2015年2月18日水曜日

失敗だらけを生む「自治体」とは誰か

東洋経済オンライン より
 東洋経済オンラインで連載されている、木下斉氏の「地方創生のリアル」というコラムが、地域産業活性化関係者の間で熱い話題となっています。

 一番最近の 特産品で地方創生ができるという「幻想」 というものも非常に興味深く、かつ同感できる内容です。
 地域資源を活用した特産品を行政主導で開発し、東京のような大都会や海外の消費者に売り込めば、必ず売れるはずであるという神話は、このブログでわしもたびたび疑問を呈してきました。
 もしまだ木下さんのコラムを読んでおられない関係者の方は、この機会にぜひお読みください。必ずや得られるところがあると思います。
(リンクはこちらです。ただし、東洋経済オンラインを読むには無料の会員登録が必要だったと思います。)

 ただし、わしとしては気になった箇所があります。
 それは、今号の記事の「自治体がからむプロジェクトは失敗だらけ」というサブタイトル、これは確かにその通りなのですが、「自治体」とは何なのかをよく見てみないと、自治体側の現場感覚からはやや違和感があるのではないかということです。


 木下さんの記事の要旨は以下のようになります。
・ある地域が自分の地域を活性化したいと考えたとき、必ず出てくるアイデアは「特産品の開発」です。例えば「ゆず」をそのまま出荷するより、絞ってポン酢に加工したほうが付加価値が高くなり利益を生むことができます。このような特産品開発に多くの自治体が積極的な支援を行っています。
・しかし現実には、特産品を開発したは良いが、全然売れない、ひどい場合は小売店の売り場に置いてもらえないという事態さえしばしば生じます。これは、「その特産品自体に独自性がない」、「原材料は地域資源ありきのため、消費者が望む商品化ができない」、「技術頼みの商品開発となり、売価で投資が回収できない」、という3つの問題点を抱えるためです。
・さらに、こうした商品、材料、技術の「3つの選択」をする場合に、開発する側が具体的な商品イメージを持っていないために、商品として魅力ある整合性がないことは最大の問題です。特産品が玉ねぎなので、これで焼酎を作ってみました、というものを誰が金を払って飲みたいと思うでしょうか。
・このように問題だらけの特産品開発が、次から次へと進められるのは、基本哲学が「作ってから売りに行く」という流れのためです。開発は「(農林漁業者のような)生産者」と「加工者」、「公務員」による「協議会組織」が行っており、肝心の消費地の販売者や消費者の関与が希薄だという構造的欠陥を持っているのです。
・このため価格戦略も不在で、コスト積み上げ方式で上代が超高価格になってしまった場合は、「東京や海外にいる目の肥えた富裕層に販売しよう」という戦略となったり、これとは逆に補助金で経費補填して見せかけの「安値」で販売する戦略となったりします。後者の場合、補助金が切れたら普通に値上げをするので、当然すぐに売れなくなります。
・地方自治体からの依頼を受けて、特産品の取り扱いをした販売店などは、そのようにブレまくる地方の特産品開発に振り回されて疲れ果ててしまった経験を少なからず持っています。
・一方で、東京都内の小さな3軒の八百屋さんが集まり、補助金ゼロで、「自分たちの販売力」をもとに生産者と連携した独自の特産品開発を行って成功している「東京八百屋の会」のような例もあります。
・従来の生産者や行政が「予算の力」で進める商品開発ではなく、これからは営業が先を走り、市場と向き合いながら確実に改善を繰り返して販売数を増加させていく「当たり前の商品開発」が大切です。
 至極正論で、まったく共感します。

 ここでわしの私見を差し挟むと、注意すべきなのは、このような市場原理に反した無茶な特産品開発をする「自治体」の内部は、決して一枚岩ではないことです。

 全国の自治体の産業振興担当者の中には自分が独自に販路や人脈を持ち、消費者の意見をフィードバックしながらマーケットインによる開発や販売の支援ができる人も少なからずいます。そして、そのような担当者は、決して木下さんが指摘するような無理をしません。

 問題なのは、自治体の中でも、生産者や加工者の票が欲しい首長や議員がこのような無茶な特産品開発を、膨大な予算と人員をぶっこんで推し進めることです。
 彼らは、予算がついてなんぼ、新規事業をいくつ立ち上げてなんぼという政治実績の捉え方なので、特産品が売れようが売れまいが、とにかく経産省や農水省や総務省からたくさん補助金を引っ張ってくればそれでいいのです。
 わしも含め、自治体の心ある産業振興担当者は、そのような予算ありきの事業が決して長続きしないことを知っています。また、短期的に洪水のように巨額の予算がついて推し進められる特産品開発は、同じように心ある、地域おこし活動に従事してきた善意の住民や、生産者、加工者を振り回します。サンセット予算方式なので事業開始3年目とかでスパッと事業予算がなくなり、ハシゴを外されて右往左往した関係者をわしもたくさん知っています。

 もう一つは、生産者や加工者、ハッキリ言えば農林水産業者や商工業者の甘えもあるでしょう。隣の市は市役所が主導して都会で物産展をやっているのに、自分の市は何もしてくれない。どこかの町は役場が主導して商品開発しているのに、自分たちの町役場にはアイデアマン(カリスマ公務員)がいない・・・など、「役所は助けてくれない」という不平不満を寄せる人々が少なくないのです。
 もちろん、役所がサボっていて良い訳はありません。率先して汗をかくのは当然ですが、補助金を出せ、後継者を育てろ、安い労働力として海外実習生をどんどん受け入れろ、都会にアンテナショップを出せ、物産市を開いて売ってこい、高騰する電気代や重油代を補填しろ、などなど行政頼みで甘えてばかりいては、結局自分たちの首を絞め、ひいては後継者となる若者が地域での仕事の魅力を見失ってしまうことにつながるでしょう。

 冒頭に戻りますが、「自治体」は一枚岩なのではありません。特産品で地方が創生できるという幻想は、票目当ての政治家と、役所に甘える産業人のもたれ合いの成り行きである面があることは認識しておくべきと思います。
 また、「東京八百屋の会」のような自主自立の組織が力強く活躍している地方も決して少なくはないと思います。自治体の施策も、彼らへの側面支援にシフトチェンジしていく必要があるでしょう。
 

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