2015年3月15日日曜日

補助金なしで障がい者自立へ

 3月12日付けの中部経済新聞のコラム「ロビー」に、鈴鹿市を中心に三重県内で障がい者就労事業を展開している、社会福祉法人伊勢亀鈴会(きれいかい)の横山仁司理事長が取り上げられていました。
 伊勢亀鈴会は、かつて「授産事業」と呼ばれていた、障がい者の就労機会を確保するための事業、具体的には、印刷事業、ジャムの製造・販売、弁当の製造・販売、ウエス(業務用の雑巾)の販売、などの事業を行っている団体です。そして、就労支援事業としては全国でも珍しい、葬祭事業を行っていることでも知られています。
 「福祉葬祭」というサービス名で伊勢亀鈴会が提供している葬祭事業は、最も高いグレードでも葬儀費用が40万円という、今までの業界の常識を覆す低価格。
 葬儀業務に従事する係員は健常者ですが、障がい者は、祭壇の組み立てや清掃、カゴ盛り・菓子盛りづくり、会葬礼状の印刷、会葬礼品の包装などの作業を担当しています。
 記事にある横山理事長のコメントによれば、この福祉葬祭は年間約600件を受注し、約3億円の売り上げがあるとのことです。

 伊勢亀鈴会が葬祭事業に参入した経緯は、NPO法人日本セルプセンターのホームページに、同じく横山理事長によるインタビューの詳細記事が掲載されています。



 これによると、NTTの関連会社で社長を務めていた横山氏が、平成20年に理事長に就任したことをきっかけに、既存のさまざまな就労事業の中から、事業としての可能性が大きい葬祭事業に参入することとなりました。
 葬祭ビジネスは業界全体で価格の明瞭化が進んではいますが、やはり200万円以上の費用が掛かることが常識でした。このため葬儀費用はもちろん、会場使用料や会葬者の送迎費用などもすべて込みで「40万円」という破格の価格設定としました。また、会員制(会費1000円)になればあらかじめ自分が望む葬祭スタイルや費用を選べる「生前お見積もり」システムも採用しています。
 しかしその一方で、社会福祉法人が葬祭ビジネスに参入したことに対して、いろいろな課題もあったようです。葬祭事業の中心メンバーは同業他社からの転身組が多かったため、社会福祉という観点からも、サービス業としての葬祭業にプライドを持った人たちばかりでした。しかし、伊勢亀鈴会内の他の福祉セクションから人事異動で葬祭事業に始めたやって来た人には戸惑いも多かったようですし、福祉関係者の反応も複雑だったようです。
 このあたりはセルプセンターのホームページをお読みください。(リンクはこちら

 さて、冒頭の中部経済新聞のコラムに戻ると、横山理事長は就労事業に関し、「障がい者にはできないと決めつけず、最初から補助金をあてにしないで、収益性を考えて(持続可能な)ビジネスモデルをつくることが大事」と語っており、世間でよくある収益性が低い就労事業ではなく、きめ細かい作業が得意であるなどの障がい者の特長を生かせる、より収益性の高い事業、なかんずく収益性を上げられるビジネスモデルの創造が重要だとお考えのようです。
 民間出身者にとっては当然の意識なのかもしれませんが、収益の確保と向上、そして、それにつなげるための経営革新への挑戦などは、誤解を恐れずに言えば障がい者就労事業であったとしても重要であるということなのではないでしょうか。

 このコラムは、横山理事長が県職員に対し「補助金をもらわなくても、事業を継続できるようにしていく」と言ったというエピソードで締めくくられています。
 わしは、行政による補助金が一律に不要であるとは必ずしも思いません。思いませんがしかし、特に地域経済活性化や中小企業活性といった裁量行政の分野では、効果が不明な補助金、交付先がいつもほとんど一緒の「なかよし補助金」、首長が公約と称してばら撒く人気取り補助金(票取り補助金)が相当に多いのも事実なので、一般的には経営者が補助金を活用する際には、それが「常習化」しないように注意が必要であるとも思っています。

 補助金を使わない。
 経営者の、その意気やよし、と思います。

 まして、それが経済環境としては弱者に思える社会福祉法人の理事長から出る言葉なら、よけいに起業家精神(アントレプレナーシップ)を感じます。

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