2014年6月25日水曜日

足りないのは医師だけではない

 毎日新聞のオンライン配信である 毎日.JP に、先日、名張市で開催されたという「地域医療を考える」という市民公開講座の記事が載っていました。
 名張市立病院の伊藤院長が「地域医療再生に向けて」をテーマに講演し、三重県内の医師数について、国のデータ(2012年)を基に説明し、「人口10万人当たりの医師数」の病院勤務の医師数が全国平均132人に比べ、県平均は106人にとどまっており、さらに伊賀地域は55人であるとし、医師不足は深刻であり、「伊賀市と名張市の行政、病院、医師会、市民が協力して医師が集まるような地域にすることが重要」と訴えたとのことです。(6月22日付け リンクはこちら

 特に公立病院のような大病院で医師が不足していることは非常に大きな問題であり、多くの住民も「医師不足」について聞いたことがあると思いますし、これへの対策はまさしく急務です。
 しかしこれと同時に留意すべきなのは、不足しているのは医師ばかりでなく、医師以外の医療専門職(コメディカル)も人材は不足しており、特に看護師の人手不足は致命的に深刻で、「医療崩壊」は看護師不足から具体化しているという客観的事実です。



 医療現場は医師さえいれば何とかなるのでは決してありません。病院での医療行為は、医師と、看護師などのコメディカルを含めた「チーム医療」なので、バランスを欠いたチームは存在そのものが危険性をはらんでいることには十分な留意が必要です。

 これを図示したものが、厚生労働省の「コメディカル不足に関して~看護師の人数と教育~」という資料です。

厚生労働省ホームページより

 病院の職種構成は多岐にわたっており、その中で医師の割合は11%に過ぎません。医師が医療行為の中心であることは間違いありませんが、他の専門職の位置づけも非常に重要であることがおわかりいただけるでしょう。

 では、たとえば、三重県で、看護師は充足しているのでしょうか。今までの話の流れからお察しの通り、まったく不足しています。
 日本看護協会の看護統計資料によると、平成20年12月時点の病院報告等の統計により算出した人口10万人当たりの看護師数は、全国平均が1,030.2人なのに対し、三重県は986人で、全国35位となっています。この数字はあるべき充足数を示したものではありませんが、絶対数ははるかに低位にあり、看護師不足は明らかでしょう。(リンクはこちら

 この看護師不足の問題は、医師不足が大きな社会問題になるはるか以前、少なくとも25年以上前から指摘され続けてきていました。看護学校の増設や定員増、職場への定着支援(=離職防止支援)、退職した看護師の復職支援、キャリアラダー制度の普及促進など、多くの対策が取られ続くてきましたが、今なお、解決にはほど遠いのです。

 さて、昨日、安倍内閣による新成長戦略(日本再興戦略)が閣議決定されました。この中では、「女性」「農業」「医療」が成長分野と位置付けられており、女性の役職者への登用促進など、多くの支援策が打ち出されています。
 これ自体はもちろん意義のあることかもしれません。しかし、女性が活躍している代表的な職種である「看護師」が、女性活用策の失敗の連続だったという事実は謙虚に直視する必要があると思います。高度な専門職種といえる看護師でさえ、(というか、それだけ責任も伴う職種ゆえに)離職と復職困難の抜本的な解決には至っていないのです。政治のリーダーシップによる、国民意識の改革、社会のあり方の変革がぜひとも必要と考えられるゆえんです。

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