2014年7月10日木曜日

なぜ過疎地域の若者引き留めに通信制大学は無力なのか

 三重県(庁)のホームページをつらつらと見ていたら、平成26年度第1回南部地域活性化推進本部 本部員会議資料 なるものが仔細に公表されています。
 逃げていてはだめで、現実は直視せねばなりませんが、南部地域活性化局の前身である「東紀州対策局」の頃から、三重県が講じている三重県南部地域への、~つまり過疎化高齢化が進み、企業などの働き口が少なく、したがって県民所得も低い地域に対する~ 活性化対策は、ほとんど、もしくはまったく成功していません。
 東紀州対策局が三重県庁内に設置されたのは平成18年ごろだと思いますが、そのころから県南部は一貫して人口が減少し、高齢化率が高まっています。この原因はまさに現代日本の抱える複合的な要因によるもので、行政の、ましてや住民自身の責任とは決して言い切れないのは事実です。
 しかし、それにしても、冒頭の資料群の中の「資料2-4 南部地域活性化 (若者の流出、 人口減少社会 等) に係る意見交換 概要」を読むとき、「有識者」が語る問題意識や示す解決策は、実にわしがいた6年前と、ほとんど何ら変わっていないことに驚かざるを得ません。

   たとえば、大学がないために高校卒業者のほとんどが地域外に出ていく問題について、有識者の大学教授が
「今後は、大学進も含めて若者に三重県内にどのように留まってもらうかを考えていくことが必要。三重県の中で完結きるような教育など。」
とか、
「情報をうまく使うと過疎地にはメリットなる。ICTを取り入れていけば、地方での教育格差も埋めることができる。」
とか語るのを聞くとき、ああこのセリフ、いつかも聞いたよなあ、とわしなどは思ってしまうのです。現実は何も変わっていません。


 ICTを使えば、教育格差は埋められるのでしょうか。
 実際には、通信制の課程を持っている大学は今でも数多くあります。テレビやラジオ、ネットで学ぶ「放送大学」という大学もあります。
今流行のMOOC(ムーク)というネットによる大学教育プログラムもありますし、この日本版のgaccoというものもあります。
 MOOCは三重県南部どころではない、アフリカやアジアの最貧国や紛争地域の若者の、先進国との教育格差を埋めることも主眼の一つです。
 これほどに数多くの学びの機会が用意されているのに、なぜ三重県南部の若者流出は止まらないのでしょうか。

 これは、言うまでもなく大学の学部課程は、まだまだ人格の養成過程のニュアンスが強く、友達や、恩師や恋人や、そんな人たちを必要としている年齢だからだと思います。
 要するに、通信教育で勉強だけするのでなく、サークルやクラブや趣味といったそれを取り巻く環境こそに憧れているのであって、勉強自身はさほど重要でない、ということです。これは自分の学生時代を振り返ってみても、ごく当たり前のことです。

 なので、ICTの教育を実践するのであれば、
1)たとえば大学進学や就職などでいったん地域外に出た人がUターンしてきた後、新しく就く職業の訓練や再度のスキルアップのための「リカレント教育」に特化する
2)メディアによる座学に加え、スクーリング(集合学習)やサークル活動などもパッケージした、過疎地在住の若者向けの専門カリキュラムに特化する
 の2つしか方法はありません。

 この点で、わしが強く感じるのは、地域に貢献する意味を大学は取り違えているのではないかということです。
 ゼミ合宿で大学生がほんの短期間だけ田舎に滞在し、老人の話を聞いて「感動」したり「地域の魅力を再発見」して、自分たちが考えた活性化策の発表会をする、といったような茶番でなく、大学の本業である教育の能力を(教員の能力を、というべきか)を高めてもらい、上記のような過疎地向け専門の大学教育プログラムを作ることです。
 どっちみち、地方大学は研究以上に教学に注力せざるを得ないのですから、大学は本来の(と、わしは思う)学生への指導法や教材作りといった役割にまずは徹すべきではないでしょうか。

 
 

2 件のコメント:

maro さんのコメント...

おっしゃる通りだと思います。
現在、大学が関わっている地域活性化事業は、卒業論文や研究室の研究ネタになっているだけのように思えます。

半鷲(はんわし) さんのコメント...

 東紀州でも伊勢志摩でも、県内はじめいろいろな大学がフィールドワークをやって、活性化策の発表会をやっていますが、実現した例はあまりないし、持続もしません。地元住民には「学生の受け入れ疲れ」も垣間見えます。
 大学も、そして行政も含めた地元は、いつまでこんなことを続けるのでしょうか??