2015年1月28日水曜日

地方創生へ新法人制度

 本日の日経新聞に 地方創生へ新法人制度 という記事が掲載されています。(1月28日付け)
 新法人はローカルマネジメント法人(LM法人)という名称で、税制優遇を受けて公益事業を担う非営利法人(NPO)の利点を取り入れながら、出資者への配当も認めるなど、収益事業としての自由度も高めるという、非営利法人と営利法人のそれぞれの長所を「いいとこどり」した形態であり、政府としては、過疎地など人口減少で採算が取りにくい地域での路線バス事業やガソリンスタンド事業、介護事業など住民生活に不可欠な地域サービス事業を運営しやすくし、維持できるようにすることが狙いであると説明されています。
 このLM法人は6月に再改定される政府の成長戦略に盛り込まれ、早ければ平成28年に関係法律が制定される見込みだそうです。
 しかし、そもそもなぜこんなものが必要なのでしょうか?


 介護事業などのような、いわゆる「公益事業」については、NPO(非営利法人)でも、企業(営利法人)である株式会社でも行うことはできます。
 NPOは公益事業については優遇税制を受けられますが、公益事業によって生まれた利益を出資者に分配(配当)することができません。これは、NPOが資本を活用する組織でなく、人を活用する組織形態であり、投資が主目的ではないからと理解されています。
 しかし、そのことゆえに資本を広く一般の投資家から募ることができず、資金調達の方法は「寄付」が中心とならざるをえません。NPOによっては、現在でも、介護事業などの非営利事業を行いながら、レストラン事業などの営利事業も行って、その利益を運営費に回している例もあるそうですが、日経新聞によると、その利益は公益事業への補填にしか充てられないという問題があります

 人口減少による利用者減に苦しむ地域サービス事業(はんわし注:ややこしいのですが、地域サービス事業とは路線バスやガソリンスタンドなどの事業、すなわち収益事業です)を維持し、拡大するためには、事業で生まれた利益を収益事業への再投資に使うことも認める必要があることから、新しいLM法人は、
(1)公益事業と同時に収益事業も拡大できる
(2)利益を配当として投資家に分配できる
(3)税制上の優遇措置を受けられる
 の3つのポイントを骨格にするとのことです。

 具体的な活用例としては、「広く投資家から資金を募り、その資金で外部の人材を登用。鉄道や温泉などの観光事業で収益をあげて、その儲けを採算が取りにくい福祉サービスに投入するなど、収益事業と公益事業の一体運営を行う事業者など」が想定されているとのことです。

 ただ、正直言って、わしはピンときません。
 本当にそんなニーズがあるのかどうか、人口減少が非常に深刻で、事業の維持が極めて難しいような山奥とか離島の地域なんかではニーズがあるのかもしれませんが、わしは(少なくとも三重県内では)あまり聞いたことがないからです。もしあったなら、すいません。

 しかも、気になった点が多々あります。

その1
 日経の記事では、「福祉施設を運営するNPOや、バス・鉄道などの交通インフラを担う第三セクターなどが統合してLM法人に移行することが想定される」ともあって、その理由は「責任の所在があいまいな官民運営で非効率になりがちな第三セクターよりも、民間が一手に手掛けるほうが効率運営につながるから」とのことです。
 ということは、結局、三セクの延命策なのか、とも思えます。
 三セクは非効率な経営で、事実上債務超過の会社も多いと考えられており、一斉に破たん処理が始まると全国的なパニックになるとさえ言われています。税金投入による債務処理が難しい今の時勢なので、NPOなどの「民活」で再生させようということなのか、とも勘ぐれます。

その2
 同じく日経の記事では「公益サービスに関心があっても配当規制などが障壁となって参入できなかった地域密着型の企業がLM法人に移行する可能性も見込んでいる。」ともありますが、このようなケースは今までもあって、一般的には、非営利事業はNPOを立ち上げてそれが従事し、営利事業は株式会社など営利法人で行い、両者が緊密に連絡を取って一体的に事業を行う、というやり方です。
 このようなNPOと企業のパートナーシップは全国に多くの成功例があり、今のこのやり方でなぜ不都合なのかか見えにくい面があります。(このあたり、事情に詳しい方のご教示をお願いします。)

その3
 地方創生で国の予算がばらまかれることが来年度から本格化するので、積極的にこの「成長分野」に参入しようという企業も多く出てくることでしょう。
 このような領域は、経済産業省の新たな利権となる分野であり、NPO法や会社法を改正する王道でなく、新しい法律を作って既成事実化=自省権益化しようという覇道の意図を感じるのはわしだけでしょうか。経産省が取り組んできた「地域経済活性化」はほとんどが失敗しているので、その意味では行く末が心配でもあります。

その4
 LM法人は公益事業の利益を非課税にする優遇税制が検討されています。本来なら自治体が税金で手掛けるべきサービスを、民間が代行するという考え方から法人への課税を減免して、公的サービスの担い手をふやす、ということだそうですが、官が担うべき行政サービスと民が担うサービスの境界はあいまいなままです。この境界は地域地域によってさまざまな固有事情があり、住民が参加して十分に議論しなくてはいけません。単に儲かりそうだから「成長分野」に参入してくるような事業者が公的サービスの担い手となることを、その地域の住民は納得するでしょうか。
 

 

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