2014年7月27日日曜日

ウナギの完全養殖はいつごろに可能なのか

 三重県玉城町にある「増養殖研究所」の一般公開があったので行ってみました。
 増養殖研究所は、「独立行政法人 水産総合研究センター」という組織に属しており、ここ玉城町のほかにも三重県内には南伊勢町に「南勢庁舎」が、さらに日光や横須賀、志布志など全国8カ所に拠点を持っている大きな組織です。

 ホームページによると、
 増養殖研究所は、日本の水産業を維持・発展させ、食料自給率を高めるためには、水産資源が減少しないよう管理すると同時に、積極的に水産資源を増やすことも必要であることから、「水産物の安定供給の確保」と「水産業の健全な発展」に貢献するため、養殖技術を中心とした基礎的研究開発と、黒潮浅海域と内水面における資源の維持増大及び生態系保全に関する研究を行っている。
とのことです。

 さてこの増養殖研究所、わしは昔から、宮川のほとりに研究所があることは見て知っていましたが、実際に中に入ったのは初めてでした。まあ、常識的に考えて、漁業者や水産学者でもない一般市民がここに用事に来ることなどほとんどないでしょうから、研究所としても今流行の「地域との共存」とか「活動内容の国民へのPR」の一環として施設見学会を行ったということなのでしょう。


 夏休みに入っていたためか、来場者のほとんどは幼児~小学生を連れたファミリーです。わしみたいに中年男性がふらっとやって来たという感じの人はほとんどいませんでした。
 
 まず受付を済ませて資料をもらい、施設内に入ると、渡り廊下にコイやメダカ、ほかにも名前は忘れたけど何種類もの淡水魚が大きな水槽に入れられていくつも並べられており、特設の水族館のようになっていました。さらに魚に触れるタッチプールもあって、子供たちはまずここで大喜び。

 次いで研究等の中に入ると、圧倒的に人だかり(子供だかり)ができていたのは、海藻をつかってシオリなんかを作る「ラミネート体験」の部屋でした。

 わしは仕方がないので研究成果の展示ルームに入ったのですが、ここもわりと人が多く、しかも各ブースに説明員がいていろいろ教えてくれるので、勉強にはなります。
 ここ玉城庁舎では、水産生物の育種に必要な遺伝子の研究をしている部門、養殖魚の病気防除の研究をしている部門、魚の病気を診断したり、診断方法の研究をする部門、などいろいろあって、難しい研究をしているようです。

 しかし、わしが素人らしく注目したのは、養殖のための環境や飼料などを研究しているという養殖システム部という部門です。ここ増養殖研究所は、平成22年、卵から育てたウナギから卵と精子を採取して、人工ふ化させることに世界で初めて成功しています。そして、今年の2月には、大型水槽で稚魚(シラスウナギ)にまで育てることも成功したとのこと。

 現在の養殖ウナギは、天然のシラスウナギを捕獲して成魚まで育てる方法ですが、ここ10年ほどはシラスウナギの漁獲漁が激減しており、その結果、シラスウナギの価格が高騰し、数が少ないうえに値段も高いという、ウナギ養殖にとってはダブルパンチ状態に陥っています。
 さらに、ニホンウナギが絶滅危惧種としてIUCN(国際自然保護連合)のレッドデータブックに掲載され、今後は何らかの漁獲規制も講じられる見通しであるため、ウナギの完全養殖には否が応でも注目と期待が集まっているというわけです。

 で、当然ながらわしも係りの方に、「ウナギの完全養殖は何年くらい先になりそうですか?」と聞いてみました。
 しかし、その答えは「わかりません。少なくとも、あと何年くらいで実用化できそうです、という見通しもお話しできないレベルしか、まだ研究は進んでいません。」とのことでした。

 その大きな理由の一つは、ウナギの生態がもともとほとんどわかっていないためだそうです。
 完全養殖、つまり養殖した親魚から卵を取って、それをさらに成魚まで育てる技術、というのは近畿大学による「近大マグロ」が有名な成功例ですが、マグロに比べてウナギは、どこで生まれているのか、どこで育っているのか、何をどれくらい食べているのか、など分からないことが多く、増養殖研究所でも全くの手さぐりで研究を重ねていたとのこと。
 実際に、2月に成功した人工ふ化からシラスウナギまでの育成も、そこまで育ったのは数的には1%くらいしかなく、まだまだ実用化に至るまでには研究が必要とのことでした。

 というわけで、少々残念な気はしましたが、クジラと違って日本人の食生活からウナギが完全に駆逐されることはありえないでしょうから、今後、研究に加速が求められるのは間違いないでしょう。
 しかも加速への圧力となるのは日本人消費者や養鰻関係者だけでなく、日本マーケット向けの養殖業が一大産業となっている中国などの新興国も同様だと思います。近畿大学の場合は、私立大学ならではのフットワークの軽さを生かし、研究がある程度、技術の実用化に目途が付いた時点で民間企業とタイアップして実用化を加速させたようです。

 一方、国の研究機関の場合、もちろん企業との共同研究も行ってい入るのでしょうが、実用化のインセンティブが弱いとか、早い段階から民間企業の資金やマーケティングが入ってこないので、ますます研究のための研究になりやすい、といったデメリットもあるのではないかという気がします。
 もっとも、ウナギの完全養殖は知的財産としても大きなもので、技術情報は極秘にすべき内容も多いでしょうから、どの段階で民間とバトンパスするかはいろいろ難しい問題もあるのでしょうが・・・。

■水産総合研究センター 増養殖研究所   http://nria.fra.affrc.go.jp/



2 件のコメント:

すもっぷ さんのコメント...

色々課題もあるでしょうが、早くクリアできることを願っております。
今の日本は本当に食べるものが溢れており、伊勢市内を見るだけでもここ数年で飲食店の数は劇的に増えていますね。うなぎがなくて困るのは中高年くらいで、価格が高いのも若者が食べに行きにくい原因にもなっているのではないでしょうか。かく言う私も同じお金を出すなら…と考えてしまいますもんね。日本の食文化の継承という意味でも適正価格での流通が早く実現することを願っております。

半鷲(はんわし) さんのコメント...

 ちょうど土曜の丑の日前後だったので、マスコミにもウナギ完全養殖のニュースはたくさん取り上げられていました。
 特に食通というか、文化人関係のコメントには「うなぎは元々貴重な食材で、昔は滅多に食べられないご馳走だった。今は安すぎるのであり、適正な対価負担は消費者にも必要」のようなものが多かったような気がします。
 わしは、自分より年輩の人々がクジラにこだわる気持ちが理解しにくいのですが、うなぎも若い人にとってはそう感じていくようになるのかもしれません。