2014年6月23日月曜日

なぜ結婚しないのか、なぜ子供を産まないのか

 先年廃校となった三重中京大学が、まだ「松阪大学」という校名だった頃と記憶するので、もう15年以上前のことです。評論家の桜井よしこ氏の講演会を聞きに行ったことがありました。
 今では反中韓の主張ばかりが注目されている気味がありますが、この時は「日本の少子化にどう対応するか」という講演テーマであり、桜井さんが話した内容は、わしにとって目からウロコであり、今でもおぼろげではありますが、その中身を思い出すことができます。
 ちょどこの時期、厚生省の平成元年の人口動態統計で、合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子供の数)が過去最低の1.57となったことが大きく報道されました。(1.57ショックと言われました。)
 ただ、この時はまだ世情も切迫した危機感はなく、ニッポンもこれから大変だなあ・・・くらいの、まだ幾ばくかの救いはあるような感じではありました。しかし、桜井さんは、日本の人口は50年後に半分になる、みたいな話をキッパリとされ、今から対策を取らなくてはならない。人口とは国力そのものであって、人口が減少した国で繁栄を続けているところなどかつてなく、少なくとも人口の横ばいを維持するためには社会を変革しなくてはいけない、というようなことを例の淡々とした、しかし芯の強い口調で語っておられました。

 その時に出てきた話が、このグラフの話です。(このグラフは 社会実情データ図録のホームページから転載させていただきました。)


 この表は、結婚していない男女が設けた新生児の数、つまり「婚外子」が全出生数に占める割合です。平成20年の統計で、スウェーデンは54.7%が婚外子。フランスも52.6%。、イギリスでも43.7%は婚外子です。一方、日本は2%と極端に低く、結婚している夫婦以外の男女が子どもを設けることのハードルが異常なほどに高い国であることがわかります。

 これは日本の歴史的な価値観や家族観に強く根ざしていると見ることができます。結婚とは本来、家同志の結びつきであって、法律婚(婚姻届を出して法的に認められる婚姻関係)こそが正式な結婚であり、同棲のような事実婚はあくまで男女の個人的な関係に過ぎない。このような関係で子供を設けるのは社会的に望ましい姿ではない、という考え方が強いことは、たとえば殿村琴子氏が指摘する、
 第一子の出生数に占める、結婚期間が妊娠期間より短い、いわゆる「できちゃった婚」による出生の割合は、15~19歳で8割以上、20~24歳で約6割にも上り、全年齢でも26.3%と、日本の長子の実に4人に1人が両親の結婚を促した可能性がある
 という事実でも明らかですし、この種の話は多く見聞きすることでもあります。(第一生命経済研究所 日本における「結婚」へのこだわりと婚外子 2005.11

 桜井さんの講演に話を戻せば、日本はすでに自然減モードに入っており、これは並大抵のことでもとに戻すことはできないとして、フランスの例を話されました。
 かつてはフランスも人口が伸び悩んでいました、1970年代に人工中絶の合法化や避妊用経口ピルの薬局での販売解禁等により、女性に妊娠・出産に関する自己決定権を付与すると同時に、婚内子と婚外子の法的地位の差別撤廃、世帯単位課税の廃止と分離課税の導入、成人年齢の引き下げ(18歳)など、家族のあり方やスタイルの多様性を認める改革を行うことで、事実婚のカップルでも安心して出産できるような施策を推進したのでした。
 その結果、フランスでは1980年ごろから婚外子の出生数が目覚ましく増加しはじめ、総人口は今でも増加傾向です。

 その時の桜井さんの講演の結論は、意外にも ~今の保守の論客としての桜井さんのイメージと違うような気がわしはするので~ 、日本でもフランスを真似て、婚外子を認めること以外に人口減を食い止める方法はない、ということでした。
 これは確かにその通りで、今流行の、女性の社会進出支援、育児休業の取得推進、保育施設の拡充、不妊治療への補助などももちろん大事ですが、大局的に考えれば日本の社会常識や伝統的な価値観を変えて、婚外子も社会的に受け入れる土壌に変えることが何より必要なのだと思います。(それに引き替え、イクメンだの何だの、いかに浮ついた、呆けた議論でしょうか!)

 桜井さんのこの話を思い出したのは、言うまでもなく6月18日の東京都議会で、妊娠や出産、不妊に悩む女性への支援の必要性を訴えた女性の都議に対して、自民党の男性都議(51才)が、「(自分が)早く結婚すればいい」「産めないのか」などのヤジを浴びせ、大きな社会問題となっている事件がきっかけです。
 整理しないといけないのは、「結婚する」ことと「子供を産む」ことは別次元の話だということです。本当に少子化を食い止めるなら、結婚と出産は切り離し、結婚しないカップル(事実婚のカップル)でも出産できる社会にすることが必要で、その方がよほど即効性があるでしょう。
 旧来の価値観にとどまったまま、若い女性や若い男性に「早く結婚しろ」「結婚したらたくさん子供を作れ」と要求しても、何も変わらないのです。つまり、我々全体が変わらなければ、社会の一部である若い男女も変わらないのです。 


<6月26日追記>
 東京都議会の塩村文夏議員に浴びせられたヤジのうち「産めないのか」というものについては、ご本人の聞き間違い(?)か、このヤジは実際にはなかったとの議論が大きくなってきています。

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