2014年11月14日金曜日

一般国道で行く「道の駅」めぐり(紀南編)

 先日、熊野市~御浜町~紀宝町の国道42号沿いにある道の駅に行ってきたので、前回(はんわしの評論家気取り 一般国道で行く「道の駅」めぐり(不定期連載) 2014年8月31日)に引き続きレビューしてみます。

 今回の訪問の目的はみかんの買い出しです。
 東紀州地域(三重県南部の尾鷲市、熊野市、紀北町、御浜町及び紀宝町の2市3町からなる地域)は柑橘が特産で、さまざまな種類のミカンが栽培され出荷されていますが、やはり何と言ってもみかんの王様は温州みかんであり、気候が温暖な東紀州では出荷の最盛期を迎えつつあります。

 まず、三重県最南端に位置し、あと数キロで和歌山県境という場所に立地する、道の駅 紀宝町ウミガメ公園 に立ち寄ってみました。

 東紀州の各市町は熊野灘に面して海岸線が長く続きますが、尾鷲市までの東紀州北部がリアス式の険しい海岸線なのに対し、南部地域は七里御浜の砂利浜が続きます。
 ウミガメが多く産卵にやって来るため、紀宝町では官民あげてウミガメの保護に取り組んでいます。

 内部はこんな感じ。
 1階は休憩スペースと、軽食コーナー、物産販売施設になっており、みかんや梅干し、魚介類、野菜、お菓子、ジュース、加工食品などがずらりと並んでいます。


2階はレストラン、3階が展望台です。
 このように分かりやすい案内表示が至る所に貼られていて、ホスピタリティを感じます。


 物産館の隣には、ウミガメの飼育施設(プール)があって、浦島太郎を龍宮城に連れて行ったような大きなウミガメが数匹、ゆっくりと泳いでいる姿が観察できます。
 時間帯によっては、餌やり体験や、ウミガメに触れる「ウミガメタッチ」なども行われているようです。(写真はありません。)

 わしにとって魅力なのは、周囲の農家が直接畑から運んでくる収穫したてのみかんが、このようにドドドーンと置かれ、販売されていることです。


 温州ミカンといっても、サイズがいろいろあり、しかも栽培方法も通常のものと、甘みが強い「マルチ栽培」のものがあります。それらを各農家が持ち寄っているので、ものすごくたくさんの種類があり、迷ってしまいます。
 だいたい一袋2kgぐらいあり、値段は1000円~1500円くらいと、紀南地区以外ではあり得ない激安価格です。

 みかんを何袋か買い込み、いっぷくしに3階に上がりました。


 お昼前でしたがけっこうクルマが入っています。ベランダからは七里御浜が見下ろせるいいスペースです。本当は名物の「シラス丼」を食べたかったのですが、ちょっと早い時間だったので、それはまた次の機会に。
 しかし、ここはスタッフも対応が丁寧で、好感度が高い道の駅だと思います。

 次に、ウミガメ公園から5km位しか離れていない、道の駅パーク七里御浜 に立ち寄ってみました。
ここは、25年ほど前、バブル景気花やかなりしころに列島を席巻した「リゾートブーム」に後押しされ、当時で25億円の巨費が投じられて一帯が整備されたコースタルコミュニティゾーンの中核施設です。ピネという名称がつけられています。


 道の駅だけでなく、総合スーパーのオークワがメインテナントで、ほかに薬局、書店、衣料品店なども入居している巨大な建物です。
 しかし、バブルの終焉とともに、ピネの運命は翻弄されていきます。経営難から御浜町が債務保証することになり、この是非が問われて住民が訴訟を起こしたのです。
 結局、訴訟は和解になったと記憶しますが、町は巨額の債権を放棄することとなり、ピネの赤字を税金で負担することで決着したのでした。

 その後、何度か経営はてこ入れされ、数年前に店舗がリニューアルされて、道の駅も店舗が一新されました。
 今回行ってみると、さらに道の駅は変わっており、エントランスのすぐ横に、地元の大手みかん農家である すぎもと農園 の直営店とカフェが作られていました。大変センスのいい、洗練された感じになっていました。
 また驚いたことに、総合案内の係りの方が元気よく「いらっしゃいませ」と声をかけてくれました。パークの店員さんは愛想がイマイチなので、これは新鮮でした。


