2014年11月12日水曜日

海女は文化財か、萌えキャラか

志摩市HPより
 先月末、志摩市で「海女サミット」なるものが開催されたことが、伊勢志摩地域ではちょっと大き目なニュースとして報道されていました。

 衰退が著しい海女漁文化の維持・継承と、海女漁の存立基盤である里海の環境保全を目的に、全国から海女が集まって話し合いをするものだそうで、今回で5回目の開催となり、国内1府9県の海女約140人と、同じく海女漁がある韓国・済州島からも海女3人が参加したとのことです。

 シンポジウムには安倍総理の昭恵夫人も参加して、「海女の問題は、地方や女性など日本が抱える大きな問題が集約されている。海女が活躍することが、日本の明るい未来につながるのではないか」と話したとのこと(10月26日付け読売新聞より)ですが、このような関係各位の努力にもかかわらず、海女は減少に歯止めがかかっていません。

 同じくサミットで講演した海の博物館(鳥羽市)の石原義剛館長によれば、伊勢志摩地域の海女は昨年の調査で761人となり、4年前の973人から2割も減ったとのことです。
 この間、漁業者全体の減少数は11%なので、これをはるかに上回る急速な衰退であると言えます。

 石原館長は、この原因として、主な捕獲物であるあわび貝の減少や収入の不安定さを挙げ、地域外の女性が職業にしたいと希望しても、漁業権を取得することが困難であるとも指摘しました。


 正直なところ、わしも海女の減少は避けられないと思います。
 わしのような海女の本場、鳥羽市の出身者であっても、身一つで海底に潜る古典的な採取型漁業である海女は、あまりにも特殊な職業で、身近な存在には思えないのです。もともと海女の家系であったなど、よほど特別な事情があった人以外に、自分が海女になりたいなどと思う女性は本当に限りなくごく少数なのが当然だと思えます。
 サミットでも「海女が就業している地域には、地域ごとに独特なルール(はんわし注:慣行や漁法の意味)があって、もしも漁業権を得たとしても海女社会に入るのは簡単でない。」という否定的な意見も現役の海女から出たとのことですが、これもわしの感想と一致します。

 数年前、東北地方のある漁村で、若い女性が海女として就業しましたが、地元出身であったにもかかわらず、「美しすぎる海女」などとマスコミの注目を浴びるようになると次第に地元の漁業者から距離を置かれ、観光資源に最大限、彼女を「利用」してきた市当局もその調整が困難となり、ついに彼女は離職せざるを得なくなったことが報じられたことがあります。(以前、このブログにも書きました。リンクはこちら。)

 鳥羽市にもミキモト真珠島には観光海女がいて、海女の家系ではないのに海女に憧れて就職する少女は毎年一定数いるので、本当の漁業者としての海女になりたいという人もいるにはいるでしょうが、やはり危険な仕事であり、一人前になるまでの育成や、独り立ちしても自活できるのか、といった問題は山積しています。率直に言って、海女漁の維持、海女文化の継承は極めて困難なことでしょう。

 そのような中で、三重県などの行政が提唱しているのが、海女漁をユネスコの無形文化遺産に登録しよう、という動きです。無形文化遺産となった伝統産業は、最近では岐阜県の「美濃紙」の例が挙げられます。
 無形文化遺産とは、「口承による伝統及び表現、芸能、社会的慣習、儀式及び祭礼行事、自然及び万物に関する知識及び慣習、伝統工芸技術」などで次世代に伝えられるべきもの、という定義だそうですが、こうなると、それは競争力を持つ産業としての漁業ではなく、もっぱら、技術や風俗といった観点からの観光業に脱皮して次世代に生き残っていくこととなるのでしょう。

 もちろん、これは一つの有効な手段です。海女が珍しい風俗として観光資源となっていたのは江戸時代以前からであり、浮世絵には海女が重要なモチーフに取り上げられている名作が数多くあります。
 これを現代的に味付けすれば、昭恵夫人が言うように「女性の能力活用」という視点も加味されるでしょう。環境に優しい持続可能な漁業という見方もできるかもしれません。
 海女が単なる漁業者から、伝統的文化の継承者になれば、法人による海女漁への参入=海女の従業員化=賃金の安定化が実現し、若者の就業ももっと容易になるでしょう。鳥羽志摩地域では、海女が漁獲物を自ら調理して提供する海女小屋が観光客を多く集めている実績もあるので、そのビジネスモデルは十分に可能かと思います。

 その観光産業化路線をもっと極端に進めると、志摩市が公募を開始した萌えキャラという発想になります。
 もうこれは完全に「漁業」ではなく、「伝統文化の継承者」でもない、ごくごく軽い、そのへんにいる、かわいらしいコスプレアニメの主人公です。
 
 よく、観光業への脱皮(観光業への革新と表現してもいいでしょう)は、軋轢を生みます。
 商店街にもっと観光客を呼び込もうと提案すると、自分たちはまちの住民に生活の糧を提供している商業者であって土産物屋ではない、とか、工場を見学させてBtoCに転換しましょうというと、ものづくりは見世物ではない、と反発が起こるのです。
 海女たち自身が、自分たちが文化財となったり、萌えキャラに喩えられたりすることを、良しとしているのか、あきらめているのか、歓迎しているのかはわかりません。もちろん、このような問題に海女が一枚岩の見解となることもあり得ません。
 しかし、わしが思うに、どう考えても、海女が継承されるのはこの2つの合わせ技しかないのです。

■志摩市役所  志摩市公認・海女萌えキャラクターが誕生!名前を一般公募します!
 https://www.city.shima.mie.jp/topics/moe_chara/

■三重県志摩市公認萌えキャラ作成事務局   http://www.maribon.jp/

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