2015年3月11日水曜日

ビールというインチキ業界は立ち直るのか

 サントリーホールディングスが、ノンアルコールビールの製法に関して特許を侵害されたとしてアサヒビールを提訴したことが大きく報じられています。先日東京地裁で開かれた口頭弁論では、アサヒも(サントリーの)特許権は無効だと反論しており、ビール業界の第1位と第2位が全面的に争う構図となっているとのことです。
 かつて宴席では「とりあえずビール」が常識であり、ビールは代表的なアルコール飲料でした。しかし、日本酒、ビール、ウイスキーと言った従来型の定番酒類は、ワインや焼酎(チューハイ)の登場と入れ替わりに次第に出荷量と消費量を減らしつつあります。

キリンHD 2013年版データブックより
 これは昨今の消費者の健康志向やライフスタイルの多様化が原因などと言われますが、3か月おきに「新商品」と称して、さらにコクがあるだの、いっそうキレがよくなっただの、麦の香りがするだの、ホップの香りがするだの、鍋物に合うだのと、すでに成熟した商品でほとんど改良の余地もないビールという飲料をほんのわずかばかりこねくり回し、テレビコマーシャルで誇大広告して、少しでも新たな需要を喚起しようとする、さもしいマーケティング競争に陥っていた、いわば「インチキ商品」としてのビールに消費者が飽き飽きしてきた結果ではないかとわしは思います。
 そのゆえに、真にイノベーティブな商品はほとんど生まれず、どこかのメーカーが一つヒットを当てると、他のメーカーも一斉にそのコピー商品を作って追随してくる、という、これまたインチキ業界にふさわしいチキンレースを展開し、自らの首を絞めていた、そのツケが回ってきているに過ぎないのです。


 今回のサントリーの提訴は、落ち込み続けるビール業界において、ほぼ唯一市場の拡大しているノンアルコールビールのシェア争いを巡る過熱と報じられています。しかし、今までは揉め事があっても裁判にまで至るケースが少なかった閉鎖的なビール業界でこのような争いが顕在化したのは、わしは、大手コンビニエンスストアの経営者からサントリーの社長に移籍した新浪剛史氏による、業界秩序や馴れ合いに縛られない経営決断が早くも発揮されたのかもしれない、とも思うのですが、どうなのでしょうか?

 裁判における双方の主張は、日本経済新聞によると次のようなものです
・原告のサントリーは、ビール風味の飲料であっても飲み応えが得られるよう、エキス分の総量、酸性やアルカリ性の度合いを示すpH、糖質を一定範囲に調整することで実現。これで特許を取得した。
・そのうえでサントリーがアサヒのノンアルコールビール(商品名ドライゼロ)を購入して分析したところ、特許の数値の範囲内にあることが判明した。
・これは特許権の侵害で、アサヒに成分の見直しなどを求めたが、誠意ある対応がなかった。
・これに対してアサヒは、特許のpHの範囲はビールなどの炭酸飲料では通常の値であり、既存製品から簡単に創作できるものに特許権を認めたことは無効であると反論。
・必要に応じて特許庁に当該特許の無効審判を求める考えも示した。

 特許権の妥当性については何とも言えませんが、双方の主張を見ても、やはりビール(正しくはビール系飲料というべきなのでしょうが)は成熟商品で技術的に改善・進歩する余地はほとんどないか、あってもごくわずかだと思わざるを得ません。
 今までの業界秩序であれば、特許権の侵害が疑わしくとも、ノンアルコールビールの全体市場が拡大すれば、パイを分け合えるという利害が働いて事なきを得ていたのでしょうが、競争がますます苛烈になる中で、傷み分けではすまない環境になってきたのかもしれません。しつこいようですが、その過程で、業界に染まっていない新浪氏のような経営トップがあえて波風を立てることをいとわなかった、とも考えられます。

 これは停滞した業界にとっては一種のショック療法で、やむを得ないことだと思います。
 わしは個人的には、新浪さんのような、あるいはベネッセの原田さんのような、いわゆる「プロ経営者」 ~次々と大企業の社長職を渡り歩いていく人~ は、確かに経営手腕は高いのでしょうが、会社への帰属意識とか合意形成を重視する日本の経営風土には必ずしもマッチしておらず、良い面と悪い面の両方があるという考えですが、今回のような、あいまいな部分を法的に解決する姿勢は、良い面のように思います。
 業界内のくだらないチキンレースの繰り返しを脱して、真に商品本位で消費者にアピールできるようなビール業界であってほしいと思います。
 

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