2015年1月11日日曜日

家計貯蓄率「マイナス」下での商品券配布効果

 政府が先月末に閣議決定した3兆5000億円規模の経済対策の目玉の一つが、伸び悩んでいる消費を喚起するための「地域住民生活等緊急支援交付金」なる4200億円規模の交付金の創設です。
 この地域住民生活等緊急支援交付金は、2つのタイプがあります。一つは、地方自治体や商店街が発行する商品券などへ助成するもの(地域消費喚起・生活支援型)で、予算規模は2500億円。もう一つは、政府の地方創生総合戦略に沿って地方自治体が行う少子化対策などを支援するもの(地方創生先行型)で、こちらの予算規模は1700億円。
 政府では、この3.5兆円の経済対策によって実質GDPを0.7%押し上げる効果を見込んでいるとのことです。
 ただ、地方自治体などを経由して直接国民に助成金を配るという、言うなればバラマキ型の需要喚起策は、平成11年の「地域振興券」、平成21年の「定額給付金」など過去にも大々的な予算規模で実施され、国民の期待と批判もないまぜにあった中で、結局は消費喚起効果、景気浮揚効果は期待されたほどには見られなかったという先例があります。
 今回の経済対策も本格的にスタートすれば、全国で実際に商品券を発行する自治体も多く出てくるでしょうが、やはり大きな効果はそれほど期待できないのは、国民大多数のコンセンサスではないでしょうか。
 しかしながら、その一方で、地域振興券や定額給付金と、今回のアベノミクス商品券には決定的な違いがあります。


 それは、これも同じく先月末に政府(内閣府)が公表した平成25年度の国民経済計算確報において、所得のうちどれだけ貯金に回したかを示す「家計貯蓄率」が、昭和30年の調査以来、初めてマイナスになった(マイナス1.3%)ということです。

日本経済新聞Web版より
このグラフは日本経済新聞の記事から引用しました。(出典は「2014/12/25 家計貯蓄率、初のマイナス 貯金崩し所得上回る消費」 リンクはこちら

 これを見ると、地域振興券の平成11年(1999)は約7%、定額給付金の平成21年(2009)も約2.5%のプラスでした。その頃はまだ、給与や利子、配当などの家計収入から貯蓄に回すだけの余裕があったのです。

 ところでこれをISバランスで超簡単に整理すると、
  所得は、消費と貯蓄の合計 → 所得=消費+貯蓄
  支出は、消費と投資と純輸出(経常黒字)の合計 → 支出=消費+投資+純輸出
  所得と支出は等式なので、消費+貯蓄=消費+投資+純輸出となり、これを整理すると、
  貯蓄=投資+純輸出 となります。

 近年の日本は、先行きの不透明感もあって企業の設備投資や、家計の住宅建設や耐久消費財購入が低迷しており、純輸出についても、海外からの利子や配当の収入(所得収支)は増加傾向ですが、モノの輸出による収入(貿易収支)は大幅赤字で、経常黒字には大きな伸びが見られません。
 なので、この「貯蓄=投資+純輸出」の等式が成り立つためには、貯蓄も数字が小さくなるという理屈になるわけです。

 このような状況下で「商品券」が発行された場合、平成11年の地域振興券では食料品や衣料品のような日常的・定型的な支出に振興券が充てられてしまい、余剰分はそのまま貯蓄に回された例が多かったと考えられるところ、今回は、商品券が家計消費に充てられても余剰を貯蓄に回すような余裕はないとも考えられます。
 この意味では、地域振興券よりは消費喚起効果が期待できるのかもしれません。

 重要なのは、日本社会の高齢化の影響は、貯蓄や消費行動にも関わってくることです。
 日経新聞も指摘するように、家計貯蓄率がプラスの間は、家計が貯めたお金は企業の剰余金とともに政府が抱える巨額の借金を支える役割を果たしました。金融機関の多くが国債を購入していたからです。しかし、貯蓄が食いつぶされるようになってくると、国債の買い手は縮小し、国内では賄いきれなくなって利率を上げなければ流通しないようになり、潜在的に長期金利上昇のリスクになると考えられます。
 長らく日本では金利は低く、物価も安定していました。金利、物価がダイナミックに変動(上昇)するものであることを日本人の多くは、わしも含めてすっかり忘れてしまっています。
 貯金という資産をいかに有利に活用していくかは高齢者にとって大きな問題であり、財テクのようなスキルが新たに社会の関心を集めるようになるかもしれません。商品券も、このような流れの中で(どうせやるのであれば)、より有意義な活用方法を考えていくべきでしょう。

■経済企画庁 地域振興券の消費喚起効果等について 平成11年8月6日

■平成24年度 経済財政白書 「定額給付金の経済効果」について

■内閣府  国民経済計算確報 2013年度確報(平成25年度)
   

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