2014年11月5日水曜日

移転開業した木花堂がいい感じだった

 熊野の地産地消セレクトショップである 木花堂(コノハナドウ)が、この9月、熊野市中心部から、同市の郊外に引っ越し、あらたにオープンしたとの情報は、かなり以前に聞いていました。
 木花堂については、以前にもこのブログで紹介したことがありますが、こじゃれた雑貨やカトラリー、陶磁器などといったアイテムに関心を持つような、若い世代がただでさえ少ない熊野市。
 それがわざわざ、市街地からさらに遠く離れた小さな漁業集落である須野町(すのちょう)に引っ越したというのです。
 一体どんな感じになっているのやら。
 というわけで、赤木城跡の帰り、新しい木花堂にも寄っていくことにしました。

 須野町は、熊野灘の入り組んだリアス式海岸に沿って熊野市と尾鷲市を結ぶ国道311号の途中にあります。道幅4mほど。曲がりくねり、アップダウンが連続する、典型的な「3ケタ酷道」ということができます。

 最近開通した自動車専用道路「熊野尾鷲道路」の賀田ICまではたいへん快適にドライブできますので、実際の酷道区間は、賀田ICから須野町までの約5kmの区間です。


 ここが須野町への分岐点です。(写真は、熊野方面から尾鷲方面に向かって写しています。)
 国道の本線が狭いうえに、鋭角に分岐があり、しかも本線から急な下り坂となっているので、うっかりしていると一瞬で通り過ぎてしまいます。


 分岐点から下り坂をどんどん降りて、2~3分で須野町の集落に辿り着きます。
 道は堤防で行き止まりになっており、そこから先は海。すぐ右側に町営の広い駐車場があって、車はそこに停めます。 


 須野町から眺める海です。茫洋とした熊野灘。左側の岬は古代の火山活動の名残りといえる柱状節理が連なっています。地質学的に珍しい景観です。
 須野町のすぐ近くには、やはり柱状節理が80mもの高さにそびえている名勝「楯ケ崎(たてがさき)」があるので、それを彷彿とさせる景色です。

 須野町は、漁村に独特の、山の傾斜に沿って小さな家々が段々に密集している家並です。その細い路地を登っていきます。


 駐車場から歩いて1~2分。家並みの中腹あたりに木花堂の看板がかかった家を発見しました。


 玄関で靴を脱ぎ、スリッパに履き替えて店内に入ると、こんな感じ。
 家は、どう見ても築50年以上は経っていると思われる住宅です。もっとも、古民家というほど古くはなく、本当に普通の家をリノベーションした感じです。


 扱っているアイテムは、木のブレスレッドやカトラリー、革の財布やバッグなどの工芸品、藍染め製品、陶磁器などで、熊野へのこだわりが感じられます。
 
 この写真は、店の奥から玄関方面を見たものです。


 和紅茶や野草茶、乾燥ひじきといった自然系の食材も販売されています。残念ながら、梅干しはストックしていないとのことでした。


 あるじの久保さんと久しぶりにお目にかかりました。
 正直、須野町でお店をやって、生計が立てられるのかが不思議だったので、率直に聞いてみると・・・

・須野町は現在、人口が5人!。 しかもすべてが高齢者で、久保ご夫婦のように新たに転入してきた人は何十年ぶりかになるらしい。
・木花堂の周囲の家々もほとんどが空き家で、この家も十年ほど空き家だったものを、家主から安く借りうけている。
・地区の皆さんは非常に好意的に受け入れてくれ、家のリノベーションも手伝ってくれた。
・木花堂の営業は、土曜・日曜・祝日のみなので、現金の売り上げは少ないが、インターネットショップもやっており、そちらの収入もあることと、何よりも須野町は生活費が安いので、必要な現金収入は熊野市の中心部で生活するよりずっと少なくて済む。
・須野町は水道はただ(谷の湧水が飲めるため)。薪で煮炊きするのでガスもいらない。ご近所さんがお魚をくれたりするし、熊野と尾鷲の中間にあって買い出しにも便利なので、生活に全く不便は感じない。
 とのこと。

 そして、木花堂のショップコンセプトが、熊野の地産地消であり、熊野在住の、または熊野出身の作家の作品を販売する場でもあるので、須野町のロケーションを活かして、ショップを充実させていき、将来は飲食も提供できればと話してくれました。
 良い笑顔でした。
 驚くべきことに、ここ、わしのようにふらりとやって来るお客が少なくないのです。わしがいた小一時間の間に、他に二人もお客さんが来ました。この須野町にです。


 久保さんご夫妻は、ともに熊野出身ではなく、この地域の魅力に取りつかれて移住してきた、いわゆるIターンだそうです。
 昨今、集落消滅の危機が叫ばれ、過疎地域では多くの自治体が若者や若夫婦のIターン、Uターン促進と定住促進を熱心に進めています。
 その意味では、久保さんたちは「限界集落へのIターン」、「若い夫婦」、「地産地消ビジネス」、といった俗耳に入りやすいキーワードに囲まれています。ひょっとすると、マスコミや自治体からの取材も多いかもしれません。

 しかし、どうも話を聞いていると、地域振興とか、そういった硬い話ではなく、本当に熊野が好きで、須野町が好きで、気に入ってここで暮らしている、という雰囲気が感じられます。むしろマスコミが好む「美談」でくくってほしくないという気がしました。
 良い意味で、放っておいたら、夫婦が助け合って、あるいは地域に支えられて、生きたいように生きていく力と自由さを彼らは持っているように感じました。

■木花堂ホームページ   http://www.konohana-do.net/

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