2014年6月2日月曜日

ソーシャルビジネス法人とは何か

 自民党の日本経済再生本部が、先月末に「日本再生ビジョン」なる提言を公表しました。

 政府の成長戦略「日本再興戦略」の見直しが行われている中、自民党サイドからの具体的な提案を盛り込んだものだそうで、地域の活性化のためにプロ野球団を現在の12から16に増やす、といった提言がマスコミに取り上げられ、何だかいかにも政治家が考えたふうなパッとしない内容のものかと思っていました。

 実際に読んでみると、確かに施策の多くは、特に地域経済活性化に関する提言はあまり新味がない、従来政策の焼き直しみたいなのが多いと感じざるを得ません。
 たとえば、「地方再生なくして日本再生なし」であるとして、地方経済の活性化のためには地域文化の尊重や、地方企業特有の事情に配慮した多様な支援策が必要である、と分析している箇所があります。(62ページ)
 これは、わしもまったく同感なのですが、それでは「地方のことは地方で」という分権の議論になるのかと思ったら、「政府が、これらの多様な政策を、関係省庁横断的に、総合的な政策として打ち出していくことが極めて重要である。」などと、今までの延長線上にある中央集権的な、したがって必敗であることが取り組む前からほぼ確実な、トンチンカンな処方箋が示されます。(ほかにも産業クラスターの推進だのの、ゾンビのような意味不明の提言もあって読み手を不安にさせます。)

 もっとも、このビジョン自体に対しては、コーポレートガバナンスの強化や、株式の持ち合いの抑制といったような、今まで日本企業独特と考えられていた慣行にメスを入れ、企業の収益性の向上を目指すといったように、今まで以上に踏み込んだ積極的な提言を含んでいるとの肯定的な論評もあります。(たとえばこちらを)

 そんな中、新しい法人形態「ソーシャルビジネス法人」の法制化 というものを見つけたので興味を引かれました。



 今、法人の組織にはさまざまな種類のものがあります。ソーシャルビジネス(コミュニティビジネス)についても、担い手は株式会社や有限会社のほかに、特定非営利活動法人(NPO)、合同会社(LLC)、企業組合、社会福祉法人など実に多様であり、社会的な課題をビジネスの手法によって解決する、という自社のソーシャルビジネスのミッションに最もふさわしい組織形態を選択して活動しているのが実態です。

 これは、ソーシャルビジネスの目的が必ずしも収益の極大化のみではないことに由来しています。
 ソーシャルビジネスもビジネスである以上、組織継続のため、そして運転資金や設備投資資金確保のために必要な収益を確保することは当然です。
 しかし、スタッフのモチベーション維持のためにはあえて会社でなく、NPOとし、非営利活動(=収益を出資者に分配せず、事業に再投資する)であることを明確にするほうがよい場合もあるでしょう。
 反対に、ボランティアではなくビジネスであることを明確にし、各種のガバナンス規定がしっかりしている会社組織に、あえてするケースもあるかと思います。
 このように、ソーシャルビジネスの担い手が多様であることは事実ですが、わしは不勉強ながら、ソーシャルビジネスの現場で、会社でもない、NPOでもない、新しいタイプの法人形態が望まれているということは知りませんでした。

 日本再生ビジョンによると
・環境、福祉、教育、エネルギー、治安など、社会問題の解決のためにNPO(非営利団体)を設立する起業家(広義)も多い。しかしNPOの中には安定的な財源を確保できず、財務的な持続可能性に課題を抱えている団体も多い。
・そこで、株式会社とNPOの中間に位置する法人形態として「ソーシャルビジネス法人(仮称)」の法制化が必要である。
・ソーシャルビジネス法人とは、事業運営に必要な費用を自らの売上で生み出すという意味において株式会社と同義である。一方会社法で定められた株式会社とソーシャルビジネス法人の違いは、株主への配当制限や経営者報酬の制限であり、利益は社会問題の解決に循環させなければならない。
・ソーシャルビジネス法人という新しい組織形態の検討ならびに法整備に直ちに着手し、各種優遇措置も含めた環境整備を図ることで、様々な社会問題の解決に寄与すると同時に、雇用と納税を生み出す「社会的起業」を促進する。
 とあり、会社と新法人の違いは「株主への配当制限」と「経営者報酬の制限」だとの説明です。

 しかし、配当が制限される株式や、議決が制限される株式は、現行の会社法でも定款に記載すれば発行可能であり、現実にソーシャルビジネス企業の中には、事業に対する理解のうえで応援として株式を引き受けてもらい、その際、議決権や配当権を制限ないし放棄してもらっているケースもあると仄聞しています。(もちろん、これらは違法ではありません。)
 つまり、株式会社といえども出資より投資、いや、寄付に近い株主が支えていることで、経営者は利益確保のプレッシャーが軽減されるのです。

 このように、株式会社を法の運用で対応している現状では、やはり何か不都合があるということなのでしょうか。
 また、NPOの場合は、そのNPOに寄付した人が税控除を受けられる、いわゆる認定NPOに認められるための要件が非常に厳しく、多くのNPOが有益な活動をしながらも寄付が集められず財政が不安定だという課題もあります。
 自民党の言うソーシャルビジネス法人は、寄付金に対してどのようなスタンスとなるのでしょうか。これも大きな懸念です。

 いずれにしろ、これからの日本では、地域の社会課題は地域住民自身で解決していくことがますます求められるようになり、ソーシャルビジネス(コミュニティビジネス)が果たす役割は一層大きくなることから、経済政策としてこれらを支援していくことは重要です。
 その議論が深まるために、「日本再生ビジョン」の議論が広まっていくことを期待したいところです。

■自由民主党 日本経済再生本部 「日本再生ビジョン」

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