2014年10月4日土曜日

中小企業需要創生法案が閣議決定へ

 国(経済産業省中小企業庁)が提案していた「中小企業需要創生法」の法案が閣議決定されました。現在開催中の臨時国会で可決され、平成26年度中に施行される予定とのことです。
 この「中小企業需要創生法案」には3つの柱があります。

 官公需についての中小企業者の受注の確保に関する法律(通称「官公需法」)を改正し、国による物品の購入や公共工事の契約などの官公需において、政府の基本方針と、各省庁ごとの契約数値目標を定めることとされました。特に創業10年以内の中小企業である、いわゆる「ベンチャー企業」の受注機会を増やすため、特別の配慮が図られます。

 中小企業による地域産業資源を活用した事業活動の促進に関する法律(通称「地域資源活用促進法」)を改正し、農作業体験や産業観光のような活動も支援(法認定)の対象とするほか、中小企業以外の一般社団法人やNPO法人などの取り組みも支援対象に拡大されます。

  独立行政法人中小企業基盤整備機構法が改正され、中小企業の事業活動を支援する市町村に対して、中小機構が専門家を派遣するなどの必要な協力が行えるようになります。

 このうち、2は明白に地域産業振興にはメリットがあります。農林水産業の体験やアグリツーリズム、工房見学や製造体験などの産業観光は、今まで地域資源活用促進法で指定される地域資源には明確に定義されておらず、いわばグレーゾーンでした。
 また、地域においては観光協会やNPOなど「営利企業」ではない組織や団体も、ごく普通に産業振興や地域振興に関与し、活動しているので、経済産業省が所管している法律であるという理由でこれらの活動が支援対象外になっているのは縦割り行政以外の何物でもなかったからです。

 問題は、ベンチャー支援として鳴り物入りで改正される官公需法についてです。
 官公需法を改正すればベンチャー企業からの政府調達は増大するのでしょうか?



 このブログでもたびたび書いてきましたが、国(経産省など)が作る商工業関係の法律には、競争促進的なものと、競争制限的なものがあります。
 官公需法は典型的な後者の法律で、役所が事務のために使うコピー用紙やトナー、ペンや付箋などの文房具、事務機器、導入するコンピュータシステム、発注する測量や設計、土木工事など、天文学的な巨額予算である国(政府機関や国立大学、公庫など)による物品購入や契約などを、中小企業が受注しやすいように配慮せよ、という内容の法律です。
 つまり、経済的に弱者である中小企業は大企業とガチンコで価格競争すると不利なので、下駄をはかせよう、という趣旨なのです。
 もっとも、実際に条文を見ればわかるように、全部で7条しかない簡単な法律で、要するに、国は中小企業に配慮した調達を行うという宣言と、具体的にどれくらい購入するかの目標を毎年立てましょう、この計画に従って中小企業から調達しましょう、というくらいの内容です。(条文はこちらを)
 今回の改正では、この中小企業のカテゴリーに、創業10年以内のベンチャー企業(新規中小企業者)というカテゴリーが加えられ、契約を促進するような配慮が国に求められることになりました。

 これで想定されるのはこのようなケースかと思います。
 あるベンチャー企業が、電源を使わず昼間の蓄光で夜間も点灯する信号機を商品化したとします。全国には莫大な数の信号機があるでしょうし、その電気代もものすごい金額でしょう。ベンチャーは、さっそく、道路工事を担当する国交省にセールスに出かけます。
 しかし、国交省の担当者は、信号は大変過酷な環境下でも故障しては困るので、「絶対に故障しないことを証明せよ」と言うでしょう。もしくは、どこかの都道府県で導入した実績がありますか? もしあるならそこで今まで一度も故障しなかったという証明を書いてもらってください、と言うでしょう。
 これは当然で、役所は自分が管理する道路に不備があれば管理瑕疵を問われますから、すでに十分実績があるものや、公的な機関が品質を保証しているものしか使いたくないのです。パッと出のベンチャーだか何だかが作った製品などおっかなくて使えないのです。

 よく、防災グッズを開発したという中小企業が、ぜひ地方自治体に買ってもらいたい、自衛隊に買ってもらいたい、と売り込みに来られることがありますが、これも事情は同じで、万が一の時に絶対に故障しないという証明書か、高額の製品保険に加入している製品でもなければ、購入するはずがありません。もし故障したら、それこそ責任問題になるからです。

 もう一つ重要なことは、ベンチャーの製品は今まで世の中にない、まったく新しい商品なので、その値段が高いのか安いのか、つまり「適正な価格」なのかがわからないことです。
 役所の契約担当者にとってこのことは重要で、つまり、適正な価格がないと設計や積算ができず、契約金額が妥当であるかどうかの判断ができません。
 ましてや、世界に一つのものは一般的な入札ではなく、必然的に随意契約になるので、果たして価格が妥当か、ということが大変重要なポイントになるのです。役所のことなので、これについても原価計算書を出せとか何だとか言い出しかねません。(わしには、契約担当事務者のその要求も心情的に理解できるのです。)

 国に商品を売り込みたい、サービスを提供したい、と考えているベンチャーにとって中小企業需要創生法、つまり官公需法の改正はそれなりに意義はあるでしょう。
 しかし、実効性については、以上のことから疑問符とならざるを得ません。
 官公需の大宗を占めるのは、やはり巨額の公共工事予算を持つ国交省や農水省なので、これらがベンチャー支援という大義を理解し、実際に協力するかどうかが大きなカギだと感じます。
(率直に言ってしまえば、国交省や農水省にそのインセンティブはないでしょう。災害復旧用のロボットや、試験研究用の装置やソフトなど、ごく限られたものになるのではないかというのがわしの今のところのカンなのですが。)
 重要なのは、ベンチャーに対して性能評価や性能試験のノウハウ提供や試験代行などを行うことでしょう(国なり自治体なりが)。ベンチャーの製品のどこに信頼性がないか、どのような試験データをそろえればそれが払拭されるかは、ベンチャー側ではなかなかわからないので、この部分の仲立ちは何らかの形で不可欠だと思います。

■中小企業庁  「中小企業需要創生法案」が閣議決定されました(平成26年10月3日)

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