2014年10月27日月曜日

もし自分の土地を売ってくれと言われたら

 今話題の映画、プロミスト・ランドを観てきました。
 マット・デイモンが主演と脚本を担当し、「ファーゴ」で圧倒的な存在感を示したフランシス・マクドーマンドが共演という、いかにもマニア向けの映画ですが、実際にストーリーも地味で、「シェールガスが埋蔵されている可能性がある(アメリカ・ペンシルバニア州の)田舎町の農地を、大手エネルギー企業の社員、スティーブ(ディモン演じる)とスー(マクドーマンド演じる)のペアが、莫大な補償金を地元住民に提示して買い漁っていく。」というお話です。
 オールロケで、カーチェイスも激しいバトルもなし。もちろんラブシーンもありません。製作費が低予算なのは間違いなく、おそらく一番高いのはマット・デイモンのギャラではないかと思います。
 それはさておき。


 技術革新によって、地層の比較的深いところに埋蔵されていて採掘が困難だった「シェールガス」「シェールオイル」の採掘が可能となったのはここ10年ほどのことです。
 埋蔵量が莫大で、採掘コストが低いことからアメリカでは「新しいエネルギー革命(シェール革命)」と呼ばれ、自らが産油国のアメリカも、実は今まではけっこうな量の石油をアラブから輸入していたものが、シェール革命によって石油も天然ガスも100%国内産出が可能となり、しかも自国の消費だけでは使い切れないので海外にも安い値段で輸出しようということになって、ガス会社を筆頭に産地や関連企業は大いに好景気に沸いている状態だそうです。

 しかし、採掘のためには大量の地下水と特殊な薬剤を使うために、シェールガス(オイルも)の掘削現場はひどい環境汚染に見舞われることも多いそうで、家畜を失ったり農作物が枯れたりして、地主(農民)は自分の農地の掘削権をガス会社に売り渡したものの、結局は一時金の「バブル」に過ぎず、汚染された土地で生活できなくなってしまう事例も多く発生しているとのこと。

 この映画も、最初は大金に目がくらんで、あるいは農業以外に産業がなく衰退する一方の田舎町で、子供たちを進学させるのにお金がいる、といった理由で採掘に同意する農民たちの姿が描かれます。

 しかし、住民集会の場で、シェールガス掘削に伴う大規模な環境汚染を危惧し、採掘の反対を公言する住民リーダーが声を挙げたことから、スティーブたちの買収計画は狂い始めます。
 しかも、環境団体の活動家までこの町に乗り込んできます。彼(ジョン・クラシンスキー演じる)はシェールガス採掘の環境汚染で故郷の一家が離散したという実体験を、町中の農家をオルグして語り、彼らを不安に陥れて、開発反対の声を次第に、確実に大きくしていきます。

 スティーブと活動家と、どちらが先に住民の意見をまとめあげるのか。熾烈な競争になるのですが、いよいよ町の住民投票が行われるというその直前になって、あまりにも意外な事実が判明し、さらに思わぬ方向に物語は展開します。

 わしはこのストーリー展開には引き込まれたものの、正直、結末はやや安直に思いました。主人公の価値観が変わり、人生が変わるターニングポイントの描き方が雑な感じはしました。

 しかし、産業が疲弊し、人口の流出が止まらない田舎町に、この映画ではシェールガスでしたが、たとえば原子力発電所であったり、使用済み核燃料の貯蔵施設であったり、軍事基地であったり、カジノであったり、といった、莫大な利益と富を地元に落とすことは間違いない一方で、ひとたび何か事故が発生すれば、二度と取り返しがつかず、地元は破滅するほかない「施設」を誘致しようという声が上がるのは日本でも散見されます。
 地元は地域振興の大義名分のもとに賛成反対が入り乱れ、住民が反目しあい、踏み絵を踏まされ、コミュニティーが崩壊するという悲劇に見舞われることも少なくありません。

 その意味では、人口が減少し、地方部の自治体の多くがここ30年ほどで消滅すると危機感をあおられている日本の地方も、この映画の話は他人事ではありません。

 三重県は、熊野灘沖にメタンハイドレードが豊富に埋蔵されていることから、近い将来一大エネルギー基地となる潜在性を持っています。その時、資源開発のお題目でエネルギー会社が漁業不振で疲弊した沿岸漁民から漁業権を買収するということも(そしてその買収を行政がお先棒担ぎするということも)十分にあり得るのです。

■映画「プロミスト・ランド」ホームページ   http://www.promised-land.jp/

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