業にも並々ならぬ熱意で取り組まれたことはよく承知していますが、残念ながら高速道路が開通したほかは、計画の目標はほとんど達成されておらず、尾鷲市の人口は当時に比べて1000人近く減少しました。

 平成19年といえば、自民党政権末期の福田首相の時代で、経済の自由化を推し進めた小泉改革の「行き過ぎ」を修正するために、地域資源活用促進法や地域産業活性化法(企業立地促進法)、農商工連携促進法といった、地方に対する格差是正のための手厚い産業振興の法律 ~いわゆる「ゴメンナサイ法律」~ が次々作られ、実施に移されていた時期です。

 しかし、尾鷲ばかりではなく、日本の地域(田舎)の疲弊はすでに不可逆的になっており、通り一遍で、他の地域との差別化要因がほとんどない、地域資源を活用した商品開発や工場誘致、観光振興などで課題が解決するほど甘くはなかったのでした。
 もちろん、当事者の省庁や県、市もその情勢は十分に把握・理解していて、ただ単に補助金などの金銭的なメリットを財源として期待していただけなのが実情でしょう。

 この構図は、今回の「地域活性化モデルケース」でも同様です。
 採択事例を見ると「食」とか「エコ」とかの美辞麗句や、「ビッグデータ」「医療、ヘルスケア」「航空機」「クラスター」などの定番キーワードが並んでおり、そもそも日本は同質性が強い国なので、ある一地方だけが何かに突出して優越していることなどあり得ず、要は似たり寄ったり、ちっともサプライズのない、しかるべき落としどころに落とし込まれた計画がノッペラボーに並んでいるだけです。

 採択地域も、わしの出身地である鳥羽市を始め、岐阜県高山市、島根県海士町など常連の補助金ハンターがずらりと並んでおり、ある種の「支援策獲得テクニック」に精通した地域や団体が圧倒的に有利であることをうかがわせます。

 こうした、ハッキリ言って意味のない政策は、一体いつまで続くのでしょうか。
 問題の一つは、地域産業活性化法をはじめとした「産業政策」の多くが事後検証されず、したがって無意味であることが定性的、定量的に証明されていないことです。PDCAをしっかりやる、というのはいついかなる場合でも鉄則だと思いますが、地域振興は一種の利権なので、都合の悪いことには目をつぶりがちなのです。

■首相官邸 地域活性化モデルケースの選定結果について 

 

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