2014年12月9日火曜日

【読感】ビジネスモデル全史

 ビジネスモデル全史 三谷宏治著 (ディスカヴァー・レボリューションズ) も秋ごろに読了していましたので、感想を書いておきます。

 わしも、このブログなんかで「ビジネスモデル」という言葉を頻繁に使っているわけですが、あらためてビジネスモデルとはどんな意味かと考え直してみると、よくわからないことがあります。

 一番簡単な定義としては「儲けを生み出す仕組み」のことを指すわけですが、ビジネス、商売とはつまるところ、売れるものをどこかから仕入れ、または自分で加工して、求めている人に売り、対価をもらう、という、ただそれだけのことです。
 世の中にはさまざまな仕事と無数の業種がありますが、この仕組みは全てに共通することで、いわば自明のことです。

 この本は、ごく最近になって、それがなぜ流行り言葉のように注目されるようになってきたのか、そして、「ビジネスモデル」の本当の意味とはどういうものなのか、を整理し、考えてみよう、という内容です。

 三谷さんによると、ビジネスモデルという言葉の歴史は大きく三段階に整理できます。
 第1段階は、有史以来(古代)から1990年ごろまで。数千年に及ぶスパンですが、要するに人類の経済史の大部分の時期において、「ビジネスモデル」という言葉はさほど重要性を持っていませんでした。(もちろん、実際にはメディチ家や三井高利のようなビジネスモデル革新はたくさん起こっており、人類は進歩し続けていたわけですが・・・)


 第2段階は、1991年から2001年まで。突如として「ビジネスモデル」という言葉が世間に躍り出て持て囃されるようになります。言うまでもなく、ICT産業やネット産業が経済の主役となったからです。
 ただ、ネットバブル(ドットコムバブル)は2001年に崩壊してしまいます。多くのネットベンチャーの倒産と共に、流行り言葉としての「ビジネスモデル」も消え去ってしまうかに見えました。
 しかし、2001年以降は第3段階に突入しています。ビジネスモデルは「競争優位の持続性のために重要であること」と、「イノベーションの創発に重要であること」の2つが広く認識されてきたからです。

 この3つの段階ごとに、その時代の、代表的な革新的ビジネスモデルを具体例で説明する形で本書のストーリーは進んでいきます。
 たとえば三重県にゆかりが深い三井高利は、「店頭販売」「現金販売」「掛け値なし」という革新的ビジネスモデルによって越後屋呉服店を江戸の一番店に押し上げます。高利のその商売が、いかに当時の商習慣を無視した型破りなものだったか、既得権益との一か八か戦いだったかを、三谷さんの軽妙な文章がわかりやすく教えてくれます。

 このようなエピソードが、チェーンストア(メイシーズやシアーズ)、自動車生産(フォードやGM)、従量制課金モデル(ゼロックス)といったように、20以上の事例を豊富に用いて語られます。
 イノベーター(革新者)たちはどのようにビジネス界に飛び込み、革新的なビジネスモデルを考え付き、実行したのか。時には艱難辛苦し、時には汚い手でライバルを蹴落とし、というふうに、読み物として大変おもしろかったです。ボリューム的に、この事例紹介が本書の中でも一番多くを占める部分なので、ここだけでも買う価値はあるように思いました。

 しかし、本書の真骨頂は、それでは、どうしたら革新的なビジネスモデルを作り出すことができるのか、という問いに答えることであるはずす。
 わしは、実は、この部分が~残念なことですが~本書ではあいまいな気がしました。
 もちろん言うまでもなく、どうすればイノベーションが起こせるのか、人に聞いてわかるのであれば誰も苦労しません。本書にその答えを求めるのも無茶な要求であることは自覚していますが、しかし、長々とした前振り(ビジネスモデルの実例紹介)のあとに、それから演繹して導かれる結論めいたものがあるかと思ったら、どうもそのへんはないのです。というか、抽象的な記述になっているのです。

 これが、書名を「ビジネスモデル全史」とした理由なのかな、と思ったりもします。「ビジネスモデルの作り方」という本ではないのですから、やはり本書の事例や整理ポイントを参考にしつつ、起業家や経営者が自分で考えなくてはいけないのです。
 なので、あくまで本書は教養書であって、昨日のブログに書いた「ビジネスをつくる仕事」のようなノウハウのヒント本では決してないことは留意が必要です。

はんわし的評価 (★☆☆) 関心があれば一読の価値はあり 
 
 

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