2015年2月20日金曜日

「湯〜トピア」は商標侵害

 共同通信によると、山梨県甲斐市にある温泉施設「湯~とぴあ」が、静岡県函南町にある温泉施設「湯~トピアかんなみ」に対して商標権侵害だとして、標章の使用差し止めなどを求めた訴訟の判決が東京地裁で下されました。
 東海林保裁判長は「双方を見て出所を混同する恐れがある」と述べ、「平仮名と片仮名の違いはあるが、紛らわしい」として使用の差し止めと約1200万円の賠償を命じたとのことです。(リンクはこちらを)
 原告の株式会社湯~とぴあは、1996年に ラドン健康パレス 湯~とぴあ の商標を登録し、温泉施設を経営しています。一方、函南町は2002年に町民の健康増進と福祉の向上、地域振興に寄与することを目的として 湯~トピアかんなみ を開設。実際の運営は、指定管理者である民間企業が行っています。
 函南町は「判決内容を確認していないのでコメントできない」としていますが、この事例に限らず、地方自治体が開設する公共施設の名称や、開発した特産品の商品名などが、他人の商標権を侵害しているとして紛争となる事例は各地で少なからず発生しています。


 これは、地方自治体、特に町役場、村役場になると、仕事の性質上、どうしても地域密着の「虫の視点」となりがちなので、全国津々浦々に同じようなネーミングの施設や、商品や、サービスや、イベントがあるかもしれないことになかなか思い至らないためかもしれません。
 実際問題として、商標権について知識を持っている職員は多くないかもしれず、もし商標がバッティングすることに一抹の危惧を抱いても、弁理士に相談するまでは行動しないとか、類似の商標を簡易検索できる電子特許図書館(IDPL)のサービスを知らないという実務上の原因もあると思います。
 さらに、自治体は往々にして、公共施設とかゆるキャラとかの名前を「公募」するので、地元の住民はもちろん、全国公募でもせいぜい人間の想像力などしれているので、よく似た名前やどこかのものとまるっきり同じ名前(明らかなパクリも含め)が多数派を占める、ということも起こりがちです。

 この「湯~とぴあ」という名前も、ネットで検索するとすぐわかるように、全く同じ名前の施設が名古屋市や東大阪市にあります。さすがに伊豆半島の付け根に当たる函南町と、名古屋、大阪の湯~とぴあを間違える可能性はありませんが、甲府だと ~それでも函南から100kmは離れていますが~ ひょっとすると間違える人もいるかもしれません。こうなると権利侵害なので、紛らわしいネーミングでも一概に権利侵害になるとかならないとか言えないところが、この種の紛争の難しいところでもあります。

 来年度は「地方創生」とやらで、国から巨額の交付金が全国の地方自治体にばら撒かれます。使い道はなるべく自由にするそうなので、そのこと自体は国の正しい判断だと思います。しかし同時に、自治体が行う、わけのわからない「地域おこし」活動に充てられる可能性も高く、従って、自治体の安直なネーミングによる施設や特産品などは続々誕生してくるかもしれません。

 このブログは、地方自治体の職員がご覧になっているケースも多いようなので、今一度、わが県、市町村のネーミングは、他の商標とかぶっていないか、注意喚起することは肝要かと思います。

■はんわしの評論家気取り
 商品ネーミングの前に注意すること(2009年11月11日)

 ちょっと気の毒な「さくらんぼ小学校」(2010年9月8日)
  <平成27年3月10日追記>  函南町は3月3日、東京地裁の判決を不服として控訴することを決定しました。

0 件のコメント: