2014年8月5日火曜日

「すき家」の調査報告書を読む

 先日、出張の際、お昼に「すき家」に立ち寄った時です。
 すでにすき家がアルバイトの確保に苦労しており、都心などで多くのお店が閉店に追い込まれていることはニュースで大きく報じられていました。

 わしが入った、三重県某市の幹線道路沿いにあるすき家も、店員さんは2人。店は混雑して満席状態だったのに、注文取りにさえなかなか来てくれません。
 しかし、その2名は必死で働いており、文句を言える雰囲気でもありません。初老のちょっと呆けた客が、自分が注文したもの運んできた店員さんに「こんなんワシは頼んどらへん! 取り替えろ!」と居丈高に言い放つのにも「そうでしたか、失礼しました」と礼儀正しく平身低頭し、周りのお客たちは確かにあのジジイはこれを頼んだのを聞いていたはずなのに皆で知らん顔をし、そんなこんなで余計に混雑するすき家の店内で、やっと15分後に出てきた牛丼をやるせない気持ちで掻きこんだのでした。

 そのすき家を運営する株式会社ゼンショーホールディングスが先月31日、弁護士など3名で構成する第三者委員会に委託していた「すき家」労働環境改善に関する第三者委員会調査報告書をネットで公開しました。
 長時間労働が恒常化し、特に深夜時間帯も店員がたった一人で勤務する「ワンオペ」など、今や日本を代表するブラック企業ともいえるすき家ですが、調査報告書を公開したことが、改善への強い決意の表れなのか、それとも調査報告書公表の記者会見時にすら「(ブラック企業という)レッテル貼りは不本意だ」などと強弁する小川賢太郎社長の姿に、やはり変わらぬブラックさを見るかは議論が分かれるところでしょう。

 ネットですでに大きな話題となってますが、この調査報告書、なかなか読みごたえがあります。1時間くらいはかかりますが、関心がある方は全文を読んでみることをおすすめします。

 この調査は、すき家の直接の運営会社ゼンショーと、持ち株会社ゼンショーホールディングスの幹部社員、および都内のすき家のアルバイト(クルーと呼ばれています)に対するヒアリングと、社員561名、クルー468名へのアンケートを基に検証が行われています。
 興味深いのは、アンケート回収率が、アンケートへの協力が会社から業務命令されていたにもかかわらず、社員用アンケート回収率は23%で、アルバイト用アンケートの回収率49%の半分にも満たず、しかも自由記載欄についてもアルバイト用アンケートの記載量は多く、枠内に書ききれないほどの用紙も多数あったのに対して、社員用アンケートの記載量は相対的に少なかったことです。いかに社員の意識を変えることが難しいかが垣間見える気がします。

 内容は、平成23年以降、退職者が急増して毎年の新規採用数のほとんどが吸収されてしまっていること、長時間労働は恒常化しており月100時間以上残業する社員が350名以上もいること、労働基準監督署からも所定時間以上の時間外労働(労働基準法第32条違反)、法定の休憩時間を付与していない(同法34条違反)、時間外労働に対して所定の割増賃金を払っていない(同法第37条違反)、18歳未満の労働者にも時間外労働をさせている(同法第61条違反)など、多数の法令違反を指摘されており、それもほとんど改善されていないこと、などが明らかになっています。

 この間もすき家は新規出店を続けており、平成23年4月に1572店だったものが、26年4月には1986店にまで増加しています。ただ、退職率が高いことから社員の数はほとんど増加しておらず、結果的に社員一人あたりの労働量がますます増加していくという悪循環にはまってしまいます。
 過重労働により退職を余儀なくされた社員のアンケート回答は悲痛なものです。
「サラリーマンの生活ではない。このまま働いていても結婚も出来ないし、まともな生活が出来ない気がする。転勤の多さもネックであった。」
「ハードワーク、睡眠不足・ストレスで倒れた。車で事故が 2 回、体力の限界。」
 などが生々しく記載されています。

 一方、クルー(アルバイト)も過重労働は常態化しており、シフト勤務の関係で月間労働時間が 400~500時間にのぼる者も多く、
「断る事が苦手な人や優しい人達などが酷いシフト状態になっているのを目の当たりに見る。休み無し家にも帰れず車また店舗の更衣室などで寝ているのも見た。はっきり言って異常な光景だと思う」とのアンケート回答も寄せられています。

 一番の問題は、このような酷い実情は社内でも早い段階で把握されていたにもかかわらず、取締役会で議題となった形跡はなく、それどころかコンプライアンス委員会、内部監査室といった社内組織でもほとんど重要視されておらず、まったく改善に取り組まれなかったということです。まさに組織の機能不全だったわけです。

 この原因を、第三者委員会は
1. 人手不足状況による過重労働の発生と危機意識をもつ経営幹部の不在
2. 過重労働を是正できなかった組織上の問題
3. 経営幹部の思考・行動パターンの問題
 の3つに分類し分析していますが、リーダーシップの不在により組織のガバナンスと職員のモチベーションが低下している三重県庁においても、もって他山の石とすべき事項だと感じました。

 報告書の最後では、具体的にすき家が今後取るべき対策が列記されています。組織としてこの危機を共有し、一丸となって乗り切れるのかどうか、すき家ファンのわしにとっても気にかかるところです。

■すき家ホームページ   「すき家」労働環境改善のための調査報告書受領について

2 件のコメント:

三碧星 さんのコメント...

これほど労基法違反の企業に対して
「ファン」だと書いてしまうのはどうかと。

ひどく失望しました。

なか卯ファン さんのコメント...

横から失礼いたします。
はんわしさんが、労働法違反をしている「企業姿勢」に対してファンと言ったわけではなく、普段もご利用されてるようですし、店舗の様相、味、値段、メニューといった所をファンと仰っているのではないでしょうか?

ファンだからこその、掘り下げられた記事と感じました。

ちなみに、この暑い中、食欲が減退しがちでもスルスル食べられる、なか卯のすだちおろしうどんは絶品ですよ。