2015年1月23日金曜日

伊勢志摩にサミットを誘致しろと言ったのは誰?

 三重県の鈴木知事が、1月21日の定例記者会見で、来年日本で開催される主要国首脳会議(サミット)の伊勢志摩地域への誘致を表明しました。
 インターネットで公開されている知事定例会見の議事録によると、誘致を決断した主な理由は以下のようなものです。
1.円安などにより訪日外国人の数が過去最高になるなど、国内外に対して情報発信を強化していくべきタイミングが今である。
2.地方創生関連の交付金などで、サミットの財源捻出ができる可能性が出てきた。
3.(先に誘致を決定していた)関係閣僚会合の誘致をした後にいろいろ県内を回ると、経済界や県民から、ぜひ本チャンの首脳会合を誘致してほしいという声が多数寄せられた。
4.イスラム国による邦人人質事件のようなテロに対しては毅然、断固とした対応が必要だが、同時に長期的な世界の平和を達成するには、いろいろな宗教の民族でも多様な価値観を受け入れ、寛容に共生していかなければならない。三重県は伊勢神宮を中心に神道があって、神道はいろんなものに神が宿っていると認識するものでもあり、他の宗教を排他的にするのではなく、様々な価値観を受け入れてやっていこうという精神性が育まれている地であり、現代の脅威に対し、寛容な共生社会を作っていく意味で強いメッセージ性のある場所である。


5.最近のサミットは高原リゾートで行われるケースが多いが、海洋については、今の日本では東シナ海や南シナ海において非常に緊張感が高まっている状況や、自然災害などの脅威がある一方、里海のような恵みもある。来年は東日本大震災から5年という節目でもあるので、今一度海洋の重要性について考えるため、三重県は海洋リゾートでの開催を提案する。
6.三重県は日本らしい歴史や伝統文化、それから経済成長の最先端技術、それから女性の活躍の聖地である。
7.三重県は天皇陛下をはじめ多くの要人の警備をやってきた経験があり、そういう経験、ノウハウは群を抜く。

 記者会見の席上では紙の資料が配られ、それに従って説明が行われたようですが、記者からはさらにいくつか質問が出ています。主な受け答えは以下の通りです。

(質)先程首脳会議開催地の要望が財界からもあったという話だったんですけど、具体的にどういった経済界から?
(答)具体的にこの方からとかこの団体とかっていうの何て言うんですか、表面で要望書とか受け取ってませんので、それちょっと申し上げるのは差し控えたいと思いますけども、協議会(はんわし注:2016年みえ伊勢志摩サミット誘致推進協議会)に参加していただいているような企業であるとか団体とか、そういうふうに思っていただいたらいいと思います。

(質)改めてで恐縮なんですけど、この誘致することがその三重にとってどのような意味があるか改めてお願いします。
(答)まず一つは国際観光地っていうか国際的な集客可能な場所としてのブランドアップと情報発信、それから当然にして今申し上げたような経済効果、パブリシティも含めた大いなる経済効果、こういうものが大きいと短期的には大きいと思いますけれども、やっぱり何て言うんですかね、これからのこういうグローバルな社会において三重県が貢献できるんだという何て言うかな、県のその力って言うんかな、こういう大きな首脳会合を経験することで県民、企業、行政そういう人たちの経験値が上がってのパワーアップしていくと言うのかな、僕はそういう一つ大きな地域としての総合力のこのレベルアップって言うんですかね、僕はそういうのが非常に大きいと思います。やっぱり、こういうのをたくさん経験していくことで県の県民、企業、行政の意識も変わり経験値も高まると思いますんでね。そういう県のそもそもの底力のパワーアップって言うのかな、そういうのが大きいと思います。

(質)三重県独自として経済波及効果ていうのは算出してないんですか。
(答)まだしてないです。

(質)数百億円規模?
(答)まあ、北海道洞爺湖のやつで600億円ですから、数百億円は当然上ると思いますね。まあだからさっきも言いましたように北海道は3日間だったのと、あとG20も来てるていうのもあるので北海道ほど大きくならないかもしれませんけども、間違いなく3ケタのオーダーはいくと思います。

 知事が「経済界や県民から(要望の)声を聞いた」というのは、知事選に再選出馬表明をした時の小学5年生の手紙と言うエピソードと同様、にわかに信を置けない胡散くさい話が多いのですが、まあそれはさておき、このような会見のやり取りを見ていると、先述のようにサミット誘致の理由はいろいろ並べていましたが、結局は経済的な効果が狙いであることは明言されているといっていいでしょう。
 これはあくまで知事の政治姿勢であり政治決断なので、良いとも悪いとも言えません。実際に600億円以上もの経済効果があるなら政治的な賭けとして大いに取り組むべきかもしれません。

 しかし、三重県で国際的な会議を誘致するとなると、何でも伊勢神宮を持ちだして「寛容の精神」だの「共生の文化」だの宗教の聖地性をアピールに持ちだすのは奇妙です。それとこれとは話がまったく違います。

 神道の本質は明らかに自然信仰であり、宗教としての体裁である神社(建物)や文字化された教義などは仏教の影響によるものです。神道を「宗教」と定義するにしても、他宗教に寛容であったのは仏教も同じであって、神道だけが寛容の宗教であるというのは歴史的な事実として間違っています。

 また、知事本人もそのことに言及していますが、イスラム国のような宗教に名を借りた過激派は、いくらこちらが寛容の精神で接しても、そもそも皆殺しにしてやろうと攻めてくるのですから共生などできるはずがありません。この厳然とした事実を無視ないし軽視して、寛容だの共生だの、それが伊勢神宮の精神だのと論を吐くのは日本人の宗教的独りよがりだと思われても仕方ないでしょう。
 実際、過激派はサミットをテロ標的にしてくるのは間違いないので、わざわざ彼らをさらに刺激するような宗教の聖地で開催するというのは危険な挑発だとわしは思います。本当に、ここに首脳を世界から呼んで、安全に会合などできるでしょうか。

 もっと残念なのは、知事の言う神道の教義に対する認識の誤りのほかに、経済性と神道を同一のレベルで説明するのは、日本の民族的な精神支柱である神道すら経済繁栄の手段に使われ、神に対する敬意とか畏怖とかはみじんもない、(他宗教に寛容だとか言う前に)そもそも無宗教で無信仰な国民だと侮られないかということです。
 ほかならぬ伊勢神宮のお膝元の伊勢志摩地区の住民からさえ、一連のサミット誘致議論に疑問の声が出てこないことも、わしには不思議に思えるのです。

1 件のコメント:

イセオ さんのコメント...

鈴木サンも本気で呼びたいなんて考えてない、選挙対策だよ。