2014年8月19日火曜日

まんだらけの一罰百戒

 アンティークな玩具などを販売している「まんだらけ中野店変や」からブリキのおもちゃを万引きした犯人(容疑者)が警視庁に逮捕されました。
 まんだらけは、この男が万引きする瞬間の防犯カメラの映像を顔が判別できない状態に加工してネットで公開し、期日までに返品しない場合は顔写真を公開すると警告しており、このことが大きな話題となりました。
 結局、警察から捜査の支障となると要請されたため顔写真のネット公開は行われませんでしたが、これだけ大きな話題となり、また警察当局も世間に大見得を切った以上、逮捕は時間の問題だと思われていました。
 ひとまずは一件落着というところでしょうが、この事態を複雑な気持ちで見守っていた小売店関係者はきっと多いことかと思います。

 なぜなら一般の小売店では、発生した万引きや器物破損などは、いくら警察に届けても、犯人が実際に逮捕されることなどほとんどないからです。
 被害を受けた商店の大多数は泣き寝入りですし、今回のまんだらけの件も、警察による一罰百戒としての見せしめ効果を狙ったもので、それゆえに超例外的に警察が捜査しまくり、逮捕に至ったものと想像せざるを得ないからです。

 わしは10年くらい前は商店街振興などを担当していて、小売商業者の方のお話を聞く機会が多かったのですが、その当時から商店街はシャッター街化しており、やる気のない商店主がやる気のある商店主の足を引っ張る、とか、商売をやめた人が新しく商売をやりたいと思っている若い人に店を貸してくれない、とか言った悩みを多く聞くと同時に、「万引きが多い」「トイレなど店舗の器物破損が多い」「車上狙いや放火がたまに起こる」といったような、犯罪の悩みもよく聞いたものです。

 商店街から小さな本屋さんが姿を消していってさびしい、という声が世間にはよくありますが、ある書店関係者の方からは、本屋は利幅が薄い商いなので人件費が割けず、おばあちゃんに昼間店番をしてもらっていると、数人の小学生だか中学生だかがどやどやっと店にやって来て、漫画なんかを何冊も、ひどい場合は何十冊も万引きしていく。そいつらは集団プレーで逃げ足も速いので、とても追いつけないし、警察に訴えても「そういうやつらはすぐに盗品を売りさばいてしまうから、まあお気の毒ですけど見つからんでしょうなあ」と他人事のように言われた、こんなのどう思います? おかしいと思いませんか?と詰問されたことがありました。このようにお客さんの側が荒んでくることも、小さな書店がやっていけなくなった原因の何パーセントかは占めているはずです。

 ちょうどその時期から、大手スーパーとか大手チェーン薬局、大手の書店などは商品に防犯タグを付けるようになってきました。その数百万円以上かかるという設備投資ができるかできないかも、すでに体力が弱っていた家族経営の小売店にとどめを刺す分水嶺だったような気がします。

 まんだらけの行動が一部では ~特に法律家や、人権活動家などからは~ 私的な制裁行為で一種の復讐であって、犯人の人権侵害にあたる、みたいな批判を受けていた一方で、まんだらけの社長もコメントしていたように、この事件で万引きに苦しんでいる同業者に社会の関心が当たると良い、と思った方も多いのではないかと思います。
 わしも実はその一人でした。防犯カメラって、そのためにあるんだと思うし。

 昔の話に戻りますが、商店主たちからそんな話を仕入れてきたわしは、産業支援センターの職員に、県やセンターが主催する小売業向けのセミナーで、防犯講座とか、防犯グッズ・設備の紹介などができないかと相談したことがあったのですが、いろいろ議論した末、「防犯は商店主自身の責任だし、防犯の啓蒙も警察の仕事だろう」というような結論となり、断念したことがありました。

 しかし、今でも万引きで苦しむ商店主が多いことが今回の件で立証されたわけで、公的な産業支援機関が防犯の支援を行うのも、やはりありなのではないかという気は改めてしました。
 もっとも、一番の対処方法は、万引きはいけない、犯罪は罰を受ける、という健全な社会常識の涵養です。これには、子供のころからきちんとした家庭教育、学校教育を受けるしかありません。つまり、家庭、学校、社会が、それぞれあたりまえのことをあたりまえにやる、ということ以上に有効な手段はありません。

 このことは重要で、やはり地域に身近な商店の経営状況が、その地域の民度というのか、住民の生活水準や行動水準を映す鏡だと思います。
 論理は飛躍しますが、地域のお店がみんなナショナルチェーンのコンビニやファミレスや、スーパーや量販店ばかりの町が何となく荒涼としているような気がするのは、そういった「民度」的なものまで失ってしまっている地域であるように感じるからかもしれません。

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