2014年10月20日月曜日

国会議員という「地域力」

 地方自治体に勤めていると、これはまあ買いかぶりかもしれませんが、ものすごい情報を持っていることを再認識させられる場面によく出くわします。公務員には守秘義務があるので、秘匿すべき情報を正当な理由なく口外することはできませんしありません。
 しかし、たとえば市町村であれば住民に直に接しており、戸籍や住民票や、保険や生活保護といったような、まさにプライバシーに直結する情報を膨大に持っています。都道府県になると都市開発や道路とか大規模施設の建設といった広域的な情報が集まってきますし、しかも出先機関を持っているので本庁が吸い上げる情報の総量はとてつもないものになります。国(中央省庁)に至っては、各省が持っている情報量は天文学的なものでしょう。これらは、組織や制度や法律によって、いわば公式に(フォーマルに)集められる情報です。

 その一方で、地縁血縁やビジネスに関連して集められ、集まってくる、いわばインフォーマルな(あくまで行政機関と対比しての話ですが)情報網もあります。それが、政治、いや、政治家という存在です。
 わしは国会議員や県会議員の知り合いはいませんし、直接話をする機会は皆無ですが、議員秘書の方々とはたまに会話を交わす機会があったりします。その時に、やはり政治の世界の情報量は相当なものだと感じますし、フォーマルな情報と比べてある種の泥臭さ、生々しさが強いようにも感じます。



 こういう話を書くと、表と裏、陰と陽、みたいにわしが両者を対比していると感じられるかもしれませんが、そうではありません。
 地域の情報を吸い上げ、すくい取る「網」が重層的な地域ほど、「地域力」が高いのではないかとわしは感じているのです。

 「行政」と「政治」はよく混同されますが、行政の世界に身を置くと両者はまったく別物です。行政は法律の執行であって、ほとんどの場合、役所の行為には法律という根拠があります。これを柔軟に解釈する裁量は、知事や市町村長という「政治家」であっても非常に小さいですし、何より首長は役所という組織をマネジメントしていかなくてはいけないので、言動に責任を持たないと役所が回っていきません。
 これに対して、わしがイメージする政治は「議員」の方々です。彼らは(極端に言えば)役所をマネジメントせず、行政組織と住民をつなぐ役割しかありません。わかりやすく言えばチェック機関であり、補助機関であり、利権の配分装置でもあります。
 議員(政治家)に期待されるのは定型的な業務を定型的にこなすことではなく、現状を突破することです。現状に合わない法律を飛び越えて、より柔軟に社会に合わせていくことが期待されています。

 地域には行政と政治が混在しており、そのどちらも健全であれば、住民の意見や意向がすくい取られ、同時に住民を取り巻く社会環境や経済環境も正しくフィードバックされます。判断は合理的になされ、決断は迅速に行われ、実行は強力に進みます。これが「強い地域力」です。
 一方で、行政と政治がかみ合わず、お互いが住民不在で利権獲得にいがみあい、住民も現状に失望してこれらと距離を置き、次第に無関心、無気力になっていく。このような「弱い地域力」もあります。

 この例がわかりやすいのは国政の場に出る国会議員です。国会議員は、議員本人を神輿にした支持者たちによる「プロジェクトチーム」であり、情報収集、政策立案、資金管理、選挙対策などの役割で構成されています。チームが円滑に動くか、逆に言えば、アクティブに、健全に活動するプロジェクトチームがあるかどうかが地域力の強さのモノサシになっているのです。

 こんなことをあらためて考えたのは、言うまでもなく、安倍内閣の目玉である「女性が活躍する社会」を体現すると言われた女性二閣僚が、不祥事により辞任を余儀なくされた出来事です。
 女性だからと、オジサンによる男のジェラシーで後ろから刺された気がしないでもありませんが、多くのマスコミ報道によれば、日本の男女同権はすでにそのようなステージは終わっており、女だから特別扱いされることは良くも悪くももうないのだそうです。

 だとすると、この元閣僚の国会議員たちは、支えるチームに弱点があったと見るべきではないでしょうか。チームが機能不全だったのです。ある議員は会計責任者を中心として。もう一人はコンプライアンス担当者を中心として。情報がどこかで疎外され、遮断され、健全な判断ができなくなっていたのです。

 安倍内閣のもうひとつの目玉は地方創生ですが、地域力の衰えは政治家というプロジェクトチームの現状を見ると深刻です。もう何十年も前の、支持者を丸抱えして飲み食いさせるというチーム形成スタイルから全く革新していないのです。
 政府主導の地方創生はフォーマルな情報網によって進められますが、施策が地に足つくにはインフォーマルな情報網も不可欠です。将来の宰相と期待された女性議員のプロジェクトチームの実力がこの有様だとすると、地域を形成する要素の半分は大きく損なわれているのが今の日本の現実なのです。これは、この議員の選挙区の地域だけではないでしょう。
 

 

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