2014年12月2日火曜日

なめらかどぶろく千枚田を呑んでみた

 東紀州ほっとねっと くまどこ によると、11月23日、恒例の大森神社例大祭(どぶろく祭)が熊野市育生町で開催されました。
 鎌倉時代から伝わる由緒ある神事で、最後に神社内で醸造された「どぶろく」のお神酒がふるまわれ、今年も祭に参加した約500名が「どぶろく」を味わったとのことです。

 このように、豊作を神に感謝するためにどぶろくを醸造して、参列者にふるまう「どぶろく祭」は全国各地に見られます。明治以前の時代には、家庭でも比較的簡単にできるどぶろくは、米農家でごく一般的に自家醸造され、飲用されていました。
 明治時代になり、酒税が国家の重要な税源となると、どぶろくであっても醸造は国の管理下に置かれ、酒税の許可(免許)が必須とされるようになりました。これは現在でもそうで、大森神社のように神事で使われる、わずか243リットルを醸造するにあたっても国税庁の特例許可を取っているそうです。
 もし販売用に、つまり事業としてどぶろくの醸造許可を取得しようとすると、最低でも年間に6000キロリットルを醸造しなくてはなりません。これは、あまりに零細な酒造業にまで許可を与えると、税務署が税を徴収するのが煩わしいためと説明されています。

 しかし、たとえば大森神社のどぶろくであれば、1ヶ月近くをかけて、酒母に初添え、仲添え、留添えと仕込みを三回に分ける「三段仕込み」という製法で作られています。
 このような伝統的な酒造法は、その土地に根差した、まさに「地域資源」とよべるものであり、せっかくの原材料や製法をビジネス展開や地域振興に応用できないかという発想から生れたものが、国の構造改革特別区域制度を活用した酒造法の規制緩和である、いわゆる「どぶろく特区」と呼ばれる制度です。
 
 どぶろく特区に指定された地域内では、酒税法上は年間最低製造量の生産能力を有しない事業者には製造免許が与えられないところ、農家などが自家産米を原料に、特区内にある醸造所でどぶろくを仕込む場合は、年間最低製造量以下であっても醸造が許可され、製造と販売できるようになります。

 平成25年3月時点で全国には110のどぶろく特区がありますが、その一つが、大森神社のある三重県熊野市です。
 熊野市は平成21年にどぶろく特区の認定を受け、翌年10月には同市で地域産品等を生産・販売する特殊法人である熊野市ふるさと公社(当時は、紀和町ふるさと公社)が酒造免許を取得しました。同市内にある休校した小学校を醸造所とし、大森神社でどぶろく造りにあたる氏子総代を指導者に迎えて、ユネスコの世界遺産に登録されている丸山千枚田で収穫したお米を使ったどぶろくを醸造・販売しています。

 はんわしは、醸造を開始した当時からこのことは知っていたのですが、なにしろ大量にできるものではないそうで、すぐに売り切れてしまい、今までなかなか入手することができませんでした。
 で、今年、その大森神社どぶろく祭のニュースを見て、はっと思い至り、熊野市ふるさと公社のホームページを見たら、たまたまその日から販売を開始していたので、もっけの幸いと早速購入してみました。

 販売価格は、税込みで一本(700ml)1960円。どぶろくは生もののため、配送はクール便となるため、さらに850円の送料がかかります。

 本日、自宅になってきました。厳重にダンボールに梱包されています。


 開けてみると、新聞と緩衝材にくるまれた黒い箱が出てきます。
 その中に、こんな感じで なめらかどぶろく千枚田 のビンが入っています。


 箱を開けた瞬間、お酒の匂いがしたので、まさか配送中にビンが割れていたのでは・・・? と思ったのですが、これはそうではなく、酵母が生きたままのためビンのキャップに小さな空気穴が開けられているからです。


 わしは酒の知識はまったくないので、千枚田の米の9割精米を使用、とか、醸造したどぶろくをすりつぶし、トロリとなめらかに仕上げました、などの説明があるのですが、意味はほとんどわかりません。

 で、実際に呑んでみたのですが・・・


 これはうまい。

 普通の日本酒(清酒)よりもコクと甘み、酸味があり、けっこう呑めてしまいます。そして、何と表現すべきか、お米感というか、穀物感というか、お米の香りやのど越しの独特さがあります。甘酒の甘くないヤツといえばその通りなのですが、甘酒よりももっとぎゅっとお米が詰ったような印象があります。
 アルコール度数は17度なので、比較的「強い」と言えます。しかし、口当たりが良いので、呑み過ぎに注意しないと、わしなど酒に弱い人間は腰が抜けて立てなくなってしまうでしょう。

 わしが購入申し込みした直後に、第1回の販売は終了してしまったようで、現在は12月27日以降の出荷分の予約を受け付けているそうです。
  
■熊野市ふるさと公社 自慢の商品  http://www.kumano-furusato.com/shop/doburoku.html

 上述のように、全国のどぶろく特区は、地域振興や特産品による地域経済の活性化が狙いでした。ただ、日本生物工学会のホームページにある記事(構造改革特別区域制度を活用したどぶろくの製造)にあるように、規制緩和といっても実質的に緩められたのは年間最低製造量の制限だけで、その他の要件、つまり税率や納税方法、各種手続きなどは一般の酒造会社に向けた基準と変わらないため、当初の期待は高かったどぶろく特区も、実態としてその多くは事業としてうまくいっていないようです。
 これには2つの見方ができます。一つは、一般消費者を相手にする以上、衛生管理や品質管理などは、いかに零細な醸造者であっても守らなくてはならないこと。もう一つは、その真逆ですが、政府の特区などは、官僚が自分の権限を手放すことなので本心から歓迎しているはずがないということです。官僚は地方経済や農家などどうなっても関係ないのですから。

 なので、このどぶろく特区を、もっと言えば、ある種の茶番である ~全国でたくさんの類似の特区が生まれれば、それだけライバルが増え、差別化にはつながらず、共倒れとなる宿命を負っている~ 構造改革特区を、本当に地域振興に生かそうとするのであれば、地道ではありますが、ビジネスを実際に成功させ、利益をあげるしか方法はないのです。
 熊野市は、一応、どぶろくを製造・販売する事業はスタートさせ、軌道にはのせました。今後は損益分岐点を見据えた設備投資と販路拡大が重要になってくるでしょう。
 期待します。

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