2014年10月21日火曜日

つるんだら解決するのか??

 先日、「人口減少に立ち向かう自治体連合」なる寄合の設立総会が東京都内で開かれ、全国172の自治体が参加したことが報じられました。
 何か目新しい政治的なトピックが生まれると、自治体が寄り集まってなんちゃら協議会とか、なんたら期成同盟とかを作り、徒党を組んで存在感を示そうとするのは、弱小地方自治体の生き残る知恵のようなものですが、大槻義彦氏も言うように、この連合会のメンバー自治体の人口が右肩上がりに回復することなど絶対にあり得ないし、人口減少のペースが連合会に加盟していない非メンバー自治体に比べて緩やかになることも考えにくいでしょう。
 要は、地方政治家のパフォーマンスに過ぎませんし、この連合会が取り組むという「地方のニーズと国の施策がずれないよう(な)提言活動」も、つまりは国(中央省庁)の施策、財源ありきの発想です。自立自尊の意気込みとか決意がほとんど見られないのです。

 ちなみに、人口減少に立ち向かう自治体連合は、介護保険制度の導入が決定した平成9年、地域包括ケアシステムの構築や、新しい福祉産業と地域振興の発展を目標として、市区町村長有志によって設立された「一般社団法人福祉自治体ユニット」が事務局をつとめています。
 これからますます地域の高齢化が進み、介護体制の維持と強化が市町村にとって最重要の、しかも喫緊の課題だと思うのですが、このテーマにはもう飽いてしまって、俗耳に入りやすい「人口減少対策」「若い女性の出産支援」に食指を伸ばしたということなのでしょうか。


 一般社団法人福祉自治体ユニットのホームページには、《人口減少に立ち向かう自治体連合》参加への呼びかけ というお知らせがあり、この中に設立の趣旨とか事業内容が記載されているので、関心がある方はお読みください。(最下段にリンクを貼っておきます)

 この中には、
 若者が安心して働ける「産業・雇用基盤」の再生
 という項目があって、わしは商売柄この点に注目せざるを得ないのですが、同時に、何だかちょっと違うなと思うのは、最後の「再生」という表現です。
 彼らは何を再生、すなわち甦らせようとするのでしょうか。

 三重県の南部、東紀州や伊勢志摩でもそうですが、昭和30年代までの地方は、地場産業である農業、漁業が活発で、若者は十分にこれで職を得、暮らしていくことが可能でした。
 しかし、昭和40年代に入って地域に工場が進出すると、機械化や基盤整備で生産性が向上し、要するに人手が余るようになっていた第1次産業から、労働人口は鉱業や工業に移動していきます。
 鉱工業は設備投資と技術革新によって生産性を加速的に向上させることができ、同じ労働力で多くの利潤を生むので、給料も高く、鉱工業従事者の旺盛な消費支出によって、地域の商業やサービス業も発展していきます。
 
 このころから、農業、漁業を再生させようという声が全国から上がるようになってきました。地方と都会の格差は大きくなり、地場産業を活性化して地方の所得を向上させようという掛け声が高まったのです。しかしこれらの産業の活性化をイノベーションの促進でなく、減反政策のような競争制限政策で行おうとしたため、次第に産業としての活力そのものが失われ、ついには若者に全く見向きもされなくなってしまいます。
 困った市町村は、今度は我が町に工場を誘致しようとします。これは多くの地域で成功しました。しかし、これら誘致された工場のほとんどは、研究開発機能を持たない単なる製造拠点に過ぎません。需要が旺盛な時代はモノを作れば売れましたが、次第に海外に生産拠点が移転するようになると、地域にある工場は海外とのコスト競争に陥り、撤退・閉鎖されるようになってしまいます。
 相対的に給料が高い工業が衰退すると、地域全体の所得水準が低下し、税収が減り、消費活動も停滞して、地域の活力は目に見えて衰えていくようになります。

 農林漁業の活性化、農山漁村の振興、過疎地域の振興、中山間地域や離島、辺地などの振興。これらは営々と行政によって続けられ、凄まじい額の税金が投入されましたが成果はほとんどなく、人口の都市部への集中が進みました。

 そしてさらに今。産業の中心はもはやモノを作る工業ではなく、ソフトウエア製作や、金融商品とかネット通販のようなビジネスモデルの進化や、ファッション、サブカルチャー、デザインといった、知的な価値を創造する産業に移っています。
 これらの産業のリソースは、木材や鉄鉱石や石油ではなく、人の頭脳であり、人そのものです。高度なサービス産業の革新は、科学技術と並んで、人と人がふれあい、ぶつかり合い、入り混じることによって創発される閃きやアイデアが原動力です。この創発は人口の集中度と相関しているので、物理的に人が少なく、その少ない人もほとんどが枯れているような地方部では発展のしようがありません。

 今現在、わしらが住んでいる平成26年の日本は、まさにこのような状況なのです。

 なので、心がけとしてまず大切なのは、産業・雇用基盤を「再生」することは不可能だということです。
 程度問題で、多少の押し合いへし合いはあるでしょうが、農林水産業がかつての姿で再生し、工場がかつての活気で再生することはもはやありません。日本は新しいステージに進んでおり、もはや再生(後戻り)することはできないのです。
 地方であるからこそ、そこでしか成り立たない、高度なサービス業を立ち上げなくてはいけません。そのためには人材を育成し、もしくは誘致してくることが必要です。頭脳競争になります。成績のいい中学生は町外の進学校に進み、そのまま都会の大学へ行って帰ってこず、いわば受験競争の敗者しか残っていないような地方は、率直に言って非常に厳しい戦いにならざるを得ません。
 繰り返しますが、人口減少に立ち向かうには人材育成を通じた高度なサービス産業の育成以外にないのです。
 「地域人口ビジョン」の作成だの、「地方版総合戦略」の策定だの、国への提言だの、「人口減少に立ち向かう自治体連合」の方々は、このことを理解しているでしょうか?

■一般社団法人 福祉自治体ユニット
  人口減少に立ち向かう自治体連合 参加への呼びかけ(PDFファイル)
 

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