2015年1月13日火曜日

P2Pビジネスに見る、イノベーションを望まない社会

 アスキー(ASCII.jp)に、旅館業界を激怒させる「Airbnb」とは という興味深い記事が掲載されています。(2014年12月24日付け)

 Airbnb(エアービーエヌビー)というのは、アメリカのベンチャー企業がインターネットで提供している宿泊情報のサービスです。
 宿泊先を探している旅行者(ゲスト)と、空き家や空き部屋などを宿泊先として提供したい人(ホスト)を仲介するサービスで、日本国内でもすでに数千件の空き部屋などが宿泊先として登録されており、ゲストはそれを検索して予算やロケーションがマッチしたところに泊まることができます。
 もともとが空き部屋の有効活用なので宿泊料金は格安です。また、自宅を開放しているホストと触れ合えるなど、ホテルや旅館とはひとあじ違った旅行をすることもできます。このようなことが人気となってAirbnbは全世界で若者を中心に爆発的に普及しており、同社では東京オリンピックが控える日本で、いっそうの顧客(ゲスト、ホスト)の開拓を進めていくとしています。
 しかし、上述のアスキーの記事によれば、これに既存のホテル、旅館、民宿業界が猛反発しているというのです。

 通常であれば、旅館や民宿といった宿泊施設を運営するためには旅館業法による許可が必要です。この法律には細かい規定があり、旅館であれば部屋数が5室以上必要などといった制約もあります。また、防災・防火のため避難設備や消火設備の設置も必要であり、初期投資や運営には多額の経費が必要となるため、事実上、素人が簡単に副業できるものではありません。
 これに対して、Airbnbは旅館業法の適用を受けておらず ~旅館や民宿ではなく仲介しているに過ぎないから~、 いわばグレーゾーンのまま現状がどんどん進行している形となっています。



 アスキーによると、事態をさらにややこしいくしているのが政府が打ち出した「民泊特区」構想です。
 国家戦略特区構想の1つとして旅館業法の特例を設けるもので、特区指定された地方自治体が条例を制定すれば、「空き部屋」を宿泊施設に転用できるという内容です。
 オリンピックによって外国人客の激増が見込まれる東京都では、すでに大手不動産会社などが関連事業に乗り出す動きすらあるそうです。
 しかし、ホテル旅館業界は以下のような理由でこの特区に反対しています。
・業界は、旅館業法、消防法、風俗営業法などに基くさまざまなコストを負担している。特区の宿泊施設はそれらを負担しておらず公正な競争にならない。
・国はこれまでウィークリーマンションなどは宿泊業に限りなく近いグレーゾーンとしてきた。これが特区によって適用除外になると、大っぴらにやってもいいということになる。
・もしそれでいいなら、自分たち旅館や民宿も営業許可など取らず、消防や衛生など自主的に適正管理しつつ営業すればよい。なぜ、突然参入してくる人だけが特典を受けられるのか。

 このような業界の反発もあり、政府は民泊特区で認める要件を「7日間以上の宿泊」と制限したため、「7日も連泊する外国人観光客などほとんどいない」といった新たな疑問の声も上がっており、既存業界、政府・自治体、Airbnbなどニューカマーが3すくみとなっている状態のようです。

■アスキー 500万円儲ける一般人も出た「自宅民宿」 旅館業界を激怒させる「Airbnb」とは(リンクはこちら

 もうひとつ、既存の業界に激震を走らせているインターネットサービスが、配車サービスのUber(ウーバー)です。
 同じくアメリカのベンチャー企業がはじめたビジネスで、スマホにウーバーのアプリをダウンロードして登録すれば、地図上で場所を指定するだけで最寄りにいるタクシーを配車してくれるというサービスです。
 フランスでは、一般の人がマイカーを使ってウーバーのユーザーであるお客を乗せ、代金をもらうケース(つまり、日本で言う「白タク」)が増加。失業対策として副業黙認や、既存のタクシーが高いと不満を持つユーザーの支持などもあって政府は運転手(?)の報酬に上限を設けるなどの措置を講じつつ静観していました。
 しかしタクシー業界からの反発の声が高まり、政府は1月からウーバーを禁止する方針を明らかにしました。
 ウーバーはフランス以外にも波紋を広げており、
・インドでは、ウーバーを利用した女性が運転手に暴行されるという事件が発生し、ウーバーの責任を問う声が上がって営業停止に
・ドイツでは、業界団体のタクシー、ドイチェランドがドイツ輸送法に違反しているとしてウーバーを提訴。裁判所はユーバーのサービス停止を命じたが現在も係争中。
 など各地で紛争が起こっています。

 ウーバーはすでに日本でもサービスを開始していますが、日本のウーバーは東京都心でのタクシーの配車サービスに特化しており、ヨーロッパのような紛争は起こりえません。
 しかし、このようにも考えられます。
 個人と個人をインターネットでつなぐプラットフォームビジネスは、ピア・トゥー・ピア ビジネス(P2P)と言われ、今までなら大手資本が独占してきた情報を分散化することで、個人が参入しやすく、利便性も向上することが大きく期待されてきました。
 そして、AirbnbにしろUberにしろ、発祥の地のアメリカではもともと参入障壁が低い社会であるためもあってこれらは大成功し、消費者も選択の幅が広がっています。
 その一方で、社会の流動性が低いヨーロッパや日本では、一つのイノベーティブなサービスが生まれると、それは今までその分野で生活してきた業界を直撃し、従事者の職を奪いかねないことが大きく危惧されることが先に立ちます。
 これは、良い悪いという価値判断は別として、社会変革のスピードが早いことへの警戒が強い社会であることを示しています。
 
 経済成長の主役は民間(企業、事業者)以外にあり得ず、国や地方自治体は民間を支えることしかできません。本来はそのはずです。
 しかし、よく目を凝らすと当の主役たちは、実はこれ以上の社会の変化、ビジネスの進化を本心では望んでおらず、周りになんとかうまくやってもらいたい、という願望が透けて見えることがあります。
 また、日本人は自らが消費者であると同時に生産者(経営者、従業員)である2つの立場を持っていることをよく自覚しているので、消費者の立場としてはありがたいけど、生産者としてはちょっと・・・と考えることがよくあります。これもまた、意地悪く言えば変化や進化に水を差しています。
 
 政府はこれから、経済対策に巨額の補正予算を措置してこれから強力に進めていくということですが、そして、過去20年近くに渡って営々と行われてきた経済対策(財政出動)がほとんど効果を生んでいませんが、民間主導による経済再生に国民全体が慎重である以上、いつか日本経済は力尽きてしまうのではないでしょうか? 

 

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