2014年12月3日水曜日

中小企業補助金のジレンマ

 地方公務員向けの業界サイトである官庁速報(時事通信社)によると、経済産業省は今年度(平成26年度)の補正予算案に経済対策として、通称「ものづくり補助金」を計上する方向で検討に入ったとのことです。
 ものづくり補助金は、製造業中小企業の試作品づくりや設備投資に必要な費用の3分の2を上限に、1千万円までを支給する補助金で、2年前の平成24年度補正予算で、約1000億円が予算措置されました。
 翌平成25年度補正予算では、対象業種を製造業のほか、商業やサービス業の中小企業にも拡大して1400億円を計上。結果として製造業で約1万2000件(社)、商業・サービス業で約2000件(社)が採択されました。
 中小企業支援業界にいる方はよくご存知のように、そして官庁速報もそう書くように、これは中小企業に非常に好評な補助金でした。


 その理由はいくつかありますが、大きな理由は「支給要件が緩かった」ということです。
 通常、国や地方自治体などが製造業中小企業に出す補助金は、新製品や新技術の研究開発を対象としたものがほとんどです。研究開発はまだ世にないモノを形にする作業なので、中小企業にとってリスクが高く、首尾よく製品化につながっても、これまで投じた研究開発費を資金回収できるまでの期間が長いため、一般的に資金力が弱い中小企業にとっては大きなネックになっていて、それは行政の支援(補助)が必要だと説明されるのです。

 ところが、この「ものづくり補助金」は、試作品づくりや設備投資も補助対象となります。
 自動車は定期的にモデルチェンジがあるので、下請けの中小企業にとって試作品作りはいわばルーチン業務の一種と言えます。素材や加工技術は日進月歩ですから、試作には最新技術が投入され、したがって一定の不確定要素(リスク要素)をはらむことは否定できませんが、売り先(お客)は決まっているので、まったくの新規研究開発に比べてリスクは格段に低いと言えます。
 設備投資に至っては、まったく「通常業務」そのものです。陳腐化した設備を更新するのはリスクでもなんでもありませんが、このようなものまで国は補助対象にしたのです。
 もちろん、補助金の申請が採択されるには事前の審査があり、これをパスできない企業も実際には多くありました。数の上から見れば、落選した(不採択となった)企業のほうが採択された企業よりはるかに多いわけですが、それでも計1400社もの中小企業に1400億円を支給した事業を、世間の普通の日本語では「ばらまき補助金」と呼ぶでしょう。

 今回の補正予算も政権党による露骨な選挙対策と言えそうですが、やはり中小企業にとって現金は魅力です。
 わしは「結局、補助金は高くつく」し、「補助金は麻薬のようなものなので常習性との戦いになる」ことを経験的に知っていますが、冒頭に書いたように、中小企業一般、なかんずく、商工会議所や商工会のような商工団体の「ものづくり補助金」への評価はすこぶる高いのです。

(ただ、忘れてはいけないのは、このような「くれくれ中小企業」ばかりではなく、「自社は補助金はいただかないポリシーである」という、清廉で気骨のある中小企業も数多くあるということです。このような企業は、往々にして技術力や経営力が高く、ニッチトップであったりオンリーワン商品を持っているきわめて優良な企業が多いことが特徴です。)

 中小企業の現場を回ると、中小企業向けの支援策は補助金に限らず、無数に存在することがわかります。
 信用保証、低利融資、専門家派遣、セミナーの開催、下請けあっせん、人材確保支援、社員の能力開発支援、女性社員の子育て支援、事業承継支援、などなど実に多くの支援策があって、支援者も商工会議所、商工会、中小企業団体中央会、国、県、市町村、行政の外郭団体などなど数多くあります。あまりに多すぎ複雑すぎて、一介の企業担当者や経営者ではとうていすべてを把握しきれないのが現実ですし、実際に企業からはそのような声もよく聞きます。

 しかも支援策はそれぞれ縦割り行政で予算化されているので、中小企業という小宇宙、つまり、小さいながら一国一城の存在であって、資金、設備、技術、雇用、経理、物流など多様で多分野の課題が混在している組織にとって、個々の支援策は目的や使途があまりに限定されていて使い勝手が悪いのです。行政の支援は帯に短し、たすきに長しの中途半端なものであるという感想も、中小企業の現場ではよく聞かれます。

 そう考えていくと、ばらまき補助金の典型である「ものづくり補助金」も、採択された中小企業は、一定の情報収集・選別能力があり、補助金の自己負担分(業界で「補助裏」と呼ばれます)が負担できる資金力もあり、煩雑な経理処理や書類仕事もこなせる、あるレベル以上の中小企業であることがわかります。補助金を使うには、能力があって、要領もよくないとけいないのです。

 しかし、このような、力のある企業に、そもそも補助金など必要なのでしょうか。
 それだけの力があれば ~補助金を採択できるような力量があれば~ 自分の才覚と資金で経営していけるはずではないでしょうか。

 これが、補助金という制度のジレンマそのものです。

 力量のない中小企業は、そもそも補助金など獲得できない。
 そして、実力があり、自主自立の信念がある中小企業もまた、補助金などには頼らない。
 では結局、補助金は何のためにあるのでしょうか?、そして誰のためにあるのでしょうか?
 

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