2014年9月11日木曜日

どてらい男(ヤツ)を探せ

 地上波テレビ、つまり一般のテレビから時代劇が消えて久しくなります。わしが子どもの頃は、月曜8時の水戸黄門(もしくは江戸を斬る、または大岡越前)から、金曜10時の必殺!シリーズまで、週に3~4本は民放で時代劇をやっていました。
 しかし、よく思い起こすと、これまた最近のテレビでまったく見かけなくなったのが、浪速のド根性ものとも言うべきジャンルのドラマです。
 舞台は戦前とか終戦直後の大阪。商都として東京以上の繁栄を誇っていた大阪には多くの商店や工場、銀行、料亭などがあり、そこに丁稚としてやって来た地方出身の幼い主人公が、主人から叱られ、先輩からは苛められ、同期の友人とは励まし励まされ、好況があり、不況があり、戦争があり、恋をし、人に裏切られ、という波乱万丈の人生の中で、たくましい商人(あきんど)として成長していく、みたいな物語です。
 こうやって活字にすると、何だかNHKの「おしん」みたいなストーリーなのですが、確かに設定や筋立てはほとんど一緒です。80年前くらいの日本は、今からは想像もできない貧しい社会でした。多くの人々は子供のころから働かなければならなかったし、実際、苦労も多かったはずです。
 唯一、「ド根性ドラマ」と「おしん」が違うのは、ド根性ドラマは登場人物がみな、コテコテの大阪弁をしゃべることです。


 自分のことは「わい」。あなたのことは「あんさん」。奥さまは「ごりょんはん」。
 商店が舞台なので「さいでっか」とか「ほな、行きまひょか」とか、「そんなん、殺生でんがな」みたいな、現代の大阪ではほとんど使わないようなあきんど言葉が飛び交います。「おしん」の朴訥とした東北弁と違って、「もうかりまっか?」的なギラギラした音感なので、耳につく人にはどうしてもなじめなかったことでしょう。
 残念なことに、このようなドラマ(そのほとんどが在阪テレビ局による制作でした)も全く姿を消してしまいました。

関西テレビHPより
 さて、わしが先日、仕事の関係で、機械商社の株式会社山善のホームページを見ていたときのことです。
 「どてらい男(ヤツ)探索プロジェクト」なる奇妙なサイトを見つけました。
 どてらい男(ヤツ)という文字を見るのも、主人公を演じた西郷輝彦さんの写真を見るのも、本当に30年ぶり、いやもっとぶりでした。これを見ていたのは、わしが小学校6年生ごろだったので、それ以来です。

 どてらい男(ヤツ)とは、在阪局の関西テレビが昭和48年から昭和52年まで制作・放送したドラマ。最高視聴率が35%もあったという超人気作品でした。確か日曜日夜の9時から放映していました。原作は、「細うで繁盛記」などコテコテなド根性ドラマを次々リリースした花登筺(はなと・こばこ)氏。

 ストーリーは、詳しく山善のホームページに載っているのでそちらをご覧いただきたいのですが、昭和10年に福井県三方村から大阪立売堀(いたちぼり)の機械工具販売店に丁稚見習いとしてやってきた山下猛造(西郷さん演じる)が主人公です。
 持って生まれたド根性と型破りな行動から郷里で"どてらい男"と呼ばれた猛造の新米丁稚らしからぬ言動は、店主をはじめ旧弊な商店の人間たちをとまどわせ、先輩店員たちの反感を買います。しかし、猛造は同僚の親友や先代社長の娘、支配人、女中といった理解者に助けられながら、持ち前の機転とがむしゃらな行動力で困難をひとつずつ乗り越えていく、という話で、実に波乱万丈、4年間にわたって181話も放送が続いたのももっともだというくらい濃密な物語です。
 
 わしは初めて知ったのですが、このどてらい男(ヤツ)のモデルになったのが、山善の創業者にして初代社長の山本猛夫氏その人であった、ということらしいのです。
 その経営哲学や語録などもホームページにあるのですが、なんかもう、本当にチンチンに熱いモーレツ社長だったみたいです。でないと、一代でこれほど会社を大きくできないでしょう。
 もちろん、ドラマはデフォルメされているとは思いますが、戦後日本の経済成長を支えたモーレツ社員と、彼らを引っ張ったモーレツ社長がかいた汗と涙は、原作者の花登筺をして筆を走らせ、そのドラマを多くの人々が見て感動した、という図式なのだと思います。

 残念なことに、当時はテレビ録画用のビデオテープは大変に高価であり、テレビ局でも使いまわす(上書き録画していく)のが当たり前だったそうで、第2話~第6話と、第130話~第180話までの録画は関西テレビにも残っていません。
 このため、関西テレビと山善では、家庭で録画、録音していた人を探し、そのテープを提供してもらう「探索プロジェクト」を行っているとのことです。
 昭和50年ごろにテレビ番組を録画できたのは、かなり裕福な家庭だったとは思いますが、まったくなかったとも思えません。わしの同級生の医者の息子の家にはテレビの録画機がありましたから。
 心当たりのある方は、ぜひテレビ台のキャビネットを探してみてください。

 万事があっさりしている今の日本。熱いド根性ドラマを見返しても、吉本新喜劇的なギャグにしか(特に若い人は)受け取られかねないことを密かに心配するわしではあります。 
 

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