2014年12月12日金曜日

【読感】お金の地産地消白書2014

 読書感想シリーズの最後は、コミュニティ・ユース・バンクmomoが今月刊行した お金の地産地消白書2014 ~地域金融機関がNPO支援に本気で参画するには?~ を紹介します。

 アベノミクスの第一の矢、すなわち大規模金融緩和の影響もあって、われわれ庶民も、もちろん大企業や中小企業も、お金は比較的借りやすい環境になっています。
 もちろん前提として、信用力(返済能力)が確実なことは必須ですが、住宅ローンにしろカーローンにしろ個人向け融資は低利ですし、業績の好調な企業に対しては金融機関の融資担当者が日参し、「お金を使ってくれ」、「お金を借りてくれ」とお願いに来るような、そんな現象もごく当たり前に起こっていると聞きます。
 しかし、金利が下がっていれば、どんどんみんながお金を借りてくれているのかというと現実はそうではありません。

 その一つの証左がマネタリーベースとマネーストックの乖離です。日銀は金融機関にお金を融通しマネタリーベースは増加していますが、それがさらに市中にまで流通していないのです。金融機関が営業努力しても、お金を借りてくれる個人や企業が現実には多くないからです。

 もう一つの証左が、この「お金の地産地消白書」が書くような、金融機関の預貸率の低下です。
 地方にとって縁が深い地方銀行や信用金庫の預貸率、つまり預金の受け入れ残高に占める貸し出し残高の割合を見てみると、預金の預け入れは順調で金融機関はお金を持っているのですが、それを貸し出している額は低く、つまりは預貸率は小さな数字となっています。


 三重県で見ると、銀行三行(百五、三重、第三)の預貸率は64%~81%でそれほど低くはありませんが、信用金庫5金庫は16%~48%程度で、全国平均から見ても低い割合です。

 しかも近年、全国的にこの預貸率はどんどん低くなってきています。これは、金融機関が貸出先を見つけられないことを表します。
 預金を預かっている以上、利息は払わなくてはならないので、やむを得ず金融機関は国債を買ったり、貸し出すお客がたくさんいそうな都市部に支店を出して、そちらのお客さんに融資の営業をかけることになります。

 これは、地方(都市部に対する地方という意味)にとっては、実は残念なことでもあります。
 その地域に住む人々が預けたお金が、その地域内にある企業や商店のためには使われない ~ニーズがないのですからやむを得ませんが~ ということであり、地方のお金が回りまわって国債の原資となり、国の野放図な財政支出に使われたり、都会とか海外の企業に貸し出され、間接的には結果として経済地域格差が広がっていくことにつながるからです。

 では、地方のお金を地方が活用するにはどうすればいいのか。
 個人の消費は伸び悩み、企業も設備投資に二の足を踏む。それならば、第三の借り手として「NPO」に注目できないか、というのがこの白書の訴える主要な内容といえるでしょう。
 NPOってボランティア団体のことじゃないの?
 NPOがお金を借りても本当に返せるの?
と考える人々は、世間にはまだまだ多いのですが、欧米など先進国ではNPOは企業と同じように経済活動の主体と認知されています。NPOには一流大卒の人材が多く就職し、社会的に意義がある仕事に従事しながら、きちんと利益もあげ、もちろん世間並みの給料ももらい、ごく普通の経営者やサラリーマンとして生活しています。
 このことは、ボランティア団体の出自が確かに多い日本のNPOにとっては、目指すべき姿でもあります。実際に、日本でもコミュニティビジネス(地域の住民主体となって地域にある資源を活用して、地域が持つ課題を解決するビジネスのこと)や、ソーシャルビジネスを経営しているNPOは、企業と比べて遜色のない利益を上げているところも増えてきています。

 地域の金融機関も、地元の企業が借りてくれないと嘆くだけではなく、地域に数多く根付いているNPOを貸し手に育成するよう、事業やビジネスの支援をしていくべきであり、その実際の例が、momoと瀬戸信金、東濃信金と連携して行っている「プロボノ」と呼ばれる支援活動です。

 NPOの資金問題については、金融機関がなかなか融資できないような、ミクロなコミュニティビジネスや起業・創業に対して融資を行うNPOバンク(市民バンク)の役割もまた重要です。
 地方銀行、信用金庫、NPOバンクがそれぞれの役割を持ち、地域内での資金循環のパフォーマンスを上げていく、そのためにどうすればいいかの一つの試案が、この白書ではないかと思います。
 非常に興味深い内容なので、ぜひご一読をおすすめします。30ページほどのブックレットなので、読み通すのにさほど時間はかかりません。

はんわし的評価(★★☆) おすすめ。
             特に地域産業振興に従事する行政、商工団体、金融機関の職員は必読。


■ コミュニティ・ユース・バンクmomo   http://www.momobank.net/

■はんわしの評論家気取り   NPO向け融資のリスクは高くない(2014年5月7日)

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