2014年11月8日土曜日

伊勢市産業支援センター 濱田典保氏のセミナーメモ(その1)

 伊勢市産業支援センターが、毎月開催している K&Kカフェ に行ってきました。
 この日の講師は(株)赤福の濱田典保会長。
 三重県を代表する経営者であるとともに、昨年は社長交代劇もあって「父子の確執」とニュース等でも大きく報じられた、さまざまな意味で「時の人」です。
 ニュービジネスを成功させるための心得とは? と題したテーマとのことで、どのようなお話が聞けるのか期待して参加しました。

 参加者は60名ほど。まずはじめに、同センターの渡辺憲一インキュベーションマネージャーから、伊勢市産業支援センターのミッションと活動内容の紹介がありました。このセミナーの名前であるK&Kとは「起業」と「経営」の意味であり、伊勢市の経済を活性化させるため起業支援と、起業者、そして既存の中小企業の経営強化のための各種の事業を行っているとのことです。

 そして、いよいよ濱田会長の登場です。約1時間に渡りお話いただきましたが、非常に興味深く、示唆に富む内容だったので、ポイントを要約してメモしておきます。(当然ですが、文責ははんわしにあります。聞き違い、聞き落しがあり得ますので、その点はご留意の上お読みください。)


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 自分(浜田会長)は赤福の11代目に当たる。中学生の頃から伊勢を離れ、中学、高校は松阪で、その後東京の大学へ進学し、就職したのも三越の日本橋店だった。
 三越では家業とまったく関係ない呉服売り場に配属された。自分が赤福の息子であることを会社も知っていたはずなのに、なぜ食品売り場でなかったのか。ひょっとして福助の息子と間違われたのかもしれない。
 冗談はさておき、三越の商売のやり方は大変勉強になった。呉服を売るだけでなく、良いお客様にいろいろなものを売る。お客様に商品を提案し、買ってもらうやり方。三越マンになるにはお客様のタンスの中まで知っていないといけないと教えられた。このヒントは赤福でも生かされることになった。
 赤福本社は赤福餅を作っているだけだが、和菓子店やレストランなど関連会社によってさまざまな事業を行っているのもそう。しかし、赤福はあくまで伊勢に根ざした会社であり、伊勢らしいビジネスしか行わないという方針は変わらない。

 就職して2年目のこと。突然父親から伊勢に戻って来いと命令を受けた。当時、赤福では「おかげ横丁」を建設する構想が動いており、大きなプロジェクトなので、父親も息子に手伝って欲しいと思ったのかもしれない。しかも、その構想は父親の頭の中にだけあって、ほとんど何も具体化されていない状態だった。自分のほかに社内から若手が集められ、何が何でも5年後の第61回式年遷宮までにオープンするという目標だけは決まっていたので、企画、店舗開発、用地買収、販促など、各責任者が、今から思うと若さだけでがむしゃらに働いた。その結果、まさに奇跡としか言いようがないが、本当に5年でおかげ横丁が完成した。平成5年7月のこと。

 平成17年、社長の座を父親から譲り受けた。赤福が創業300年を迎える平成19年には新しい社長で迎えたいという父親の意向があったのだろう。そして、その二年後、いわゆる「食品偽装」が明らかになった。
 これは自分にとって人生で最大の危機だった。社長とは、良い時は良い思いをすることももちろんあるが、ひとたび問題が起こると、その責任は全て社長に降りかかってくる。そして従業員のすべてが、社長が何を言うのか、社長がどう動くのかを見ている。当時、赤福には500人の社員がいたが、彼らが不安そうに自分を見つめていたことを今でも思い出す。
 これは結果的に今だから言えることだが、自分は逆にそれで腹が据わったところがある。思い返せば、その頃の赤福は、おかげ横丁の成功があって、やはりどこか過信していたし、浮かれていた。
 不祥事は起こらないほうがいいし、問題は起こらないほうがいい。それは当たり前だが、同時に、あまりに順風満帆に物事が進んでいるとき、会社には必ず何か問題が起こっている。絶えず自分達を見返すことが必要である。
 これで本当にいいのか。社会からこの会社は必要とされているのか。社会のルールに則っているか。人でも会社での、うまくいかない時ほどよく考える。何か問題が起こったら、それを助け合って乗り越えていくのが、会社というものであり、組織というものである。失敗は避けられないが、失敗したら真剣に考えることが大事である。

 ここで、赤福という会社についてご紹介したい。
 赤福は、売り上げの92%は赤福餅で、いろいろな関連事業をやってはいるものの、その割合は微々たるものである。つまり、赤福は伊勢の街と一蓮托生の関係にあるということ。
 おかげ横丁によって、内宮界隈のおはらい町はいつも人でにぎわうようになった。嬉しいことであるが、一人勝ちではよくない。外宮も賑わってほしいし、伊勢だけではなく、二見や鳥羽も広域で繁栄する、そのような地域にしていきたい。
 自分は伊勢商工会議所の副会頭と伊勢市観光協会の会長も仰せつかっているが、外宮の賑わいのために伊勢商工会議所主催で「外宮奉納市」という仕掛けにも取り組んでいる。

 赤福が伊勢をベースにしている例として、たとえば今でも本店は365日年中無休で、しかも開店は朝5時であることがあげられる。これは、徒歩の旅人に合わせた昔からの伝統であるが、今でも早朝の参拝の人は多くいて、これからも守っていきたいと思っている伝統である。
 ただ、昔と変わってきたところは、昔はお伊勢参りというとお年寄りの団体客ばかりだったが、最近は若い人の割合が増えていること。スピリチュアルブームも影響しているのかもしれない。

(つづく)

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