2014年9月13日土曜日

【読感】ニッポンの経済学部

 わしは大学は法学部卒なのですが、同じキャンパス内にあった経済学部が何をやっているところなのか ~何を研究しているのか、何を教えているのか、卒業生がどんな職業に就くのか~ に着いて、ほとんどまったく何も知りませんでした。
 ややこしいことに、経済学部の隣にはさらに経営学部の校舎もあったのですが、経済学部が、その経営学部と何がどう違うのかもぜんぜん知りませんでした。

 で、わしが人事異動で地域産業振興だの商工振興だのの仕事に関わるようになり、職業柄、やはり金融や財政の仕組みとか、基本的な経済理論とかはわかっていたほうが、たとえて言えば日本経済新聞をぺらぺらっと読んで、大きな記事くらいは意味がわかるようになっていたほうがよかろうということで、通信制大学の経済学部(正確には教養学部の産業と経済専攻)に再入学した経験があります。

 余談ですが、通信制の大学って本当に勉強できるの?、と聞かれることがたまにあるのですが、わしが法学部生だったときも、マンモス私大では基礎科目の講義は定員が300人もある大教室で行われており、一方的に先生が90分しゃべって板書するスタイルでした。
 そこでは先生に質問する学生など皆無だし、そんな時間もないので、テキストとかネットやDVD動画で自習する、つまりは一方通行的な指導である通信制大学も、実は基本はそんなに変わらないのではないかと思います。(要はやる気です。通信の先生は質問にはすごく丁寧に答えてくれるし、わざわざ近くの学習センターに来て丸1日個人レッスンしてもらったことさえありました。)


 さて、書評です。

 ニッポンの経済学部 橘木俊詔著 中公新書ラクレ

 たまたま書店で見つけてタイトルが面白そうだったのと、チラッと立ち読みして、「なぜ経済学部の学生(特に私立大学の)は勉強しないのか」とか「なぜ慶応や一橋といった特定大学の経済学部は有名なのか(有力なのか)」みたいな話に興味をそそられたので購入してみました。

 結論から言うと、これは経済学の研究者(京大、阪大、同志社大などで教授を歴任)である著者の雑感とか、エッセイをまとめたようなもので、関心がある方なら気楽に読めるし、大学の経済学部に関心がない方はまったくの楽屋オチな身内の話で退屈極まりない本だと思います。

 内容としては、経済学部においても国公立と私立は教授の陣容や学生と教員の割合などで格差がある(マンモス私大ははるかに劣っている)ことや、戦前は東大と拮抗していた京大経済学部は戦後マルクス経済学派が教授の主流派だったため学部の総合力が低下してしまい、今や阪大経済学部のほうが力を持っている、みたいな(それこそマニアだけに受けそうな)内容です。
 わしには、これはこれで面白かったのですが。
 あと、実はよく知られていない、日本国内の経済学者の業績とか、学閥の系譜みたいなものの紹介もあって、これもそれなりに面白く読めました。

 なるほどと思ったのは、経済学の領域においては経済理論を研究する大学・教員(研究者)と、経済教育を徹底する人材育成型の大学(教育者)を分けて考えるべきだ、という提言でした。
 著者の橘木氏によると、
 そもそも経済学はデータの解析などで数学の基礎知識は不可欠であるはずなのに、私大の経済学部は数学が入試科目の必須でなく、したがって、数学を使う経済理論の教育はそもそも難しく、どうしてもサラリーマン予備軍育成のための教育が中心にならざるを得ない。
 こういう大学では、本来なら難しい理論をいかに優しく教えるかという教授スキルが重要なはずなのに、大学教員の多くは研究者としてのキャリアしかないので、人にものを教えることが下手な場合も多い。
 それならいっそ、教授スキルの高い教員を増やして、学生には大学の4年間で基礎的な知識を徹底的に叩き込むほうがメリットが大きいのではないか。
 というような内容です。

 何かの本で読んだのですが、かのメーナード・ケインズは、経済学者は難しい理論を探究するよりも。経済の基礎知識や世の中の動きを国民に伝える「わかりやすいパンフレット」を書くことこそが仕事であるべきだ、みたいな意見だったそうです。
 そうすると、何のことはない、現在の大学の経済学部教育(大部分の卒業生はサラリーマンとして実体経済にかかわる)は、結果的にその通りになっているような気もするのですが。

 以下は、わしの感想。ここで取り上げられた話は、経済学だけでなく、おそらく法学もそうでしょう。卒業生の大多数は法律家(法曹)ではなく、公務員やサラリーマンになりますが、ある意味で「アリの群れ」ような彼らこそが実際の行政やビジネスを動かしているので、専門教育よりも法的センスや思考方法、基礎的な解釈学を教えるほうが社会全体のためになるでしょう。

 また、教えるスキルが低い大学教員が多いのもその通りではないでしょうか。一部の大学で、学生の基礎学力を補うのに予備校とタイアップしたところがあったと記憶するのですが、予備校の先生はさすがに教えるプロだけあって非常に高いスキルがあるので、大学教員の教授法でもタイアップしたら効果は上がると思います。

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