 今回、わしが見たかったのは、パーク七里御浜の中に観光用の製油プラントが新設される、というニュースを以前読んだことがあり、それがどうなっているのかでした。パークの運営会社は3期連続で赤字決算となり、経営不振が深刻なため、松阪市に本社があり、レシチンやセラミドの抽出では国内トップメーカーであり、ゆずから「ゆず油」を抽出するなどにも高い技術を持つ、辻製油(株)の辻社長が、新たに代表取締役に就任しました。
 辻社長は、同社の製油技術をミカンにも応用し、パークの空き店舗にミカン油の抽出工場を作り、「ミカン成分の機能を研究して健康食品や化粧品に活用したい」と抱負を述べていました。

 しかし、残念ながら今のところ、特段の動きはないようです。
 パーク七里御浜の2階にはかつてミカンジュースの搾汁工場がありましたが、その場所には紅白幕がはられ、内部は見えませんでした。ちょっと期待外れであるとともに、ひょっとして事業実現が厳しい何かの事情があるのか、などとも勘ぐりたくなりました。


 それはまた、今後に期待するとして、この日は風は冷たかったものの気持ちのいい晴天で、パークから徒歩で数分の七里御浜を散策してみました。
 広大な海岸線はいつ来ても清々しいですし、沖から打ち寄せる波の音は人間の心の奥底にある古代からの記憶を呼び覚ますような不思議な鼓動に感じます。

 本当なら、もっと人が来てもいいのに、と思うのですが、お昼時でしたが海岸は閑散としており、やってきた観光バスの乗客がタバコを吸いに来ただけでした。


 熊野市で用事を終え、さらに車を北上させて、道の駅きのくに に立ち寄りました。
 ウミガメ公園、パーク七里御浜は、高速道路(自動車専用道路)の終点である熊野市以南にあって、いまだに一般国道42号が幹線道路であるため、すべての車がこの道を走るので、むしろ入れ込み客は増加していると考えられます。
 しかし、このきのくには、同じ区間が自動車専用道路で代替されてしまったため、国道42号は通行量が激減し、大きなダメージを受けていると推測されます。

 午後2時ごろ、やはりというべきか、クルマはほとんど停まっていません。というか、国道自体に車があまり走っていないので、それでも善戦しているというべきなのでしょう。


 この道の駅は、熊野市特産の熊野杉などの木材加工業者が中心となって設立したもので、建物も木造の立派なもの、そして隣には木材の加工施設もあって、道の駅ができたばかりの頃は工作体験などもやっていたと記憶します。
 しかし、林業や製材業の衰退も深刻で、木材に特化した道の駅きのくに「らしさ」で勝負することも次第に難しくなってきているようです。
 今は、観光客とともに、周囲の住民が日常の買い物をする場として、つまり一種の買い物難民対策としての機能が大きいようです。もちろん、これは社会的に意義のあることです。

 このように道の駅を巡ってみると、良くも悪くも高速道路の開通は地域を大きく変化させています。今のところは上述のように、高速道路終点以南は恩恵を被っていますが、これも今後の道路整備によって徐々に変わっていくことでしょう。
 いずれにせよ、道の駅の独自のスタイル(ビジネスモデル)の確立と、独自商品や独自メニューの開発と提供による差別化は、これからも引き続き重要だと感じます。

<平成26年11月16日追記>
 御浜町のパーク七里御浜について、11月14日付けの朝日新聞夕刊に、三重大学が開発したみかんの搾汁搾りかす等からバイオ燃料(ブタノール)を精製する研究を、ここをベースに展開されているとの記事が掲載されました。(リンクはこちら
 バイオマス燃料の事業化は日本では非常に困難と思いますが、エネルギーの地産地消をコンセプトに、農家で費消する分だけを生産する小規模なシステムには可能性があるのかもしれません。

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