2014年6月7日土曜日

東紀州の自動車交通量が13%も増加

 国土交通省紀勢国道事務所とNEXCO中日本は、今年3月30日に全線が開通した高速道路・紀勢自動車道(紀勢大内山IC~尾鷲北IC)と、自動車専用道路・熊野尾鷲道路(尾鷲南IC~熊野大泊IC)の、開通後(平成26年5月18日)の通行量調査の結果を発表しました。

 それによると、調査地点(紀勢大内山ICと紀伊長島の中間地点)の通行量は14100台で、暫定供用時の平成26年3月16日の通行量13400台に比べて5%増加しています。
 これを全線開通前の平成25年3月17日の調査(12500台)と比較すると13%も増加していることとなり、一日だけの(しかも日曜日だけの)限られた調査ではありますが、全線開通によって交通量が増加していることがデータの面からも明らかになりました。

 また、ゴールデンウィーク中の平成26年5月4日に、紀北町、尾鷲市、熊野市の3カ所で通行量を調査したところ、昨年の同時期に比べそれぞれ6%~12%の増加となっていることも実証されました。

■紀勢国道事務所  紀勢自動車道・熊野尾鷲道路の開通後の交通状況等について(PDF)

 この発表では
●観光客の増加による地域活性化
 高速道路開通にあわせて、地元自治体による観光振興キャンペーンが次々と行われた効果もあって、主要観光施設の入込客数が増加している
●高速バスのルート変更によるアクセス性の向上
 高速道路開通により、名古屋市~熊野市間の高速バスの所要時間が最大40分短縮されたほか、運行本数も増便され、ゴールデンウィーク期間中は、利用者が約2割増加した
 などの副次的な効果もあったことが書かれており、広域防災機能のほかに、地元の活性化や生活利便性向上にも貢献していることが強調されています。

 これは、交通不便地であり、一説には「本州で、東京から一番遠い(飛行機が使えないために所要時間がかかる)地域」と言われていた東紀州地域にとって、まさに狙い通りの話であり、この意味では誠にご同慶に耐えません。

 わしが気になっていたのは、高速道路や自動車専用道路の通行量は増えたとしても、その分、並走している(元々あった)一般国道42号の通行量がその分減っていたら、これはゼロサムゲームで通行量の総量は変わらないのではないか、ということでした。
 しかし結果を見る限り、国道42号の通行量は激減しているのは事実ですが ~カーブや上り下りが連続する道路事情からすれば、それもやむを得ないでしょう~、高速道路分との合計、つまり交通量の総量は増えているので、東紀州地域全体の需要が新たに開拓されたと見るべきなのでしょう。
 東紀州の各市町や企業、団体等では数年前から高速道路の全通に備えて、観光施設の整備といったハード面と共に、観光資源のブラッシュアップや情報発信、地元の産品を使った商品やメニューの開発などのソフト事業にも取り組んできており、それも今のところ、ほぼ狙いどおりの成果を上げているといえるのかもしれません。

 しかし、一方で懸念もあります。これは誰が悪いということではなく、利便性が向上する、そのいわば副作用として否応なく将来に表れてくる問題です。

1 ストロー現象
 道路開通によって名古屋はもちろん、津市や松阪市といった三重県内の都市へのアクセスも向上したため、現在東紀州にある企業の支店や営業所は統廃合が進むでしょう。何かあったら津や松阪から高速道路で出張してくれば良いのです。
 三重県(庁)も、人口が8万人(県の総人口の5%以下)足らずの東紀州地域に、尾鷲と熊野の2つの総合庁舎を持っています。しかし全県のバランスと維持コストを考えれば、これは早晩、過剰な投資であるとして削減(統廃合)の対象となるでしょう。
 今まで、尾鷲市や熊野市は少なからず企業や官庁の「支店経済」の恩恵がありましたが、これは激減するでしょう。

2 地域間格差
 調査資料では、来場者が増加した施設としてキャンプイン海山(1.5倍増)、おわせお魚市場おとと(1.3倍増)、お綱茶屋(2.2倍増)が挙げられています。
 しかし、調査対象ではなかったのでしょうが、全通後、明らかに集客が低下している観光施設も多くあり、大きな格差が生まれています。
 これ自体は経済活動による優勝劣敗であるため一概に悪いとは言えませんが、建設に公金が投入されたり、運営に地域の住民が多く参画しているなどの場合は、経営の悪化が地域活力の低下に結び付く可能性が大きいといえます。

3 将来の維持管理
 根本祐二氏などが言うように、近い将来の日本は国民の高齢化と共に、インフラの老朽化が大きな社会問題となることが避けられません。高度成長期に全国に作られた橋、トンネル、用水路、ダムなどの数は膨大で、東紀州の高速道路も修繕が必要となる10年後、30年後、50年後、財源は担保されているのか、その前にそもそも修繕工事に携わる技術者が確保できるか、などは深刻な問題になるでしょう。
 特に紀勢自動車道のほうは、勢和多気ICから尾鷲北ICまでの全区間(55km)のうち、勢和多気~紀伊長島ICの間はNEXCO中日本が建設を行い、紀伊長島IC~尾鷲北IC間の21kmは「新直轄方式」として国交省が直営で建設しました(このためこの区間は通行量も無料)。これが将来の修繕にも何らかの影響を与えるかもしれません。


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